経済産業省が昨年発表した。
「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
このレポートは、反響が大きく、未だに「2025年の崖」というキーワードで多くの検索がされています。
当ブログでも何度か取り上げてきたのですが、
「旧システムを使い続けるリスク」に対して警鐘を鳴らすという意味で経済産業省の目論見は成功していると思います。
しかし、実態はどうなのか?
今回のIT小僧の時事放談は、
【2025年の崖】老巧化した基幹システム 21年以上刷新されないものが22.3%も存在する。「企業IT動向調査2019」
と題して
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表した「企業IT動向調査報告書2019」について考えてみよう。
小難しい話をわかりやすく解説しながらブログにまとめました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
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目次
2025年の崖
簡単におさらいです。
経済産業省が2018年9月7日発表
「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
この内容は、いろいろなところで紹介さえ、当ブログでも取り上げました。
詳しくは、いかのブログを読んでいただけたらと思います。
-
経済産業省「DXレポート」で記載されている「2025年の崖」というキーワード 崖から落ちる会社多数でることは間違いない
2018年にブログに掲載した記事ですが、2025年は来年です。 最大で年間12兆円もの経済損失があると経済産業省は言っていますが、本当でしょうか? 日本のオフィスでは、 相変わらず EXCELでドキュ ...
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内
部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラッ
トフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)
を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリ
アルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上
の優位性を確立すること
「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」より
簡単に言うと
- 企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めなさい。
- そのためには、老巧化した既存のシステムを見直しましょう
- 老巧化したシステムを放置するとDXに対応できないため、2025年には、崖から転げ落ちるように企業価値が下がる。
こんな感じです。
裏を返せば、
「古いシステムをいつまでも使うな、新しいシステムにして ITに投資せよ」
ということです。
銀行は、「みずほ銀行」を最後に対応済み、地方銀行は、クラウドやパッケージ、共用サービスで対応済みまたは、対応中
その他の業界では、対応済みのところもあればまだなところもある。
デジタル化の取組み加速中
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が、発表した「企業IT動向調査2019」というレポートによると
- 商品・サービスのデジタル化は約5割(14.5ポイント増)、プロセスのデジタル化は約7割(22.4ポイント増)の企業が取り組んでいる。
• 売上高1000億円を境に取組み状況に大きな差
• 取組み割合が高い業種グループは、金融、社会インフラ、サービス、機
械器具製造。特にサービスは、いずれのデジタル化も大きく進展- 商品・サービスのデジタル化、プロセスのデジタル化における進め方などの違いが明確
• デジタル化による成果の秘訣、デジタル化推進体制、IT部門の役割、
予算管理枠、外部活用方法などが違いがあった
• 一方、デジタル化の取組みに関する課題や有効な取組みはいずれも
大きな違いはなかった
これを見る限り、
「順調に企業のデジタル化に向けての対応が、進んでいる」
といえるのですが、実は、そうでもないことが、表面化している。
老朽化している基幹系システム
企業のデジタル化という表向きのシステムは、問題ないのですが、それを支えるいわゆる基幹系システムが、追いついていないということがわかった。
「企業IT動向調査報告書2019」によると
21年以上以前に構築されたもの 22.3%
10~20年以前に構築されたもの 33.8%
全体の半数異常が、システム構築から10年以上経過しているという結果でした。
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ブラックボックス
基幹システムの中で
「小さなシステム要件の変更にも、対応には時間がかかる」
23.2%
「システム要件の変更にはほとんど対応できていない」
6.1%
合計で30%近くの企業が、基幹系システムが硬直化、ブラックボックス化していて対応がっまならない状況になっている。
サービス面でデジタル化が進んでいてもバックオフィスである基幹システムが対応していなければ、
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)
など「絵に描いた餅」とも言える状況で「2025年の崖」から転げ落ちてしまうかもしれない!
デジタル化の明と暗
DXを重要と感じている経営者は、基幹システムをERP化するなどして、コスト削減と生産性の向上を目指すことに積極的である。
積極的な企業
「デジタル化導入済みの企業」
- 商品・サービスのデジタル化 41.2%
- プロセスのデジタル化 45.5%
「既存の情報システムに、比較的大きな改造を行うことで対応している、または対応する予定」
「既存の情報システムの一部を見直すことで対応している、または対応する予定」
- 商品・サービスのデジタル化 79.4%
- プロセスのデジタル化 78.1%
という回答があった。
基幹システムも積極的に対応を考慮に入れているはずである。
みずほ銀行もシステムのリニューアル可に苦労が多かったわけですが、今年、ついに全稼働となり、これから積極的にDX化に向かうだろう。
老巧化している基幹システム
一方、老巧化している基幹システムを抱える企業の場合、DX化に対して、老巧化している基幹システムが足を引っ張るため、積極的なデジタル化が難しいはず。
問題は、老巧化している基幹システムをなんとかすべきであろうが、10年単位で放って置かれたシステムを再構築するのはかなり困難です。
また、仕様書などのドキュメントが、機能追加や変更毎にアップデートされていれば問題ありませんが、もし更新されていないとソースコードを解析するしかありません。
これは、大変な労力必要になるので費用もかかります。
延々と同じ作業を疑問も持たずに作業
IT小僧もこのようなシステムをいくつか見てきました。
実際にシステムを使っているユーザーは、受け継がれているマニュアルをただ実施しているだけで非効率な作業に疑問を持たない場合が多い。
例えば
- クレジット会社からCSVファイルをダウンロード
- 取得したCSVファイルのC列とF列を削除
- D列の先頭の2文字を削除
- 1列目のタイトルを削除
- 名前を CSVINPUT.CSVに変更してデスクトップにセーブ
- CSVINPUT.CSVをサーバーの特定のフォルダに格納
- 基幹システムを立ち上げて、「クレジット読み込み処理」を実行
- エラーが発生したら、開発会社(保守)に連絡する。
なんてことを何年も続けています。
そこに改善しようとする意識は働かない場合がほとんどです。
誰がつくったかわからない Access
Microsoft社のAccessは、個人用、小規模の簡易データベースとして便利なアプリケーションです。
このAccessで2005年ごろにつくられたシステムがまだ現役で動作している会社があります。
作成者は退社して連絡が取れません。
仕様書もデータベースの設計などもない。
データベースの構造も適当(テーブル名が、英字の半角、全角まじりなど)でかろうじて項目が判断できる程度
しかし、
「使い方のマニュアルはある」
Accessのメンテナンスもしていないので mdb ファイルが、6Gという、もはや動いているのが奇跡な状況
使っているユーザーもAccess 2003だったり、Access 2010だったり、サポート切れが存在している。
mdbファイルが壊れることも多いので修復作業は、マニュアル化されているので正常復帰させることは可能
このように使用頻度が多いのに中身がブラックボックス化しているシステムってかなり多いと思うんですよね。
対応策はひとつだけ
老巧化している基幹システムを再構築するのは、費用と時間を考えると
「止めたほうが良い」
そもそも、仕様書もテーブル定義も何もない状態でリニューアルするには、
「解析だけでも膨大な時間と費用がかかります」
手間と時間とおカネをかけてシステムを再構築してもそれは、単なるシステムの複製であって業務改善やコスト削減、ましてやDXに対応できるとは思えません。
ならば、いっそのこと、業務を見直し、業務に合った ERPなどを導入してシステムに業務を合わせるなどを実行したほうが、コストも時間も解決できると思います。
「老巧化している基幹システムを再構築したのでは、ただの焼き直しに過ぎないのです」
反対も多い
ERPの導入は、慣れた業務を一新することになります。
ERPとは、厳密には、基幹システムとは、厳密には違っています。
企業資源計画(きぎょうしげんけいかく、Enterprise Resource Planning)
しかし、基幹システムをERPに置き換えることにより、次のような効果が期待できます。
- 経営状態可視化
- 業務効率化により現場負担の軽減
- 調達コスト、在庫保管コストの最適化
- 生産管理工程の管理、調整の適正化
当然、慣れた作業から、新しい仕組みを習得しなければならないので不平不満が出ます。
古参の社員はとくにそうでしょう。
でも、いつまでも「老巧化している基幹システム」を動かすのは、企業からしたらリスクとコストが増大するのです。
一気に変えるしかない。
もちろん、数千万もかけて再構築するような予算があれば別ですが・・・
まとめ
老巧化している基幹システムは、いつか変えなければなりません。
長年使用しているものを変える場合、非難や反対も多いでしょう。
しかし、「2025年の崖」が、本当にあるとしたら、転げ落ちる確率は増大します。
消費税増税、日米貿易交渉、オリンピック後の反動など
今後、厳しい時代がくると思います。
そこを企業のトップがどう判断するか?
そう遠くない将来、厳しい決断をくださなければならないと思います。
参考リンク
DXレポート~ITシステム「2025年の崖」
「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
サマリー
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
本文
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
簡易版
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf
企業IT動向調査報告書2019
「企業IT動向調査報告書2019」 ユーザー企業のIT投資・活用の最新動向(2018年度調査)
https://juas.or.jp/cms/media/2017/02/it19_ppt.pdf
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/
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