「地球上のどこでも最大6Tbps」という、にわかには信じがたい数字を掲げる衛星通信ネットワークが登場しました。
名前は TeraWave。発表したのはAmazonではなく、ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業 Blue Origin です。
Starlinkのように“個人のネット回線”を主戦場にするのではなく、TeraWaveが狙うのは 企業・政府・データセンターといった「大量データを安定して動かしたい顧客層」。
この違いが、性能の設計や価格の考え方、サービスの使われ方まで大きく変えていきます。
目次
TeraWaveとは何か
TeraWaveは、Blue Originが2026年1月に発表した衛星通信ネットワーク構想で、「地球上のあらゆる場所に、最大6Tbpsの“対称通信(アップロードとダウンロードが同等)”を提供する」としています。
ここで重要なのは、TeraWaveが「一般家庭向けの衛星インターネット」を前提にしていない点です。Reutersは、TeraWaveは個人向けではなく、企業・政府などエンタープライズ専用になる見通しだと報じています。
Blue Origin Introduces TeraWave, a 6 Tbps Space-Based Network for Global Connectivity | Blue Origin
https://www.blueorigin.com/ja-JP/news/blue-origin-introduces-terawave-space-based-network-for-global-connectivity
性能は本当に“6Tbps”なのか
「6Tbps」は“スマホ1台が6Tbps”という話ではありません。ポイントは2つあります。
まず、TeraWaveはマルチオービット(複数軌道)構成を取るとされます。報道ベースでは、主力は低軌道(LEO)に多数の衛星を置き、さらに中軌道(MEO)側にも衛星を置く設計が語られています。
次に、通信方式として**光通信(レーザーリンク)**を大きく押し出しています。光は電波よりも大容量化がしやすい一方、運用は難しくなります。Blue Origin自身もTeraWaveの説明で、巨大データを動かす用途を明確にしています。
用語ミニ解説
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Tbps(テラビット毎秒):Gbps(ギガビット毎秒)の1000倍。データセンター間で大量データを動かす“幹線”で使われる桁感。
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対称通信:上り(アップロード)も下り(ダウンロード)も同じ速度を狙う設計。映像配信だけでなく、クラウドへ大容量データを送る業務に効きます。
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LEO/MEO:LEOは地球に近く遅延が小さい。MEOは広域をカバーしやすいが遅延は増える。両方を使うのが「マルチオービット」。
誰のためのネットワークか
TeraWaveの狙いは「ネットが届かない場所に一般家庭のネットを届ける」だけではありません。Blue Originや報道が強調するのは、ミッションクリティカル(止められない)な通信です。具体的には、企業拠点・政府用途・データセンター運用など、“止まったら損害が大きい通信”で、光ファイバーが引けない/冗長化したい場所に帯域を追加する用途が想定されています。
サービス開始はいつ?
複数の報道で、配備開始は**2027年後半(Q4 2027〜「late 2027」)**とされています。
つまり、2026年時点では「今すぐ契約できるサービス」というより、大規模ネットワークの建設計画が公表された段階です。
予想価格
現時点で、TeraWaveの公式の価格表は見当たりません(少なくとも公開発表では具体額が示されていません)。
ただし、Reutersが「エンタープライズ専用」「想定顧客は約10万社規模」と報じていることから、Starlinkのような“月額いくら”の大衆向けというより、回線容量・SLA(品質保証)・冗長化・設置条件などを組み合わせた**法人契約(個別見積り)**になる可能性が高いと考えるのが自然です。
(ここは今後、正式な料金や端末仕様が出てからアップデートするのが安全です)
Starlinkと何が違う?
違いは「速さ」以上に、ターゲットと設計思想です。
Starlinkは基本的に、個人・法人・公共用途まで幅広く“アクセス回線”として広げてきました。一方TeraWaveは、報道ベースで最初から企業・政府・データセンター向けに特化し、対称大容量や冗長性を重視しています。
また、TeraWaveはマルチオービットや光リンクを前面に出しており、「世界中どこでも“超大容量の幹線”を作る」方向性が濃い。Starlinkが“多くのユーザーに広く提供する網”なら、TeraWaveは“少数でも巨大容量が必要な顧客向けの網”というイメージです。
日本でも使用できるのか?
TeraWaveは「地球上のあらゆる場所」をうたっていますが、日本での提供可否(提供形態、認可、販売窓口、開始時期)は現時点で明確に公表された情報が見当たりません。
ただし“企業・政府・データセンター向け”である以上、実際の日本提供は 電波・衛星通信の制度対応、地上局(ゲートウェイ)やパートナー、法人向け販売体制が整うかに左右されます。
ここで混同しやすいのがAmazonの衛星網です。Amazon側は別に**Amazon Leo(旧Project Kuiper)**を進めており、こちらは公式に「世界中に高速・低遅延ネットを届ける」計画を説明しています。日本ではNTT/スカパーJSATとの協業発表もあり、日本市場向けの展開を意識した動きはKuiper(Leo)側のほうが情報が揃っています。
つまり「日本で使える衛星ネット」を今調べるなら、TeraWaveよりも Starlink や Amazon Leo(Kuiper) のほうが現実的な情報が先に出てきます。
TeraWaveは“衛星インターネット”というより「宇宙の超大容量バックボーン」
TeraWaveは、家庭向けのWi-Fi代替というより、光ファイバーの代替・補完を宇宙から行うような構想に見えます。6Tbpsという数字は派手ですが、狙いどころは「どこでも高速」ではなく、止められない通信を、巨大容量で、対称に、冗長化して提供するという設計思想です。
2027年後半の展開開始までに、端末、料金、提供エリア、パートナーなどの詳細が出てくるはずなので、今後の続報が出たタイミングで記事をアップデートすると強い内容になります。
