「2025年の崖」という言葉が広まってから約7年。日本企業は老朽化した基幹システムの刷新に動いた。
しかし、その裏側では1億円超の損失を出した企業が70社、累計損失は1200億円を超えるという衝撃的な実態が明らかになっている。
なぜシステム改変は失敗するのか?
具体事例をもとに、DXの本質的課題を読み解く
目次
「2025年の崖」は越えられたのか?
2018年、経済産業省が発表した「DXレポート」は、日本企業に大きな衝撃を与えました。そこで示されたのが有名なキーワード「2025年の崖」です。
老朽化した基幹システムを放置すれば、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある。そう警告され、多くの企業がERP刷新や基幹システム再構築に踏み切りました。
しかし、結果はどうだったのでしょうか。
日経クロステックの報道によると、過去5年で1億円超の損失を出した企業は70社、累計損失は1200億円超に達しています。
刷新は進んだものの、失敗事例もまた急増しているのです。
今回は、具体的な事例を挙げながら、なぜシステム改変が失敗するのかを深掘りします。
具体的な失敗事例
楽天:一体型システム構想が頓挫
楽天グループは、複数の基幹系システムを統合する「一体型システム」構想を推進。しかし開発は難航し、計画は頓挫しました。
原因として指摘されたのは、
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業務の複雑性を過小評価
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グループ会社間の業務標準化不足
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要件変更の頻発
巨大企業ほど業務が多様化しており、「全部まとめて刷新する」という理想論が現実に耐えられなかった典型例といえます。
滋賀銀行:中止と和解金
滋賀銀行は基幹システム更改プロジェクトを途中で中止。ベンダーとの間で和解金を支払う事態になりました。
銀行業務は規制も多く、システム要件も極めて厳格です。
少しの仕様齟齬が大規模なトラブルにつながり、最終的に「続行より中止のほうが損失が小さい」という判断に至ったと報じられています。
双日・日通など:100億円超の損失
双日や日本通運などでは、基幹刷新に伴う減損や追加費用が100億円規模に達しました。
グローバル拠点を持つ企業では、
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海外拠点とのデータ整合
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業務プロセスの標準化
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多通貨・多税制対応
などが想定以上に複雑で、開発費が膨張するケースが目立ちます。
大阪ガス:137億円の減損
大阪ガスは再構築計画を進めましたが、想定通りの成果が見込めないとして計画を見直し、137億円の減損処理を行いました。
「理想的な再設計」を目指すあまり、現場との乖離が生まれ、実運用とのギャップが拡大したと分析されています。
なぜ失敗するのか? 共通する5つの構造問題
業務の“属人化”とブラックボックス化
長年使われた基幹システムは、担当者しかわからない業務ロジックの塊になっています。
仕様書が存在せず、「動いているから触らない」という状態が続き、刷新時に全容が把握できない。
経営主導ではなくIT部門主導
DXは本来「経営改革」ですが、多くの企業では「IT刷新プロジェクト」になってしまいます。
結果、現場業務とのすり合わせ不足が発生します。
ベンダー依存と丸投げ体質
SIerに丸投げし、社内に技術的理解がないまま進行。
途中で仕様変更が頻発し、コストが雪だるま式に増加します。
“ビッグバン型”一括刷新
既存を全廃して一気に切り替える方式はリスクが非常に高い。
段階的移行(スモールスタート)ができなかった企業ほど損失が大きい傾向があります。
DXの目的が曖昧
「2025年の崖が来るから刷新する」という受動的理由だけで動いた企業は、明確なビジョンを持たないまま巨大プロジェクトに突入してしまいました。
2025年の崖は回避できたのか?
多くの企業が刷新に着手したことで、物理的な“崖”はある程度回避されたとも言えます。
しかし実態は
「崖から落ちなかったが、巨額の負債を抱えた企業も多い」
DXは単なるIT投資ではなく、業務そのものを再設計する経営プロジェクトです。
AIやクラウドの活用が進む現在、単なるシステム更改では競争力は高まりません。
これからの企業が取るべき戦略
今後重要になるのは、
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業務の可視化と標準化
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内製化比率の向上
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AI活用を前提にした再設計
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スモールスタート型移行
といった「段階的・戦略的DX」です。
単なる“作り直し”ではなく、事業モデル転換とセットで進める必要があるのですが、実際には難しい。
最終的には、経営者のシステムへの理解、実務担当者への決定権、開発担当会社の創業力 そしてなにより プロジェクトの手法より 個の力が重要です。
能力のある人を中心にサポートする人員を配置、サポート部隊を強化という体制を整えることが重要
しかし、現実的には厳しいけど 優秀な人材育成と発掘することが最優先事項でしょう。