※本ページはプロモーションが含まれています

IT小僧の時事放談 今日のAI話

AI投資の95%がリターンなし|MIT・EY調査が暴いたバブルの実態とゴールドマン・サックスの警告

「AI(人工知能)に投資すれば未来が開ける」——そんな熱狂が続く一方、冷静なデータが別の現実を突きつけています。MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査では生成AIに投資した企業の95%がリターンゼロ、EY(アーンスト・アンド・ヤング)の調査では99%が金銭的損失を報告。それでもハイパースケーラー(超大規模クラウド事業者)は2026年に合計600兆円超の設備投資を計画しています。
ゴールドマン・サックスの懐疑論はどこまで正しいのか、米国の投資家・テック産業の動向から「AI投資の行方」を徹底考察します。

📋 もくじ

  1. MIT・EY調査が示した「衝撃の数字」
  2. ゴールドマン・サックスの懐疑論とその根拠
  3. それでも止まらないハイパースケーラーの爆走投資
  4. 米国投資家はどう判断しているか
  5. 「AIバブル」崩壊は来るのか?専門家の見方
  6. IT小僧の本音コラム
  7. まとめ

MIT・EY調査が示した「衝撃の数字」

2025年夏、MITメディアラボが発表した報告書「ザ・ジェンAI・ディバイド(The GenAI Divide):AIビジネス現状2025」は、テック業界に衝撃を与えました。企業の生成AIへの投資総額は300〜400億ドル(約4.5〜6兆円)に達しているにもかかわらず、95%の企業が金銭的リターンをまったく得られていないという結論です。

この調査は、150人のビジネスリーダーへのインタビュー、350人の従業員へのアンケート、300件のAI導入事例分析という幅広いデータに基づいています。成功しているのはわずか5%で、その企業群は特定のプロセスに特化したカスタマイズ、技術指標ではなくビジネス成果による評価、そして既存業務への深い統合という共通点を持っています。

調査機関 主要な発見 調査規模 発表時期
MIT メディアラボ 95%がリターンゼロ・PLへの影響なし インタビュー150名、調査350名 2025年7〜8月
EY(アーンスト・アンド・ヤング) 99%がAIリスク関連の金銭的損失を報告(平均損失440万ドル) 21カ国・975人のCスイート 2025年10月
ガートナー(Gartner) 2025年末までに30%の生成AIプロジェクトが中断予測 業界調査 2025年

EY調査の注目点は、損失の性質です。99%が「AIリスク関連の金銭的損失」を報告しましたが、これは純粋な投資回収失敗だけではなく、AI規制への非準拠(57%)、サステナビリティ目標への悪影響(55%)、出力のバイアス問題(53%)など、ガバナンス(統治体制)の欠如に起因するものが大半です。同調査では、「責任あるAI実践」を進めた企業ほどビジネス成果が高いという対照的な結果も示されており、単なる導入数の問題ではないことが浮き彫りになっています。

ゴールドマン・サックスの懐疑論とその根拠

ウォール街の大手投資銀行ゴールドマン・サックスは、2024年6月に発表した
「支出過多、便益不足(Too Much Spend, Too Little Benefit?)」
という報告書以来、AI投資に対して一貫して懐疑的な立場をとっています。中心人物はグローバル株式リサーチ責任者のジェームズ・コベロ氏です。

💡 ゴールドマン・サックスの主な懐疑論ポイント

  • 2025年のAI投資7000億ドル(約100兆円)が米国GDP成長に与えた寄与は「実質ゼロ」(チーフエコノミスト・ヤン・ハツィウス氏)
  • 企業全体の生産性向上との相関関係が現時点では確認できず(2025年3月時点)
  • ハイパースケーラー各社は株価が市場平均を下回っても設備投資を拡大し続けており、これは「FOMOウェイ(FOMO:乗り遅れ恐怖)が合理的判断を上回っている」状態
  • 半導体株は「軍拡競争が永遠に続きリターンが来ない世界」を前提に価格付けされているリスク

一方で、同銀行内でも意見は分かれています。別チームの分析では「コンシューマー(消費者)のAI採用は目覚ましい」とし、企業がAI支出から価値を引き出せるかどうかが将来の投資リターンを左右するとしています。さらに2026〜2031年には累計約7.6兆ドル(約1100兆円)のAI関連設備投資が見込まれるという試算も公表しており、否定一辺倒ではありません。

コベロ氏はかつて「ハイパースケーラーの株価が市場を下回り続ければ設備投資は削減される」と予測しましたが、現実はその逆でした。マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタはS&P500を下回るパフォーマンスでも投資を拡大し続け、2025年だけでデータセンター向けに1820億ドルもの負債を発行しました。

それでも止まらないハイパースケーラーの爆走投資

「リターンが出ない」という調査結果があるにもかかわらず、米国のビッグテック(大手テクノロジー企業)の設備投資(キャペックス:CapEx)は加速の一途をたどっています。

年度 主要5社のキャペックス合計 前年比 うちAI関連比率
2024年 約2560億ドル(約37兆円) +63% 約60%
2025年 約4430億ドル(約64兆円) +73% 約70%
2026年(予測) 約6020〜6900億ドル(約87〜100兆円) +36〜56% 約75%

主要5社(アマゾン、マイクロソフト、アルファベット、メタ、オラクル)が2026年に個別で計画するキャペックスは:アマゾン約2000億ドル、アルファベット約1750〜1850億ドル、メタ約1150〜1350億ドル、マイクロソフト約1200億ドル以上、オラクル約500億ドルとされています。

問題は資金調達です。これほどの投資額は内部キャッシュフローだけでは賄えず、ハイパースケーラーは急速に債務市場に依存し始めています。2025年だけで1080億ドルもの社債を発行し、2026年はすでに1000億ドルを超えるペースで発行が続いています。キャペックスの売上高比率も45〜57%という前例のない水準に達しており、伝統的なテック企業よりも重工業やインフラ事業に近い資本構造になっています。

ハイパースケーラーとは、Amazon、Microsoft、Googleなど、世界規模で超巨大なデータセンターを運営し、拡張自在なクラウドコンピューティングやストレージサービスを提供する巨大IT企業の総称です。

 

キャペックス(CAPEX)とは「資本的支出」を意味し、企業が将来の利益を生み出すために行う設備投資や固定資産の取得・改良費用のことです。

米国投資家はどう判断しているか

米国の機関投資家や市場参加者の間では、AI投資に対する見方が大きく二分されています。

強気派:「軍拡競争には乗り遅れられない」

KKR(ケーケーアール:大手プライベートエクイティファンド)は「AIインフラは世代を超えたコンピューティングシフトであり、長期的に複利リターンをもたらす」との立場を公式に表明しています。データセンター、電力網、コネクティビティへの投資継続を宣言しつつ、「電力・土地・グリッド接続・許認可というモートウェイ(競争上の堀)を押さえた者が複利的なリターンを獲得する」と指摘。

ハイパースケーラー各社のCEOが一様に「供給制約であって需要制約ではない」と強調していることも、強気派の根拠となっています。マイクロソフトはアジュール(Azure:クラウドサービス)の受注残が800億ドルに達しているにもかかわらず、電力制約のために需要をさばけていないと開示しています。

慎重派:「インフラと収益の乖離が危険水域」

クレセット・キャピタル(Cresset Capital:米国の独立系ウェルスマネジメント会社)は「最も懸念されるのはインフラ投資と収益の乖離」と指摘。2025年のハイパースケーラーのキャペックスは約4000億ドルに達したのに対し、エンタープライズAIが生み出した実際の収益は約1000億ドルに過ぎないという試算を示しています。

また、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の分析では、AIが10%のリターンを確保するためだけでも年間6000億ドル以上の収益が必要だという試算も示されており、現在の投資水準の正当化がいかに困難かを物語っています。

📊 投資家センチメント(2026年春現在)

ゴールドマン・サックスのリサーチによれば、大手AIハイパースケーラー株の相関係数は2025年6月の80%から20%へと急低下。市場が「AI銘柄一括買い」から「キャペックスと収益の連動を示せる企業だけを選別する」フェーズに移行しています。クラウドプラットフォーム事業でAI収益の明確な伸びを示した企業は株価が上昇している一方、純粋なインフラ投資銘柄は苦戦しています。

「AIバブル」崩壊は来るのか?専門家の見方

現在のAI投資ブームをドットコムバブル(1990年代末〜2000年代初頭のインターネット投資バブル)と比較する見方は多くありますが、専門家の意見は「単純なバブル崩壊」ではないとする方向に傾きつつあります。

観点 バブルに近い要素 バブルとは異なる要素
収益性 企業の95〜99%がリターンを得られていない 半導体メーカー(エヌビディア等)は実際に記録的な収益を計上
財務健全性 キャペックスが内部キャッシュフローを超え、大規模な社債発行が必要 負債比率はS&P500平均を大幅に下回る健全水準
投資規模 GDP比で過去の技術ブームに匹敵する水準(2.2%) 1990年代後半の最大値(GDP比1.5%超)を超えた段階でもある
実用性 ワークフローへの定着率が低く、業務改革に結びついていない テック・メディア業界では実際の業務変革が始まっている

アリアンツ・リサーチ(Allianz Research:欧州最大の保険会社系シンクタンク)は「2026年がAI投資の転換点」と位置づけています。AI関連の価格上昇がインフレ圧力となり、コアPCE(個人消費支出物価指数)に0.3ポイントの上乗せ効果が確認されているという分析も、投資判断に影を落としています。

スティーフェル(Stifel:米国の投資銀行)は「2026年は65年ぶりにテック製品価格の上昇率が賃金上昇率を上回る年になる」と指摘し、「インフレーション・ブーム(インフレ的好況)」への移行が消費者の実質所得を圧迫するリスクを警告しています。

IT小僧の本音コラム

元金融システムエンジニアをしてきた経験から言わせていただくと、今回も過去に何度も発生してきた事象となります。
1990年代末のインターネットブーム、2000年代初頭のERP(統合基幹業務システム)導入ラッシュ、2010年代のビッグデータ狂騒曲……いつも「まずは導入ありき」で、導入後のROI(投資対効果)は後から考えましょう、という文化がありました。

今回のAIブームも構造は同じです。MITの調査が「失敗の主因は既存業務との不整合」と言っているのは、まさに現場の実感と一致します。AIツールを入れたのに、入力データが整備されていない、承認フローが変わらない、評価基準が売上でなく「導入した」という実績になっている——これでは成果が出るわけがない。

一方で、ハイパースケーラーのFOMO(乗り遅れ恐怖)駆動の投資にも一定の合理性はあります。AIインフラという「水道管」を引く者が将来の覇権を握るのは歴史が証明しています。電力、鉄道、インターネット回線——インフラ投資は常に「今は赤字でも将来の独占的地位が報酬」という論理で動いてきました。

ただし、それが成り立つのは「インフラを引いた先に実際に需要がある」という前提があってこそです。2026〜2031年の7.6兆ドル投資計画が報われるかどうかは、エンタープライズ(企業)がAIを真剣に業務変革に結びつけられるかにかかっています。今の数字は明らかに「過熱」ですが、崩壊よりも「選別」の時代が来るというのが私だけではなく投資家達は読んでいます。

勝者はごく少数、そして彼らは今から黙々と準備しているのではないでしょうか?
最終的に勝つのは、数社となるのは明らかです。
誰が勝つかは、最終的にカネとコネと運を集めた者なんだろうな・・・

まとめ

  • MIT調査(2025年):企業の95%が生成AIへの投資でリターンゼロ。成功する5%は業務特化カスタマイズと成果指標管理が共通点
  • EY調査(2025年10月):99%の企業がAIリスク関連の損失を経験(平均440万ドル)。ガバナンスを整えた企業は成果を出している
  • ゴールドマン・サックス:2025年のAI投資のGDP貢献は「実質ゼロ」と診断。ただし長期的なAIインフラ需要の存在は認める
  • ハイパースケーラーの現実:2026年は合計600〜690億ドルの設備投資を計画。社債発行による資金調達が常態化
  • 投資家の判断:「AI銘柄一括」から「キャペックス収益連動銘柄の選別」フェーズへ移行中。バブル崩壊より「勝者の選別」が現実的シナリオ

AI投資の「バブル崩壊」を恐れるよりも、今注目すべきは「どの企業・どのセクターがAIを本当の業務変革に結びつけているか」を見極めることです。次の18カ月は、AI投資が歴史的なインフラ基盤の構築となるか、最大規模の資本配分ミスとなるかが判明する重要な局面です。

参考情報:フォーブス・ジャパン(2025年)、MITメディアラボ「ザ・ジェンAI・ディバイド:AIビジネス現状2025」、EY「責任あるAI・パルス調査(第2回)」(2025年10月)、ゴールドマン・サックス・リサーチ各レポート(2024〜2026年)、フォーチュン誌、トムズ・ハードウェア、クレセット・キャピタル市場分析(2025年12月)

-IT小僧の時事放談, 今日のAI話
-, , ,

Copyright© IT小僧の時事放談 , 2026 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.