ストリーミングの王者 Netflix が、まさにモバイル時代をにらんだ新たな挑戦を始めています。
スマホ利用者の増加に合わせて、これまでの縦横比固定の動画表示から一歩進み、縦型動画フィード機能の導入テスト を進めているのです。
TikTok や Instagram Reels が若年層の視聴習慣を変える中で、Netflix がこのトレンドにどう応えるのか。今回は、その背景と狙い、そして今後の展開に迫ります。
目次
モバイル中心の動画消費が主流
近年、スマホでの動画視聴は単なる「テレビの代替」では済まなくなりました。特に若年層にとっては、短尺動画が日常の情報収集・娯楽の中心となっています。TikTok が世界的に人気となり、YouTube や Instagram でも縦型動画がデフォルトのコンテンツ形式として浸透したように、視聴者は「縦スクロールで瞬時に楽しめる体験」を求めるようになってきました。この文脈で、Netflix の縦型動画テストは単なる実験以上に意味を持っています。
Netflix の共同 CEO グレッグ・ピーターズは、モバイル UI の大幅な刷新を 2026 年後半に予定していると発表しました。この UI は単なる見た目の変更ではなく、今後の機能追加や改善を容易にする基盤となるものです。その中核として、縦型動画フィードの統合が位置づけられており、ユーザーがスマホでコンテンツの“発見”をより直感的に行えるように設計されています。
縦型動画機能ってどんなもの?
Netflix がテストしている機能は、ざっくり言えば TikTok や Instagram Reels と似たインターフェイスです。ユーザーは縦にスクロールしながら、Netflix のオリジナル作品や映画の短いクリップを次々に閲覧することができます。各クリップはそのまま視聴リストに追加したり、フルエピソードを見るきっかけにもなります。
ただし重要なのは、Netflix は「TikTok と同じものを作る」ことを目的としていない点です。CTO のエリザベス・ストーンは、Vertical Feed の実験について「ユーザーが求める“スナック的”な体験」としつつも、プラットフォームとしての独自性を保つことを強調しています。つまり、短尺コンテンツの導入はあくまで“発見の強化”を目的としており、TikTok のアルゴリズム依存型フィードとは一線を画しています。

どんな狙いがあるのか?
Netflix の縦型動画導入には、大きく分けて 2 つの狙いがあります。
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コンテンツ発見の強化
Netflix の強みは豊富なコンテンツでありながら、ユーザーがそれらを見つけるまでに時間がかかることが課題でもありました。縦型クリップは視聴習慣を“入口から変える”可能性があります。 -
モバイル視聴時間の増加
若年層の多くは日々 TikTok やショート動画を見ています。Netflix が同様の視聴モデルを提供することで、視聴アクティビティをより日常に溶け込ませることが狙いです。
さらに Netflix は、動画ポッドキャストや音声コンテンツのビデオ化といった新しいコンテンツ形態も視野に入れており、縦型動画フィードの中でこうした新ジャンルを展開する可能性も語られています。
なぜ “TikTok と同じ” ではないのか?
よく比較される TikTok と Netflix の縦型動画戦略ですが、両者は根本的に目的が異なります。TikTok のアルゴリズムは、ユーザーの興味関心に基づき無限スクロールで動画を提供し、“滞在時間を最大化する”設計です。一方で Netflix の場合、縦型動画は コンテンツの発見と視聴誘導 が主要な目的であり、必ずしも TikTok のような“エンゲージメント最優先”の体験にはなりません。
これは、Netflix が今後のプラットフォーム戦略を「ショート動画そのものの提供」ではなく、「従来の長尺コンテンツの体験向上」と結びつけようとしていることを示しています。
今後の展望と注意点
Netflix の縦型動画テストはまだ初期段階であり、全ユーザーへの展開までには時間がかかる可能性があります。ただし、今後のモバイル UI の刷新や、ポッドキャスト・クリップコンテンツの追加が進めば、従来の “検索して見る” 文化から、“視聴しながら発見する” 文化へ の転換が進むでしょう。
一方で、縦型動画導入によって Netflix が SNS 競合と直接戦う構図になるのかという点については、同社は明確に「ただ真似るつもりはない」としています。独自の編集方針やユーザー体験設計により、長尺コンテンツとのバランスを保ちながら発展していくことが予想されます。
まとめ
Netflix が縦型動画フィードのテストを進めている背景には、モバイル視聴者の習慣変化と、コンテンツ発見の強化への強いニーズがあります。他のプラットフォームの影響を受けつつも、同社は自社の強みを活かしつつ、ユーザー体験の進化を目指していると言えるでしょう。今後の正式リリースやUI刷新が、どのように視聴体験を変えるのか、楽しみにしたいところです。