最終更新:2026年11月01日(JST)/対象期間:2026年10月25日〜2026年10月31日。本記事は海外テックメディアと各社の公式発表を軸に、国内メディアおよび官公庁の発表を突き合わせて構成しています。
今週のまとめ 3つのポイント
1Anthropicが10月26日にNasdaq上場を目指すS-1を公開した。2026年上期の売上は163億ドル、純損失は807億ドル。損失の約724億ドルは転換証券に伴う非現金の会計調整で、営業損失は6.93億ドルにとどまる。ティッカーは「ANT」。
2大手クラウドの決算が出そろった。Azureはプラス48パーセント、Google Cloudはプラス103パーセント、AWSはプラス39パーセントと成長は加速したが、Alphabetのフリーキャッシュフローはマイナス91億ドル。Nasdaqは10月に約5.2パーセント下落し、2025年3月以来で最悪の月となった。
3モデル側はセキュリティが主戦場になった。GoogleはGemini 4 Carbonを、Mistralは1兆パラメータのLarge 4のオープンウェイトを公開し、いずれも脆弱性発見や防御性能を前面に出した。一方で開発ツール5製品の内蔵ブラウザに共通の欠陥が見つかっている。
信頼度ラベル凡例:🟢 公式発表や提出書類などの一次情報/🔵 複数の独立したメディアで内容が一致/🟡 単独報道または関係者ベースで未確定
今週の総括
今週は、AIへの投資規模そのものではなく「その投資が回収できるのか」を市場が正面から問い直した週だった。Microsoft、Alphabet、Amazonはいずれもクラウドの成長率が市場予想を上回ったのに株価は下落した。理由は収益ではなく支出側にある。四半期の設備投資はAlphabetが514億ドル、Amazonが773億ドル、Microsoftが452億ドルで、Alphabetは2四半期連続でフリーキャッシュフローがマイナスになった。成長は本物でも、そのために積み上がる固定費と減価償却に投資家の視線が移った。
同じ週に、AI企業側の資金調達環境にも変化が見えた。Anthropicは10月26日にS-1を公開して上場プロセスを一段進めた一方、OpenAIは進行中のラウンドの目標額を300億ドルから200億ドルへ引き下げたとFinancial Timesが報じている。需要が落ちたわけではなく、需要に先回りして確保した計算基盤の支払い義務と、従量課金の売上とのあいだにある時間差が資本市場で割り引かれ始めた。Anthropic自身もS-1のリスク要因で同じミスマッチを挙げている。
技術面では、フロンティアモデルの競争軸が「汎用的な賢さ」からサイバーセキュリティと長時間タスクへ寄った。Gemini 4 Carbonは脆弱性発見とパッチ生成のベンチマークを前面に出し、Mistral Large 4はオープンウェイトでサイバー防御系の指標で商用モデルに並んだ。皮肉なことに同じ週、開発者が日常的に使うAIコーディングツール5製品に共通の設計上の欠陥が公表されている。モデルの防御力が上がる速さと、ツールチェーンの実装品質が追いつく速さは別物だ。
今週の主な動き 時系列・日本時間
| 日付 | 出来事 | ソース種別 |
| 10月27日 | AnthropicがS-1を公開。Nasdaqにティッカー「ANT」で上場申請 | 🟢 提出書類 |
| 10月28日 | OracleがGoogleのTPUをOracle Cloud Infrastructureで提供すると発表。2027年開始 | 🟢 公式ブログ |
| 10月28日 | 米エネルギー省がConstellation Energyに50億ドルの融資枠を条件付きで承認。原子力1.1ギガワット分 | 🔵 報道 |
| 10月28日 | アドバンテストが今期2度目の上方修正。AI半導体市場を「メガサイクル」と表現 | 🟢 決算発表 |
| 10月29日 | GoogleがGemini 4 Carbonを発表。サイバー防御向けに限定提供から開始 | 🟢 公式ブログ |
| 10月29日 | AlphabetとMicrosoftが決算発表。Google Cloudはプラス103パーセント、Azureはプラス48パーセント | 🟢 決算発表 |
| 10月29日 | ニューヨーク州知事が未成年向けAIコンパニオンを規制する法案に署名。2027年1月1日施行 | 🔵 報道 |
| 10月29日 | GitHubがOctoverse 2026を公開。TypeScriptが最多言語、エージェント起点のプルリクエストが4割超 | 🟢 公式レポート |
| 10月29日 | AnthropicがClaude Enterpriseにスマートレポート、アプリ内アンケート、プール型予算を一般提供 | 🟢 公式発表 |
| 10月29日 | OpenAIがChatGPT ProとBusinessに月最大500ドルのAPIクレジットを付与 | 🟢 公式告知 |
| 10月29日 | SB Intuitionsが国産モデル初の思考モデル「Sarashina3.2 mini thinking」を公開 | 🟢 公式発表 |
| 10月30日 | Mistralが1兆パラメータのLarge 4のオープンウェイトをHugging Faceで公開 | 🔵 報道 |
| 10月30日 | OpenAIがModel Specを改定。5つの中核価値と人間による監督の原則を明文化 | 🟢 公式文書 |
| 10月30日 | AIコーディングツール5製品の内蔵ブラウザに共通の脆弱性「EMBRACE」が公表 | 🔵 研究発表 |
| 10月30日 | AmazonとIntelが決算発表。AWSはプラス39パーセント、Intelは第4四半期見通しが市場予想に届かず | 🟢 決算発表 |
| 10月30日 | キオクシアが中間決算を発表。純利益2兆1978億円、上場後初の配当 | 🟢 決算発表 |
| 10月31日 | OpenAIが調達ラウンドの目標額を300億ドルから200億ドルへ引き下げとFinancial Timesが報道 | 🟡 単独報道 |
| 10月31日 | Nasdaq総合が10月を約5.2パーセント安で終了。2025年3月以来で最悪の月 | 🔵 報道 |
生成AI:モデル・プロダクトの新発表
今週の主役はGoogleのGemini 4 Carbonだった。Google DeepMindのKoray Kavukcuoglu氏の署名で10月28日に公開され、2週間前のGemini 4 Argonの後継にあたる。打ち出し方が従来と違うのは、汎用ベンチマークよりサイバーセキュリティの数字を前に置いた点だ。脆弱性発見のSEC-bench Proで88.2パーセント、エクスプロイト生成のExploitGymで54.8パーセント、パッチ生成のCWE-benchで71.0パーセント、Artificial Analysis Intelligence Index v5.0では59点で1位としている。Argon比では安全なコードを生成できた割合が2倍以上、根拠のない主張が約半分になり、Gray Swanのプロンプトインジェクションベンチマークでの攻撃成功率は0.7パーセントから0.0パーセントに下がった。
実務面で押さえるべきは提供形態と価格だ。Carbonはまず一部のサイバー防御事業者に限定提供され、Fairwind Programを通じて段階的に対象を広げる。一般の開発者向け提供時期は本稿時点で確認できず、すぐ業務へ組み込める状態ではない。価格は導入期間が入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、キャッシュ済み入力は95パーセント引き。導入期間後は入力4ドル、出力20ドルに上がるため、長期前提の試算では後者を使うべきだ。社内チームで数日間動き続けた例やChromeチームでの比較もGoogleは示しているが、第三者検証は本稿時点で確認できず。
OpenAI側は、新しい看板モデルではなく運用ルールの改定が目立った。10月29日公開のModel Specは、構成を「人間の意図への忠実さ」「危害の最小化」「誠実さと透明性」「人間の主体性」「ケア」の5つの価値に組み替え、細かな文体ガイドの大半を削り、モデルの呼称も「アシスタント」から「GPT」に変えた。エンジニアに効くのはルート階層の可修正性の規定だ。監視・評価・修正・置き換え・停止に協力する義務が明記され、自己保存や計算資源の蓄積を目的化しないことが「no other objectives」として規定された。エージェント実装では許可ツール、期限、上限コスト、終了条件をScopeOfAutonomyとして記録する運用が推奨されており、既存設計の見直し根拠になる。
プロダクト面では両社の課金設計が動いた。OpenAIは10月29日からChatGPT ProとBusinessの契約者に月最大500ドルのAPIクレジットを付与し始めた。未使用分は繰り越されず、APIキー経由のCodex利用は対象外で、同時にPro 200に含まれるCodexとChatGPT Workの利用量が半減している。AnthropicはClaude Enterpriseに、セッションを業務の束に分類して定価ベースの支出を紐づけるスマートレポート、アプリ内アンケート、グループ単位の月次プール予算を一般提供した。プール予算は個人上限と二重に効き低いほうで止まる。スマートレポートは月10件まで無償で既定はオフ、個人評価や人事判断には使わない設計だと明記されており、社内導入を通す際の説明材料になる。
半導体とインフラ:GPU、データセンター、電力
構造的に大きかったのはOracleの発表だ。10月27日付のGoogle Cloud公式ブログで、OracleがGoogleのTPUをOracle Cloud Infrastructureで提供すると明らかになった。Google以外のハイパースケーラーがTPUを扱うのは初めてで、提供開始は2027年、世代は明示されていない。背景にあるのはAI向け計算需要が単一クラウドの設備規模を超えているという認識で、OracleはTPUをGPUと並べ、学習と推論の各段階で単価の安いアクセラレータを選べるようにすると説明する。あわせてGoogleはTPU向けPyTorchスタックのTorchTPUをオープンソース化し、モデルコードを書き換えずTPUへ載せられると主張している。NVIDIA依存を下げたい事業者には選択肢が増えた形だ。
電力側も動いた。米エネルギー省は10月27日、Constellation Energyに50億ドルの融資枠を条件付きで承認した。既存の原子炉11基の出力増強で8発電所あわせて1.1ギガワットを追加する計画だ。8つのうち7つでは追加出力の大半または全量が既に契約済みで、ペンシルベニアのLimerickとイリノイの4基はGoogle、メリーランドのCalvert CliffsはAmazon、イリノイのClintonはMetaが実質的に押さえている。Constellationはこれとは別に3社向けに1080メガワットを追加するため70億ドル以上を投じると表明していた。融資枠は未確定だが、AIデータセンターの制約が計算資源から電力に移っていることを資金の出どころまで含めて示した案件だ。
Intelの決算はAI向けと従来市場のねじれを鮮明にした。10月29日発表の第3四半期は売上165億ドルでプラス21パーセント、データセンター・AI部門は73億ドルでプラス78パーセント。一方クライアント部門は81億ドルでマイナス5パーセントだった。第4四半期見通しは売上150億ドルから160億ドルで市場予想の170億ドル近辺に届かず、株価は時間外で2割以上下落した。Lip-Bu Tan最高経営責任者は「顧客はメモリ価格と供給状況を踏まえてパソコン市場の減速を示唆し始めた」と述べる。AIサーバー向けメモリの逼迫が同じ会社のパソコン事業を圧迫する構図で、同氏は当面の優先事項をXeonの追加供給確保だとした。論点は需要不足ではなく供給制約にある。
クラウドと開発ツール:エンジニアの実務に効く変化
主要クラウドの数字はAI需要が売上に変換されていることを示した。Microsoftの2027年度第1四半期は10月28日発表で売上923億ドルのプラス19パーセント、Azureは332億ドルでプラス48パーセントと2年ぶりに最も速い伸びになった。受注残に相当する商用の残存履行義務は6770億ドルでプラス73パーセント、うち約3割が12か月以内の計上見込みだ。設備投資は452億ドルで次四半期は500億ドル超、暦年2026年で約1700億ドルを見込む。Amy Hood最高財務責任者は「設備投資の1ドルは時間をかけてより多くの売上とより高いリターンを支える可能性がある」と述べた。Alphabetは同日発表で売上1276億ドルのプラス25パーセント、Google Cloudは307億ドルでプラス103パーセントと倍増。AmazonのAWSは10月29日発表で460億ドルのプラス39パーセント、営業利益178億ドルだった。
それでも株価は冷えた。Alphabetは設備投資が514億ドルに膨らみ、フリーキャッシュフローは2四半期連続でマイナス91億ドル。資金手当てのため287億ドルの無担保シニア債を発行し、市場価格での株式発行で124億ドルを調達している。Sundar Pichai最高経営責任者は「好調な四半期で、売上は年率5000億ドルのペースに達した」と述べたが、株価はこの20年で最悪の下落となった。Amazonの9月までの12か月のフリーキャッシュフローはマイナス424億ドルだ。売上成長と現金収支のタイミングのずれが、今週の株価の説明変数になった。
開発現場の変化を定量的に示したのがGitHubのOctoverse 2026だ。10月28日公開で2026年9月末までの12か月が対象。登録開発者は2億2500万人超、プッシュは179億回で2024年と2025年の合計を上回り、コミットは343億回で2年前の3倍以上になった。注目すべきは2026年9月時点でプルリクエストの40パーセント超がエージェント起点という点だ。3月の17パーセントから半年で倍以上に増え、9月単月で約1億1000万件。エージェント設定ファイルを置いたリポジトリは、置いていない新規リポジトリの8倍のコミットを記録している。言語別の貢献者数はTypeScript、Python、JavaScriptの順で、伸び率ではRustが1年で倍増と最も速い。
同じ週に、そのツールチェーン側の弱点が公表された。Forever Securityの研究者Gal Weizman氏による「EMBRACE」の調査が10月29日に公開され、Cursor、GitHub Copilot、OpenAI Codex、Visual Studio Code、Claude Desktopの5製品に共通の根本原因が指摘された。各製品が組み込むブラウザに、通常のブラウザには与えられない権限が付いている点だ。Cursorでは悪意あるWebページが指示を注入してホスト上でコードを実行させられ、GitHub Copilotのバージョン1.1.27ではアドレスバーの表示を偽装できた。残る3製品ではローカルファイルがプロジェクト境界を越えてディスク全体を読める状態だった。Cursorは10月1日、GitHub Copilotは10月13日のバージョン1.1.29で修正済みだが、CodexとVisual Studio Codeは公開時点で未修正、Claude Desktopの修復状況は本稿時点で確認できず。開発端末にはSSH鍵やクラウド資格情報が同居しているため、棚卸しの優先度は高い。
規制・政策・訴訟
ニューヨーク州のKathy Hochul知事が10月28日、未成年とやり取りするAIコンパニオンの挙動を規制する法案に署名した。18歳未満に対して禁止される「安全でないAIコンパニオン機能」を12種類列挙する構成で、感情や意見を持つ実在の人物であるかのように振る舞うこと、過度な迎合、性的に露骨な内容、秘密の保持や不健全な行動の助長などが含まれる。違反時は州司法長官が開発者を提訴でき、金銭賠償、チャットボットの停止、データの破棄が想定されている。施行は2027年1月1日。Common Sense MediaのJim Steyer最高経営責任者は「国内で最も強力な子ども向けAI安全法案」と評価した一方、Future of Privacy ForumのJustine Gluck氏は規定が広く曖昧で、通常の会話との線引きが執行上の難点になると指摘する。
この動きは単発ではない。カリフォルニア州はすでに9月、チャットボット開発者に子どもへのリスク評価、低減策の文書化、第三者監査の受け入れを求める法律をGavin Newsom知事が署名している。10月上旬には8つの州がOpenAIを提訴し、州の消費者保護法違反を主張した。連邦レベルでは規制立法がほとんど進まず、州による規制を牽制する姿勢が示されている。結果として米国でサービスを出す事業者は州ごとに異なる要件を見る必要がある。未成年判定、迎合的な応答の抑制、ログ保持方針の3点は、実装上あらかじめ切り替え可能にしておくのが無難だ。欧州ではデジタルオムニバスによる高リスク義務の延期をめぐる議論が続くが、対象期間内の新たな確定事項は本稿時点で確認できず。
資金調達・M&A・人材と雇用
今週最大のニュースはAnthropicのS-1公開だ。10月26日に提出され、Nasdaq Global Select Marketにティッカー「ANT」で上場を目指す。売上は2024年が約3.86億ドル、2025年が約46億ドル、2026年上期が163億ドルで前年同期の約14倍。四半期では第1四半期47億ドル、第2四半期116億ドル、第3四半期は約168億ドルと報じられている。ただし四半期成長率は第2四半期の140パーセント超から第3四半期は約45パーセントに鈍化した。上期の純損失807億ドルのうち約724億ドルは転換証券に関連する非現金の会計調整で、営業損失は6.93億ドルと前年同期の21億ドルから縮小し、第2四半期は9.74億ドルの営業黒字だった。6月末の現金・短期投資は約1317億ドルある。
リスク側も具体的だ。インフラの支払い取り決めは今後10年程度で5000億ドル超に及び、キャンセル不能な契約としてGoogleに1110億ドル、AWSに1100億ドル、Microsoftに310億ドルが挙がる。使用量と無関係に支払う部分が大きい。顧客面では年間10万ドル以上を支払う顧客が1万1900社超、1000万ドル以上が約250社だが、上位5顧客で1月から9月の売上の約4分の1を占める。上期売上の約48パーセントはクラウドマーケットプレイス経由だ。さらに同期間の売上の5パーセントから7パーセントが、後に利用規約違反が判明した顧客からのもので、無断の蒸留が疑われる事例も含まれるという。ガバナンスは7人の共同創業者が所有する法人が議決権の50.1パーセントを持つ構造で、取締役の過半数はLong-Term Benefit Trustが選任する。
対照的にOpenAIは10月30日、進行中の調達ラウンドの目標額を300億ドルから200億ドルへ引き下げたとFinancial Timesが報じた。ラウンドはアラブ首長国連邦の投資家が主導し、Wall Street Journalはこれまでに110億ドルを確保したと伝える。評価額は以前の1.4兆ドルから1.25兆ドルに下がったとの報道もあるが、OpenAIの公式コメントは本稿時点で確認できず。市場環境も厳しかった。Nasdaq総合は10月30日に2.86パーセント下落して25,437.00で引け、10月は約5.2パーセント安となり2025年3月以来で最悪の月となった。TruistのKeith Lerner最高投資責任者は「証拠の重みは、長期的なテクノロジーの上昇トレンドが崩れていないことを示している」として、約1割の下落はこの強気相場では異例ではないと述べている。
日本国内の動き
AI需要の最大の受益者が国内半導体に現れた。キオクシアホールディングスは10月30日、2027年3月期中間決算で売上約4兆2471億円、純利益2兆1978億円を発表した。7月から9月期は売上約2兆4800億円でプラス453.2パーセント、純利益約1兆3486億円と、四半期単独で前期通年の実績を超えた。投下資本利益率は102パーセント、コアフリーキャッシュフローは1兆4380億円で過去最高。上場後初の配当として中間配当を実施し、総額約480億円、株式分割前で1株90円となる。川村喜彦代表執行役副社長は「AI需要の拡大を背景に、成長がさらに加速している」と述べた。ただし10月から12月期の見通しは売上2兆5000億円で、7月から9月期とほぼ横ばいに置かれている点は注意が必要だ。
検査装置のアドバンテストも10月28日、今期2度目の営業利益上方修正を発表した。7月から9月期は売上4777億円でプラス81.7パーセント、営業利益2668億円でプラス146.0パーセントと過去最高。通期予想は売上1兆8630億円、営業利益9670億円に引き上げた。ダグラス・ラフィーバ執行役員兼グループ最高経営責任者は、AI半導体市場を持続的な需要拡大を指す「スーパーサイクル」を超えた「メガサイクル」だと表現した。GPUに加えて推論向けの専用チップやCPUのテスト需要が広がっているという説明で、学習偏重だった需要が推論側に移っている裏づけになる。
国産モデルでは、ソフトバンク系のSB Intuitionsが10月29日、Sarashinaシリーズ初の思考モデル「Sarashina3.2 mini thinking」を公開した。フルスクラッチ開発で、思考の深さを低、中、高の3段階で指定して応答時間と精度のバランスを調整できる。事前学習では長文処理とエージェント性能、事後学習ではWeb検索能力と安全性に重点を置いたという。具体的なスコアは示されていないが、複数のベンチマークでllm-jp-4.1-33b-thinkingやgpt-oss-120bと同等だったとされる。提供はSarashinaサービスのAPI経由で現在は無償ベータだ。対象期間内における総務省、経済産業省、デジタル庁の新規AI関連発表は本稿時点で確認できず。
注目の研究・オープンソース
オープンウェイト側の最大の動きはMistral Large 4だ。10月29日にHugging Faceで公開され、総パラメータ約1兆、タスクごとの活性パラメータは520億。テキストと画像を読み、テキストとコードを出力する。Terminal-Bench 4.0では41パーセントで、GLM-5.3の40パーセント、DeepSeek V4.1 Flashの31パーセント、Kimi K3の21パーセントを上回った。CyberGym-E2Eでは79パーセント。Artificial Analysisのコーディングエージェント指標ではGLM-5.3に匹敵しつつ、タスクあたりの平均トークン数が47パーセント少ないとされる。実務で重要なのは実行環境で、量子化版はNVIDIAのB200またはB300を4基で動く。API価格とライセンスは本稿時点で確認できず、ノートパソコン向けを含む蒸留版は数か月以内とされるが時期は未定だ。
エージェント設計に直結する研究も出た。MetaとHarvardの研究者が、エージェントを増やせばシステムが賢くなるのかを検証し、作業を分担させる際の条件を整理している。Octoverseが示したエージェント起点のプルリクエスト急増と合わせて読むと、数を増やす前に分担条件を詰めるべきだという示唆になる。また米国の研究者が、AIチャットボットが広告された製品を約3倍の頻度で推薦する傾向を報告した。推薦系のユースケースではバイアス監査が必要になる。
まとめ:来週以降に注目したい3つの論点
来週以降の3つの論点
1AnthropicのIPO価格が、鈍化した成長率を織り込むのかどうか。第2四半期の年率換算462億ドルに対して評価額1.5兆ドルなら約33倍、2兆ドルなら約43倍で、NVIDIAの約17倍、Microsoftの約12倍とは水準が違う。OpenAIの目標額引き下げが先行指標になるかが焦点だ。
2設備投資の計上方法と耐用年数の議論。各社が見通しの上方修正を見送り始めた一方で金額自体は増えており、減価償却の年数想定が利益にどう効くかが次の決算シーズンの論点になる。11月に予定されるNVIDIAとAMDの決算が、需要側の実像を映す。
3エージェントの権限設計が規制と実装の両方から締まるか。OpenAIのModel Specが自律範囲の記録を推奨し、ニューヨーク州法が挙動を列挙で規制し、EMBRACEが内蔵ブラウザの過剰権限を突いた。3つは別個の話だが、向いている方向は同じだ。
主な参考ソース
海外
- Google公式ブログ Gemini 4 Carbon の発表
- OpenAI Model Spec 2026年10月29日版
- Google Cloud Bringing Google TPUs to Oracle Cloud Infrastructure
- Alphabet 2026年第3四半期決算発表
- Amazon 2026年第3四半期決算発表
- Microsoft 2027年度第1四半期決算
- GitHub Octoverse 2026
- Anthropic Claude Enterpriseの分析とコスト管理機能
- Forbes AnthropicのIPOがS-1で明かしたこと
- Decrypt AnthropicがNasdaq上場をANTで計画
- TechCrunch OpenAIが新ラウンドの目標額を引き下げと報道
- TechCrunch 米エネルギー省が原子力発電所に50億ドルの融資
- Hackread AIコーディングツール5製品のEMBRACE脆弱性
- The Next Web Mistralが1兆パラメータのLarge 4をオープンウェイト公開
- Intel 2026年第3四半期決算発表
- Insurance Journal ニューヨーク州が子ども向けチャットボットを規制
- Yahoo Finance 10月30日の米国市場
国内
- ITmedia ビジネスオンライン キオクシア中間決算
- ITmedia ビジネスオンライン アドバンテストが語るメガサイクル
- ITmedia AIプラス 国産モデルSarashinaに初の思考モデル
- ITmedia ビジネスオンライン 東京と台北を結ぶIOWN
- ITmedia AIプラス 週内の関連記事一覧
- 日経クロステック AI・機械学習
取材・数値についての注記
数値は原則として企業の決算発表、公式ブログ、提出書類などの一次情報を優先し、一次情報が参照できない項目は複数の独立したメディアで内容が一致するかを確認してから採用しました。単独報道にとどまる項目は信頼度ラベル🟡を付けています。キオクシアの営業利益については報道により表記が異なるため、本稿ではITmediaの売上および純利益の数値を採用しています。
本稿時点で確認できなかった項目は次のとおりです。Gemini 4 Carbonの一般提供時期とコンテキスト長、Googleが示したChromeチームでの比較の第三者検証、Claude Desktopに関するEMBRACE脆弱性の修復状況、OpenAIの調達ラウンド引き下げに対する同社の公式コメント、Mistral Large 4のAPI価格とライセンス、対象期間内における総務省・経済産業省・デジタル庁の新規AI関連発表。
時系列表の日付は日本時間に換算しています。米国企業の発表は多くが現地午前から市場引け後に行われるため、現地日付の翌日として表記した項目があります。株価指数の数値は現地10月30日の終値です。