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日本のIT屋に一言

コスパ重視の落とし穴:安価なシステム開発が企業とユーザーに破滅をもたらす理由

システムやソフトウェアを開発するなら、コストは誰もが真っ先に気にするポイント

しかし、「とにかく安く」という動機で設計・開発を急ぐと、その先に待っているのは “思わぬ高額な代償” かもしれない。近年、欧米でも日本でも、「安価・コスト重視」な開発による重大なシステム障害、保守コストの高騰、そしてサービス停止などの深刻なトラブルが報告されている。

この記事では、なぜ「安く作る」ことが長い目で見ると高くつくのかを、複数の報告や研究をベースにわかりやすく解説する。これからシステム開発に取り組む人、あるいは業者選定を考えている人にとって、コストだけに惑わされず“本質的な品質と価値”を見るための視点を提供したい。

安価なシステム開発が増えている背景

開発費の削減とスピードは、多くの企業にとって大きな経営課題だ。

特にスタートアップや中小企業にとっては、限られた予算で素早くサービスを立ち上げる必要があるため、「安く請け負う外部ベンダー」や「オフショア開発」の活用が増えている。

しかしシステム開発の本質は、単なるプログラム作りではなく、事業価値を具現化する設計と品質の積み重ねである。安価な開発は一見魅力的に見えるが、実際には要件定義や設計、テスト、保守などの工程が十分に取られず、見えないリスクが蓄積されていく。

最初は予算内に収まったとしても、仕様ミスや機能不足、後から発覚する不具合や追加要望によって手戻りが発生し、結果的に予定を大きく超える費用を支払う羽目になるケースは珍しくない。

コスト削減は企業にとって重要だが、安さだけに惹かれて必要な工程を削ると、むしろ高額な支払いが待っているという矛盾が起こりやすい。


欧米で広がる“安価開発の失敗例”とその代償

欧米では「安く作ろうとするほど高くつく」という指摘は既に常識になりつつある。

安価な開発を選択した結果、リリース後に重大な欠陥が発覚し、修正費用が当初予算の数倍に膨れ上がった例や、コミュニケーション不足による仕様のすれ違いから開発をやり直すことになった例、品質不足によるサービス停止でユーザー離れを起こした例など、多くの事例が報告されている。

ある海外開発企業は、「開発のやり直しは初期開発の10倍のコストになることがある」と注意喚起している。
また、プロジェクト失敗の原因として最も多いのは、価格だけで開発パートナーを選んでしまう判断だと分析するレポートもある。

こうした失敗は単なる金銭的損失だけでなく、ブランドの信用失墜やユーザーの離脱、事業機会の喪失といった大きなダメージへと発展する。


日本における“安さ優先”の弊害 — 手戻りと保守費用の暴走

日本でも、安価なシステム開発が長期的な手戻りやトラブルの原因になるケースは多い。特に要件定義の段階を軽視した場合、開発途中での仕様変更が頻発し、プロジェクト全体が混乱することになる。

結果、開発期間は延び、追加開発費が積み重なり、最初に提示された見積もりとはかけ離れたコストに膨らむ。

さらに、初期開発を安く済ませた結果、保守フェーズで不具合対応が増え、ユーザーサポートに割くコストが跳ね上がることもある。

特に日本では、法令やセキュリティの要求水準が高い上に、実運用後に仕様変更が発生するケースも多いため、安価な開発で用意された“脆弱な土台”が後から企業の重荷になるという構図が発生しやすい。


安価な開発が生む「隠れたコスト」と品質低下の連鎖

価格だけを優先すると、短い期間で仕上げるためにテスト工程を削ったり、経験の浅い開発者で構成したり、ドキュメントを残さないまま納品するといった状況が起きやすい。
こうして完成したシステムは、見た目は動いているように見えても内部は“バグの温床”となり、運用中に頻繁な障害を引き起こす危険がある。

また、ドキュメント不足やコード品質の悪さは、別の業者へ保守を依頼することも難しくする。将来、機能追加や改修を実施したいと思ったときに「どこを触れば良いか分からない」「修正するより作り直した方が早い」という状態に陥り、結局再開発で数倍のコストが発生する。

初期費用が多少高くても、長期視点で見れば品質の高い開発のほうが圧倒的に安く済む理由はここにある。


なぜ企業は“安く作る”誘惑に負けてしまうのか

経営者や担当者が短期的な数字に意識を向けるのは当然のことだ。特にDXの波が加速する現代では、スピードが何より重要視される。
しかし、開発費を削ることと、開発に失敗しないことは同じではない。予算を抑えた結果、品質と将来性を犠牲にしてしまっては本末転倒である。

安さに惹かれて判断を急ぐほど、将来の負債が大きくなる。初期の判断ミスが、後の事業継続にも影響する可能性がある以上、安価な開発に対する慎重な姿勢が必要だ。


「安価=悪」ではない — 賢いコスト削減のために

誤解してはならないのは、「コスト削減そのものが悪ではない」という点だ。

大切なのは、削るべき費用と削ってはいけない費用を見極めること。要件定義を丁寧に行い、品質と保守性を担保し、信頼できる開発パートナーと継続的にコミュニケーションを重ねることができれば、適切なコストで成功する開発は十分に可能だ。

逆に、安価な見積もりに飛びつき、詳細な検討を省くほど、未来の負債は大きくなる。最初に十分な投資を行うことで、後の修正費用、保守負担、障害対応コストを大幅に削減できるという事実を理解することが重要だ。


まとめ

システム開発における“安さ優先”は、短期的には魅力的に見える。しかし、品質、保守、信頼、機会損失、ブランド価値といった重要な要素を犠牲にしてしまっては意味がない。安く作ったつもりが、最終的には高くつく――そんな典型的な落とし穴を避けるためにも、初期判断こそ慎重さが求められる。

これから開発を検討する企業は、予算だけを見るのではなく、品質と未来の運用コストまで含めた視野で判断してほしい。最終的な勝者は、初期に賢い投資ができた企業なのである。

ひとりごと

40年以上 システム開発をしてきましたが

「安かろう悪かろう」という開発会社があるのは事実
また
「高かろう悪かろう」という開発会社もあるのも事実

問題は、日本の経営者の多くが、システムを重要視しない人が多く
システムは「カネのかかるお荷物だけど仕方がない」と考えている場合が多い。

社内システム部門も社内の他社部門より地位が低く「便利屋程度」にしか思っていない。

さすがに令和の時代 このような経営者は少なくなってきたと思いますが、「利益を生み出さない社内システムは、金食い虫」と思っている人もまだいることはいる。

欧米企業に比べて この「システムを軽視しがち」であることも大きな問題である。

もっとも システム屋がこれまでやってきた「なんとかブームの失態」にも原因がある。

今後は、システムの多くは、サブスクリプションのような形式になってゆくことがあたりまえの時代になるでしょうから、多くの問題は解決されるだろう。
そのためには、社内業務のやり方をシステムに合わせる必要があるのですが、「変えたくない」と考える現場と経営者の意識改革が必要になりそうです。



✅ 参考資料一覧

  • 9 Risks of Outsourcing Software Development — Outsourcing の主なリスクを整理。品質管理の不安、データセキュリティ、見えにくいコストなどを指摘している。 hirewithnear.com
    https://www.hirewithnear.com/blog/risks-of-outsourcing-software-development

  • Outsourcing Problems: Common Issues, Risks, and Solutions — コミュニケーションの断絶、品質のばらつき、隠れたコストなど、アウトソーシングにありがちな問題を体系的に解説。 HBLAB GROUP
    https://hblabgroup.com/outsourcing-problems-and-solutions/

  • Failure factors of small software projects at a global outsourcing marketplace (Journal of Systems and Software, 2014) — 世界のアウトソーシング市場での小規模ソフトウェアプロジェクトを統計的に分析。低入札価格(安さ重視)で業者選定すると「プロジェクト失敗/中断/不完全な成果物」のリスクが高まるという結果。 サイエンスダイレクト
    https://doi.org/10.1016/j.jss.2014.01.034

  • Top Common Pitfalls of Outsourcing Software Development — ソフトウェア開発における見積もりや設計、開発管理の甘さ、プロジェクト管理の失敗などがどのようにトラブルを招くかを具体的に解説。 Custom Software Development Company
    https://maddevs.io/customer-university/red-flags-in-software-development/

  • 7 major software development outsourcing challenges and how to solve them — 最新(2024年)記事。低コスト重視のアウトソーシングでよく起きる「品質低下」「文化・言語・時差のズレ」「隠れたコスト」などの課題と、その回避策を紹介。 DECODE
    https://decode.agency/article/software-development-outsourcing-challenges/

  • Why Does Software Development Outsourcing Fail? — 2025年の分析記事。明確な要件定義やコスト見積もり、ベンダー選定の甘さが失敗の主要因であると論じている。安価さだけで決めることの危険性も指摘されている。 Bestarion
    https://bestarion.com/why-does-software-development-outsourcing-fail/

  • Software Outsourcing Challenges and How to Avoid Them — 2025年公開。アウトソーシングでありがちな「スコープのあいまいさ」「品質の不安定さ」「契約と管理の不透明性」「セキュリティ・コンプライアンスの問題」などを網羅的に解説。 Aalpha
    https://www.aalpha.net/blog/software-outsourcing-challenges-and-how-to-avoid-them/

  • List of failed and overbudget custom software projects — 過去に失敗した、あるいは大幅なコスト超過となったカスタムソフトウェアプロジェクトの例を集めた一覧。安価で受注したが仕様や管理の甘さから失敗したプロジェクトの事例として使いやすい。 ウィキペディア
    https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_failed_and_overbudget_custom_software_projects

  • Measuring Cost of Quality (CoQ) on SDLC Projects is Indispensible for Effective Software Quality Assurance — 品質管理のコスト (“Cost of Quality”) を測定しないことが、なぜソフトウェア開発でコスト超過や品質不具合を生むのかを論じた論文。安く作るだけでは結局高くつくという理論的裏付けになる。 arXiv
    https://arxiv.org/abs/1405.4824

  • Time Pressure in Software Engineering: A Systematic Review — 納期圧迫やコスト優先でスケジュールが短縮されると、なぜ品質が下がり、バグや手戻り・過労といった問題が起きやすいかを示す研究。短納期・低コスト開発の構造的なリスクを示すデータとして有効。 arXiv

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