2025〜2026年、SaaS(Software as a Service)業界は大きな転換期を迎えています。
特に生成AI(大規模言語モデル)が急速に進化する中、“SaaS is Dead(SaaSは死んだ)”というショッキングな論争が世界的なテックコミュニティで巻き起こりました。
しかし、本当にSaaSは消滅するのでしょうか。それともこれまでの業務やソフトウェアとの関わり方が変わるだけなのでしょうか。
本記事では、米国・欧州、日本の最新動向を交えつつ、SaaSの現状と将来像を整理します。
目次
約3000億ドル(約47兆2000億円)の時価総額が蒸発
Forbesに驚くべき記事が掲載されていた。
米国時間2月3日、SaaS、データ関連、ソフトウェア比重の高い投資会社群全体で、約3000億ドル(約47兆2000億円)の時価総額が蒸発した。これは決算の未達でもマクロのショックでもない。AI製品のリリースが引き金だった。
ダメージは数カ月かけて積み上がっていた。市場が反応した時点で、IGVソフトウェア指数(IGV Software Index)はすでに9月下旬のピークから約30%下落していた。先週変わったのは下落の方向ではなく、下落の速さだった。
最も地盤の固いエンタープライズ(企業向け)ソフトウェア企業の数社が、わずか1日で急落した。セールスフォース、サービスナウ、アドビ、ワークデイはそれぞれ約7%下げた。
インテュイットは約11%下落。同時に、セクター全体でバリュエーション・マルチプルが激しく圧縮された。ソフトウェア企業の平均予想PER(株価収益率)は、ここ数カ月で約39倍から約21倍へと崩れ落ちた。
空売り勢は2026年に入ってからレガシーSaaS((旧来型)のSaaS)への逆張りですでに200億ドル(約3兆1400億円)超を稼ぎ、さらに賭けを積み増している。
47兆円が蒸発、「SaaSの大崩壊」が始まった
https://forbesjapan.com/articles/detail/91276
日本ではあまり話題になっていないけど 国家予算並みの時価総額が消滅した。
これは、ソフトウェア産業の大きな転換期と言っても良いだろう。
SaaS業界の現状:株価・市場センチメントの変化
2025年後半〜2026年初頭、SaaS銘柄への投資家センチメントが急変しています。AI関連企業の業績が評価される一方、従来ソフトウェアやSaaS株は売られる局面が散見され、特に法律・データ分析系企業やB2Bソフトウェア銘柄が枚挙にいとまがありません。AIによる自動化の波が「既存ソフトウェアの価値を引き下げるのではないか」という懸念が市場心理を左右している点が特徴です。
この現象への評価は分かれています。ある見方では、投資家の反応は過剰なAIパニックであり、SaaS企業の価値を過小評価しているという指摘もあります。多くの企業はAI統合を進めつつ独自データを活かし、引き続き収益を確保できるとの分析もあります。
「SaaS is Dead(SaaSは死んだ)」論争
この議論は単純に「SaaSが消える」と断じるものではありません。生成AIやAIエージェントが単なるインターフェースを超えて、企業業務を自律的に実行できるようになるという未来像の中で、次のような主張が生まれています:
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従来のID/サブスク課金型SaaSが必ずしも価値を提供し続けるとは限らない
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UI中心のアプリケーションより、自然言語で指示するAIエージェントが操作の主体となる可能性
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ソフトウェアそのものより、データやAIインフラの価値が重視される
つまり、「SaaSが死ぬ」のではなく、従来のSaaS体験とビジネスモデルが再定義される可能性を象徴する表現であり、警鐘と進化の両面が含まれています。
生成AI/AIエージェントとソフトウェアの関係
生成AIの進化は、「画面を操作するソフトウェア」から「言語で指示するエージェント」へのシフトを促しています。例えば、AIエージェントに「この週次データを要約してレポート化して」と指示すると、従来のSaaSポータル画面にログインして操作するのではなく、AIが内部システムと連携してタスク実行を完結させる未来像が議論されています。
ただし現時点では、AIエージェントが完全にすべてのSaaS操作を代替するには技術的・セキュリティ・ガバナンスの課題も存在します。また、AI導入の価値が生産性向上に結びついている事例は増えていますが、統合や実用化にはまだ時間を要するという意見もあります。
欧米市場の動き:大手企業と新興スタートアップ
Microsoftの評価変動
MicrosoftはAI戦略に巨額投資し、生成AI機能を自社サービスに組み込むことでSaaSの進化を牽引してきましたが、一部アナリストからは株価の下方修正評価も出ています。これはAzureの成長鈍化やAI競争の激化が背景にあります。
スタートアップの挑戦
米国では、AIエージェントをビジネス基盤に据える新興企業も注目されています。こうした企業は、単なる「ソフトウェア」ではなく、業務プロセスそのものを自律化する方向性を追求しており、SaaSとは異なる価値提供を模索しています。
国内SaaS市場の状況と課題
日本でも「SaaS is Dead」論は議論の対象となっています。生成AIやAIエージェントの可能性に注目が集まる一方、現実的には多くの企業がSaaSを業務インフラとして利用し続けています。
特に日本の中小企業では、導入済みソフトウェアの置き換えよりAI統合による価値強化が優先されるケースも多いと報告されています。
SaaSの未来:衰退ではなく進化
結論として、「SaaSが完全に死ぬ」という論は過度な悲観論であり誇張です。むしろ次のような傾向が見て取れます:
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SaaS自体は依然として企業のデジタルインフラとして不可欠
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生成AI/エージェントとの融合で、従来モデルより高付加価値なサービスが求められる
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SaaS企業は単なる機能提供から成果・アウトカム指向へとビジネスモデル変革を迫られる
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データガバナンスやセキュリティの重視が一層重要に
つまり、SaaSは死ぬのではなく、AIとともに進化する ― その中心でビジネス価値を再構築する挑戦の時代が到来しているといえます。