スマートフォンは便利な反面、私たちの位置情報をどこまで把握しているのか気になる人は多いでしょう。
特に「GPSをオフにしても追跡できる」という話は半信半疑で語られがちです。しかし、米国の技術者が公開した調査によると、キャリア(携帯電話会社)は、スマホのGPSを切った状態でも、私たちの現在地を“かなり高い精度で”把握できる可能性があるというのです。では、それはどれほど正確で、各国ではどのように扱われているのでしょうか?
この記事では、米国・欧州・中国・日本の通信キャリアを比較しながら、一般にはあまり知られていない“キャリアによる位置情報の実態”をわかりやすく解説します。
目次
携帯電話会社は、なぜ私たちの位置を“正確に”知ることができるのか
米国・中国・日本のキャリア事情から見える“知られざる現実”〜
スマートフォンのGPSをオフにすると、位置情報は追跡されない──多くの人がそう思っています。しかし、実際には スマホの電源が入っているだけで、携帯電話会社(キャリア)は持ち主のおおよその位置を高精度で把握できる可能性があります。
その仕組みは「監視」という言葉を使いたくなるほど強力ですが、日本では意外と知られていません。
そのきっかけとなったのが、米国の通信技術者が公開した解説記事(https://an.dywa.ng/carrier-gnss.html)でした。この記事では、キャリアが独自のネットワークだけでもGPS並みに位置を推定できることが細かく説明されており、専門家の間でも小さくない驚きを呼びました。
では、キャリアはどのようにして位置を知るのか。そして国によってそれがどう利用されているのか。ここでは米国・欧州(EU)・中国・日本という四つの視点から“知られていない現実”を掘り下げます。
GPSを切っても追跡されるのは、仕組みそのものの問題
スマホは電源を入れた瞬間から、近くの基地局と定期的に通信し、ネットワークに「私はここにいます」と知らせ続けます。これは監視のためではなく、電話やSMSを送る際に端末を見つけるための基本機能です。
しかし、この“当たり前の動作”が、キャリアにとっては強力な測位情報になります。複数の基地局との信号の強さや到達時間、角度などを組み合わせれば、GPSを使わずとも位置を推定できます。最新の5Gインフラでは、この推定精度が10メートル前後に達することさえあり、もはや「GPSなしでもほぼ正確」と言ってよいレベルです。
つまり、GPSのオン/オフはプライバシーとは無関係であり、キャリアはネットワーク通信の性質上、常に私たちの位置を知り得る立場にあります。
米国:自由市場と監視スキャンダルが混在する“最も複雑な国”
米国では AT&T・Verizon・T-Mobile など大手キャリアが強力なネットワークを運営しています。携帯電話の位置情報は緊急通報(911)などで活用され、これ自体は公共の安全のために必要な仕組みです。
しかし問題は“商用利用”でした。
過去十数年、米国では キャリアがユーザーの位置情報をデータ会社へ販売していたことが繰り返し発覚しています。ユーザーは知らないまま情報が流通し、極端なケースではストーカーや犯罪者が不正入手したこともあり、議会が調査に乗り出しました。
その結果、規制が強化され、現在はだいぶクリーンになりましたが、キャリアが端末位置を把握できる能力自体は変わっていません。
「技術的には追跡可能で、法律がそれをどこまで縛るか」というのが米国の実情です。
欧州(EU):世界で最も厳しいプライバシー保護の下でも“把握は可能”
EUは GDPR(一般データ保護規則)によって、位置情報を含む個人データの扱いを世界一厳しく制限しています。キャリアが位置情報を第三者に渡すことはほぼ不可能で、保存する場合も短期間に限定されます。警察が使う場合でさえ、明確な司法判断が必要です。
ただし、技術的にはEUのキャリアも端末の位置は把握できます。
単に「使い方を極端に制限している」だけで、追跡不能なわけではありません。
つまり、プライバシーを守るのは倫理と法律であって、通信技術そのものではない、ということです。
中国:国家レベルの“完全捕捉”が標準
中国は、世界で最も厳格な監視体制を持つ国のひとつです。
通信キャリアは政府管理下にあり、基地局位置情報は国家の情報網にほぼリアルタイムで連携されています。
さらに中国は街中に設置された膨大な監視カメラ、AIによる顔認証システム、アプリの通信ログなどが統合され、“位置+行動+通信”が結びついた巨大情報網が形成されています。
そのため、中国のキャリアは 技術・制度の両面で世界最高クラスの追跡能力を持っていると言えるでしょう。これは犯罪抑止や治安維持のために運用されている側面もありますが、プライバシー保護の観点では最もリスクが高い国とも言えます。
日本:能力は高いが“使い方が慎重”な国
日本のキャリア(ドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル)は、米国や欧州と同じく高精度の基地局測位能力を持っています。ただし、運用は非常に保守的です。
日本では、位置情報は
-
110番・119番の通報地点の特定
-
災害時の避難情報の配信
-
捜査機関による行方不明者の調査
など、公共性の高い場面でのみ利用されます。
さらに 位置情報の商用利用は厳しく制限されており、米国のようなデータ販売スキャンダルはほとんど起きていません。
日本は監視国家ではないものの、技術的には“ほぼ完全に位置を把握できる力”を持っているという点は理解しておくべきでしょう。
結論:位置情報は“GPSではなく通信そのもの”で追跡される
スマホがどこの基地局と通信しているか──これだけで位置は推定できます。GPSのオン/オフでは防げません。
「キャリアは位置を知り得る。利用を縛るのは法律とルールである」
これが国別に見た現実です。
米国は市場の自由が優先されるぶんリスクが高く、
EUは法律で強く縛り、
中国は国家の情報網として統合し、
日本は技術を持ちながらも慎重に運用しています。
スマホの便利さを享受しながらプライバシーを守るには、
GPSよりもまず「通信が生む位置情報」について理解することが、大きな一歩になります。
キャリアは“正確に位置を知り得る”が、国によって扱いが違う
整理すると:
| 地域 | 技術能力 | 規制 | リスク |
|---|---|---|---|
| 米国 | 高精度で追跡可能 | 中程度(過去にスキャンダル) | データ販売の既歴 |
| EU | 高精度 | 非常に厳しい(GDPR) | リスクは低い |
| 中国 | 極めて高精度 | 国家管理で実質制限なし | プライバシーリスク最大 |
| 日本 | 高精度 | 法規制+運用は保守的 | 技術的には追跡可能 |
GPSを切れば追跡されないは誤解で、
キャリアは“通信している限り”あなたの位置を知り得るというのが現実です。