「データセンターを造れば、地方に雇用がドッと生まれる」といった夢のような誘致文句を、自治体や企業はしばしば掲げます。
しかし、米国の最新統計と日本の地方誘致の動きを押さえると、「本当に“何千人の雇用”が生まれているのか?」という疑問が浮かび上がります。
本記事では、米国でのデータセンター雇用の実態、日本の地方誘致政策、そのギャップと共に“雇用創出”の真実を探っていきましょう。
目次
米国では“量”ではなく“偏在”が見える
米国では、データセンター関連の雇用が2016年から2023年にかけて約60%増加し、30万人超から50万人に拡大しています。
Census.gov
しかしその増加は均等ではなく、州別に見るとカリフォルニア、テキサス、フロリダ、ニューヨーク、ジョージアだけで全体の40%以上を占めていました。
Census.gov
例えばテキサス州では、2018〜2024年でデータセンター関連の雇用が38%伸びたと報じられています。
Axios
つまり「データセンター=どこでも沢山の雇用」という図式ではなく、「インフラ・電力・回線・地理条件が揃った地域に集中して雇用が生まれている」という構図が実態です。
さらに、例えば建設フェーズでは「数千人規模」の労働力が動員されるケースもありますが、運用段階に移ると常駐人員数はぐっと少なくなります。
例えば、ある米国プロジェクトでは「完成後のフルタイム運用要員は100人程度」と報じられたこともあります。
WIRED
この点、自治体が誘致時に掲げる「何千人規模の雇用効果」という宣言とは乖離が出ていると言えます。
日本の地方誘致――期待と現実のギャップ
日本においても、地方自治体がデータセンター誘致を進めており、経済産業省は2022年に「データセンター拠点立地に前向きな地方公共団体と意見交換」を行い、100以上の自治体が候補地を提示していると発表しています。
経済産業省
都道府県数で言えば、37道府県で誘致計画が承認済みという報告も出ています。
note(ノート)+1
一方で、ブログ等では「誘致にあたって期待される大量雇用創出は誤解だ」という声もあります。
地方分散したデータセンターでは、高度技術職の地域外採用が多く、地元住民が就く職は警備・清掃・施設保守など限定されており、誘致側の「雇用創出数期待」が実際の運用フェーズではかなり縮小されるケースがあると指摘されています。
社内SEゆうきの徒然日記
つまり、日本でも「誘致=雇用天国」という構図だけで判断するのは危ういということです。
雇用だけが“効果”ではない――固定資産税・地域振興という視点
雇用創出に過度な期待を掛けるのではなく、データセンターが地域にもたらす効果を多角的に見ることが重要です。
たとえば、施設そのものの立地によっては固定資産税収入の増加、関連インフラ整備(電力・通信回線・冷却設備)に伴う地元業者の受注増、さらには地域内のクラウド・AIサーバー運用拠点として新たな産業が生まれる可能性もあります。
日本の誘致資料では「誘致希望の地方自治体数100以上」「補助金制度を設置」といった数字が示されており、地方分散・地域強化を狙った政策的意図が明確にあります。
経済産業省
つまり、雇用創出だけではなく、地域インフラと産業構造強化という文脈で理解することが自然と言えるでしょう。
誘致する側・住民・運用者が押さえておくべきポイント
地方自治体がデータセンター誘致を検討する際、雇用増加を最大の期待値とするだけでは後悔につながる可能性があります。
まず、運用段階における人員数が建設段階ほど多くないという実態を理解すべきです。
さらに、誘致地として必要な条件――大型電力供給、冷却効率の良さ、通信回線の接続性、土地と地盤の安全性――が揃っていなければ、雇用・税収・受注の実効性が低くなります。
住民・地域としても、「運用フェーズまで含めた長期視点」「どのような職種の雇用が地域に生まれるのか」「専門職はどれだけ地域から採用されるのか」を問い続けることが必要です。
誘致発表時に「数千人の雇用」といった見通しが出ても、それが運用開始後に維持・拡大されるかどうかを見極めておくべきです。
結論:雇用創出は“限定的”だが地域戦略には価値あり
データセンター誘致=大量雇用創出という構図は、米国・日本双方で現実には“限定的”な側面を持っています。
しかしそれは「無意味だ」という意味ではなく、「雇用創出だけを過度に期待するのではなく、長期的な地域インフラ強化・税収確保・産業誘致として捉えるべきだ」と言えます。
これから地方でデータセンター誘致を検討する自治体や地域住民、またデータセンター関連の雇用を目指す求職者にとって、本質は“どれだけの職が地域に定着するか”“その施設が地域にとって持続的なメリットをもたらすか”を見極めることにあります。
ひとりごと
データセンターというのは、雇用はほおぼ生まれない
確かに空いている土地を遊ばせるのはもったいないし、ヒトが減った地域でのデータセンター誘致は、地方自治体にとっては、大きな意味があるだろう。
しかし、雇用という面からすれば、働く人が極端に少ないデータセンターで雇用が生み出されることが期待できない。
「雇用創出だけを過度に期待するのではなく、長期的な地域インフラ強化・税収確保・産業誘致として捉えるべきだ」
というのは、中央のお役所や利権団体の得意なセリフですが、工場などとは違い、データセンターは、何も生み出さない。
税収確保程度で決して「住民の活性化」には繋がらないだろう。
この記事をみてください、
しかし少なくとも現時点では、雇用を脅かす主な要因は、必ずしもAIそのものではなくAIの稼働を支えるデータセンターと言えるだろう。大企業や投資家が年間に使える資本には限りがあり、その大半がデータセンターの建築に投じられている。つまり、製造業のような他業種への投資が減っているのだ。ADPによると、それによって職を失った人の数は10月の1カ月間で3,000人に上るという。
米国では、AI&データセンターに投資が集中するために 他の業種への投資が減ってしまったため 雇用の悪化に繋がっている。
日本では、まだそこまでのAI投資はないのですが、「意味のない(無駄&移民利権 他)の投資での無駄遣い」こそ日本が貧しくなっている原因である。
首相が替わっても、政権が変わっても 根本的に税金を食い尽くす連中を一掃しない限り 未来はない。
厳しい状況が続く地方を食い物にする連中が多くいるということが悲しい現実である。
📚 主な参考・出典
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U.S. Census Bureau – Employment in Data Centers Increased by More Than 60% From 2016 to 2023 Census.gov
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Axios – Texas is a data center job hotspot in the tech boom Axios
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経済産業省 – データセンターの誘致に前向きな地方公共団体との意見交換について 経済産業省
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Note記事 – 日本におけるデータセンター最新動向と課題(雇用・誘致側視点) note(ノート)
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ブログ記事 – データセンター地方分散の真実/誤解:雇用効果への期待と現実のギャップ 社内SEゆうきの徒然日記