前回までのお話
契約書を結ぶ前から、サービスが決まっているという案件を引き受けてしまったIT小僧は、他を巻き込みながら進みつつあった。
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目次
IT業界の闇 「契約書なきシステム開発をやってはいけない」 IT小僧のシステム開発経験より 前編
吉本興業でタレントとマネージメント契約書がなかったということで 「契約書もなしで仕事するなよ!」 なんてTwitterでのささやきを見かけました。 いえいえ! IT業界では、つい最近まで似たようなこと ...
はたして、納期まで間に合うのか否か
今回のIT小僧のブラック時事放談は、
IT業界の闇 「契約書なきシステム開発をやってはいけない」 IT小僧のシステム開発経験より 後編
と題して、かつてIT業界って契約書が締結される前から開発してました。
というIT小僧の実体験をお話しします。
ブラック時事放談なので企業名、個人名は、伏せさせていただきます。
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プロジェクトのおさらい
金融系オンライントレードシステムを3ヶ月で作り上げるという無謀な案件実行中
契約書は、後から出来上がり
顧客上層部の強引な命令で急遽つくられたオンライントレード部の人は、ネット取引未経験
要件定義どことか、要望も固まっていない。
そして納期は、3ヶ月後
IT小僧率いるプロジェクトメンバーは、2人
インフラは、ハードウェアベンダーにゴリ押し
絶望的状況の中で作業を続けいる状況です。
1人月1200万円
業界は、伏せますが、担当していたオンライントレードは、IT小僧が、ほぼ 100% ゼロから構築、他社が目をつける前に市場を刈り取ることを目指していた。
オンライントレードでリアルタイムに相場を見ながら取引できるという、最先端のパッケージ
ビジネス特許を提出。後追いを牽制しながら、一気に市場を掌握する計画だった。
スタートアップ企業としてその作戦は成功、7人のメンバーしかしなかったが、急成長を遂げていた。
IT小僧の業界の知識は、社会人1年制のシステム開発会社が「それ系」だったので仕組みは知っていた。
と言っても今回のプロジェクトは厳しい戦いになるわけですが、報酬は、半端ない金額で人月に換算すると1人月1200万円を越えるという凄まじい状況
ITバブル絶頂期と言っていいでしょう。
ヘルプ要員
パッケージとして設計したオンライントレードシステムですが、パッケージとは名ばかりで、企業毎に大きな修正をしなければならない。
パッケージ化されていたのは、リアルタイムの相場表とチャート、市場への発注システムぐらいしかなかった。
デザインは、0から作り直し、業務システムへのつなぎこみも作らなければならない。
そして、今のように画面作成ツールなどない時代では、
HTMLをすべて人の手で書いていた。
さすがに2人だけでは、厳しく、助っ人を会社に頼むことになる。
サービス開始まで2ヶ月というところで「新人採用」と「他社からのヘルプ」で2名プロジェクトに加わってもらった。
「新人くん」は、HTMLの経験があるということで画面設計と政策を任せた。
「他社からのヘルプ」くんは、バックオフィスの帳票作成に取り組んでもらった。
IT小僧は、バックオフィスとつなぎ込み、特殊発注の仕組みを構築していた。
時間がないのでつねに進行状況を確認、毎日、終電ギリギリの清潔
「新人くん」は、最初の1週間、デザイン、次の1周間は画面作成を行っていた。
「なんとか、サービスインまで行けそうだ。」
IT小僧は、厳しいながらも一筋の光が見えていた。
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そりゃないよ
2周間ほど経過したあたりで「新人くん」が、会社にこなくなった。
こなくなって1週間後、出社
そこで彼は、私に言った。
新人くん
「会社って、こんなものですか?」
IT小僧
「こんなものとは?」
新人くん
「会社って、仕事が終わったら みんなで飲みに行ったりして親睦を深めるものじゃないんですか?
この会社って、飲みにも行かないし、お昼もバラバラで一緒に行かないし、おかしいと想うんですけど」
IT小僧
「今は、案件で忙しいし、そもそもフレックスなんで昼休みとか自由だよ」
新人くん
「そんな 会社は、おかしい ぼくに合わないので辞めさせてもらいます。」
と言って彼は、スケッチレベルのHTMLを残して会社を辞めた。
後でわかったのですが、前職は、某地方公務員だったそうです。
IT小僧
「そんな 定時であがって酒飲んでいる会社なんて ないわ」
そもそも、途中で仕事を放り出すのか・・・
お前みたいなやつは、どこに行っても使い物にならないわ
IT小僧は、ブチギレて蹴飛ばすように設置されたロッカーを蹴飛ばした。
※この会社では、ストレス発散のために廃棄されたロッカーがあって、客から理不尽なことを言われたらそれを蹴ってストレスを解消するという施設?があった。
社長の粋なはからいである。
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良い子のみんなは、ロッカーを蹴るとかしないように
絶体絶命
「他社からのヘルプくん」が、会社に来なくなった。
1週間後ヘルプくんの社長が来社
ヘルプくん社長さん
「彼は、難病と診断されてしまったのでこれ以上仕事ができない」
「違約金を払うので、勘弁してほしい」
「え?」
病名は、かつてこの国首相がなっていた慢性的な病気である。
難病指定だった。
「ヘルプくん」は、1帳票を作っただけで会社を去っていった。
ということで、サービスイン1ヶ月前でプロジェクトは、2名、そのうち1名は、相場表やチャートなどを担当しているので、オンライントレードの仕組みは、IT小僧一人でやらなければならなくなった。
会社の他のメンバーは、自分の仕事で手がいっぱいで手伝う余裕などなし
追い込まれたIT小僧 絶体絶命です。
ラスト1ヶ月
「新人くん」の残したものは、いい加減だった。
使い物にならず、画面を再作成。
「他社からのヘルプくん」の残帳票は、残り4つ
ここからは、
フロントデザイン、発注エンジン、市場発注システム、業務系つなぎ込み、帳票を含むバックオフィス
そして、膨大な試験をすべて一人で作業
打ち合わせは、すべて電話、メールを書いている時間がもったいない。
毎日、キーボードを叩いていた。
社長が、顧客と相談してくれて、一部の機能は、後から搭載するということで合意
ここからは、正直 あまり記憶がない。
試験納品をしてからの1周間は、家に帰らなかった。
昼か夜かわからない日が続き、家族も大迷惑をかけた。
金融系システムは、トラブルがあると被害が大きい。
IT小僧が担当していた業界は、かなりヤバい業界で「巨額なカネが動く市場」だった。
ちょっとやば目の人も多く、あっち系の人と思うような人も多かった。
「ダークな世界で人の生死(いきしに)もあったとか?なかったとか?」
そんなダークな市場が、かつては、この国にあったのです。
その分、カネ払いはよく、システム会社はかなり儲かった。
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オープン
夢遊病者のような状況でオープンの日を迎えた。
オープンの10分前まで作業をしていたと想う。
※辛すぎてあまり 記憶がない
今のようにネットが普及していない時代だったので、一気に大量に登録されることもなく初日は、無事完了
奇跡的にシステムは、ほぼ無事故でオープンの一日が終わった。
と言ってもここからが、修正、残件追加、マニュアル、仕様書作成が待っている。
オープンから3ヶ月は、深夜だろうが、通勤途中だろうが、電話応対の毎日
駅のホームからノートパソコンで対処したのも何度もあった。
それでも徐々にトラブルは減り、残件も終了
苦闘の3ヶ月の成果として 会社の売上の1/3(年間)のカネが振り込まれた。
しかし、IT小僧には、達成感などなく、ただ作業の日々が続く
休む間もなく、次のオンライントレードを構築する日々が続く。
その後
会社は、スタートアップから無理して仕事をしていたため、大きな成長を遂げることになった。
7人ではじめた会社が、たった7年で100名を越す従業員と市場の60%以上を掌握する企業となった。
給与はよかったけど、精神的、肉体的に厳しく、心を病んでしまった人など多くの人友人たちを見送ることになる。
0時過ぎに帰宅、5時に起床、8時前には会社でサポート開始
そんな生活が、10年間続く
家族は、崩壊寸前、IT小僧も限界点に達していた頃、リーマンショックで金融系の業界は壊滅的打撃を受け、開発会社も次々と消えていった。
IT小僧のいた、会社もリストラを実行
※これについては、別ブログで掲載したので読んで見て下さい。
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早期退職募集メールが予告もなくやってきた ある会社で経験したリストラの話(前編)
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これを機に退社を決意、金融業界から足を洗うことになった。
その後、IT小僧が、関わっていた「やばめの金融取引」は、裁判沙汰が多く、お役所の規制強化とリーマンショックで衰退
今では、自分が、かかわっていた企業は、ほぼ消滅しました。
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契約書なき仕事は、絶対にやめよう
言いたいのは、「契約書なき仕事」です。
口約束や簡単なメールだけでシステムを発注していたという時代は確実にありました。
「コンプライアンス」とか「働き方改革」なんて そもそもそんな概念ですらなかった。
IT小僧がやっていた業界も「後からの追加機能」が、延々と続き、保守料という枠の中から補填していた。
「追加機能」といっても
「これをこうして こうやってほしい」という曖昧さ
契約書にきちんと明記していないし、「要件定義」など作っても無視される時代でもあった。
だからこそ「契約書なき仕事」は、絶対にやらないし、やらさせない。
要件定義を平気で破るクライアントも多かったし今でも多い。
こうした、顧客には、絶対に近づいてはならない。
- 訴訟の多い企業
過去のシステムに関する訴訟が多いところも近づかないことをオススメする。 - 要件定義で区切り
大規模な案件で「要件定義」で一度、区切りをつけない企業は、敬遠したほうがよい。
大規模な案件にもかかわらず、要件定義で区切らない企業は、要件定義を破って追加が増える場合が多い。 - もう丸投げの時代ではない。
外注に丸投げの時代は終了、これからは、プロジェクト単位でチームを組んで開発する時代だと想う。 - 業務系のシステムは先がない。
業務系のシステムは、その多くは、ERpに置き換え可能でクラウドとともに移行するであろう。 - 契約書ありきの仕事
先行開発は事故の元である。 - 仕事より自分と家族を大切に
燃え尽きてしまった人を多く見てきました。
健康や精神を病んで業界から退場した人も多かった。
そして、家族との問題で不幸担った人も多くみてきました。
今や、IT小僧がやってきたITバブル時代ではないので、自分を大切にしよう。
まとめ
2000年前後のITバブル時代の企業は、どこも似たような状況だったと思います。
同世代のエンジニアは、同じような体験をしているので 自慢話にもならない。
そして、ITバブルが、ハジケて、リーマンショックで多くの開発会社がダメージを受けた。
もうあんな時代はこないと思うし、あんな無理な案件は、ないだろう。
今回、このブログを書いていて一番感じたことは、ラスト1週間の記憶がないということです。
よく、正気を保つことができたと思います。
こんな狂気なプロジェクトは、二度とないと思います。
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