「越後屋 お前も悪よのう」
古き良き時代劇で出てくるシーン
悪代官と豪商(なぜか 越後屋)が、菓子折りの下に小判がキラリ!
古今東西、豪商と政治家の癒着は、当たり前
それを悪と呼ぶかどうかは、時の政治や社会の捉え方次第で変わります。
今回のIT小僧の時事放談は、
【アマゾン】米政府の重要インフラでシェア圧倒か? 勝ちすぎると疑われぞ!
と題して
「米政府の重要インフラがアマゾンのクラウド(AWS)で運営されすぎているのではないか?」
と疑われていることについて
小難しい話をわかりやすく解説しながらブログにまとめました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
目次
捜査案件管理システム
通称「ICM」
正式名「Investigative Case Management system」
米国のパランティア社(Palantir)が開発した「移民を摘発システム」です・
何をやっているシステムかというと
公共データと民間データのデータを統合して犯罪者。不法移民の摘発のサポートシステムで
簡単に言えば
「ビックデータを駆使して「あやしいとおもわれる人」に目星をつけるぞ!」
このシステムは、多くの場合、米国移民税関執行局(ICE: Immigration and Customs Enforcement Bureau)が、移民を摘発、場合によって国外追放処分とするときに使われています。
移民の親子引き離し政策
ここで、米国の移民について何が起こっているか簡単に触れてみます。
トランプ大統領は、メキシコとの国境に壁を作って不法移民を排除せよ
という過激な政策を打ち出していました。
現在は、「どこが壁を作るおカネを出すんだ」ということで計画は停止中です。
※メキシコに出せと言ったらしいけど、メキシコ政府は却下(あたりまえ)
また、トランプ政権誕生から9カ月間で、移民税関執行局の逮捕率は前年同期比で42%上昇したというデータもあるそうです。
2017年10月頃から少しずつ不法移民の逮捕と同時に逮捕された子供を隔離施設に強制入院させる事例が多くなりました。
これを「移民の親子引き離し政策」と言います。
この事例を法案化しようと
「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ、つまり一切の例外を認めないこと)」政策を打ち出したのですが、
さすがのトランプ大東力もこれは、認めず 撤回しました。
詳しくは、ニューズウィークに記載さえているので詳しく知りたい方は以下のリンクを辿って下さい。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/06/post-1008_1.php
米国での不法移民の問題は、大きな社会問題になっています。
海が国境の日本では、実感がないのですが、メキシコと米国の不法移民に関する映画が多数制作されているので映画 闇の列車、光の旅 を見ていただければ 少しは実感できるかも知れません。
不法入国する理由のほとんどは、貧困が原因とされています。
とここまでの状況を踏まえて、話をIT小僧らしく続けます。
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監視社会への反発
米国の公民権運動家と移民運動家は、「監視社会の強化、移民確保」が行き過ぎている。
「監視社会が、強化されつつある政府は、やりすぎだ!」
「監視社会をサポートしている企業も同罪だ!」
として米国移民税関執行局(ICE)が使用している捜査案件管理システム(ICM)を批判している。
さらに話は進んでいて
「IT関連の費用が移民税関執行局の予算のかなりの部分を占めているぞ!」
というわけで、米国移民税関執行局(ICE)が使用しているICMの開発企業であるパランティア(Palantir)社以外のIT企業に批判の矛先が向かいはじめました。
そして、その矛先は、アマゾン社(Amazon.com)
アマゾン社と言えば、通販会社だけではなく、IT産業の中核でもあるのです。
アマゾン社のIT関連事業の代表的存在が、Amazon Web Services(通称:AWS)
世界最大シェアを誇るクラウド事業です。
このAWS、2018年第2四半期で
62億ドルの売上(日本円換算で7000億ぐらい)
31%のシェア
たった3ヶ月で 7000億円を稼ぐって どんな会社だ
※アップルは、7兆円だけど・・・
参考までに
2位 マイクロソフト社(Microsoft)のAzure(アジュール)で18%
3位 グーグル(Google)のGoogle Cloudで8%
市場調査会社Canalysのレポート
マイクロソフトのAzureが、猛烈な勢いでAWSを追っかけているという状況です。
みなさんの使われているネットサービスの大半は、この3社にシステムが置かれていると思われます。
さて、米国の公民権運動家と移民運動家が、次の標的にしたのが、このAWSつまりアマゾンなのです。
政府機関のシステムが多数置かれているAWS
米国の公民権運動家と移民運動家は、
「アマゾンもパランティアに負けないほど多くの主要インフラを移民税関執行局と国土安全保障省の重要プログラムに提供しているぞ」
さらには
「ICMに利用されるデータとアルゴリズムはすべて、現在はアマゾンWebサービス(AWS)へ丸ごと移行されている。パランティアはサーバー使用料としてアマゾンへ月に約60万ドルを支払っている」
と報告されています。
さらに
「アマゾンは連邦政府と馴れ合い関係を築き、政府との大規模な契約を多数獲得している」
とも報告されています。
アマゾンとすれば、商売ですから・・・
ということですが、面倒なことに発展しそうな雰囲気です。
クラウド・ファースト「Cloud First」
2010年
米国は、「Cloud First」という政府方針で
政府機関のデータとコンピューティング・リソースをクラウドへ移行を開始
2014年1月
ロビー活動団体
クラウド・コンピューティング・コーカス・アドバイザリー・グループ(Cloud Computing Caucus Advisory Group)創設
メンバーは、アマゾンやマイクロソフト、EMC(現在はデルの配下)の3社
※ロビー活動(lobbying)というのは、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動で
ロビー活動を行う人物・集団はロビイスト(lobbyist)と言われる。
2014年
連邦情報技術取得改革法(FITARA)が可決
さらなるクラウド化が進みました。
この法案を通過させるために、アマゾンやマイクロソフト、EMCの政治資金団体(ロビー活動)を通じて
法案を提出した議員2人の選挙資金として25万ドル以上を直接献金したのではないか?
と言われています。
このあたりは、日本の政治と企業の癒着と同じですが、米国のロビー活動は、違法活動ではないので
法的に問題ないのです。
また、国土安全保障省はマーク・シュワルツ最高情報責任者(CIO)のもとで、アマゾンのクラウド・サービスをいち早く採用した政府機関として名前が上がっていたり
米国移民税関執行局(ICE)が使用している捜査案件管理システム(ICM)を発端にアマゾンはトバッチリを受けているような気もします。
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4年のアドバンテージ
2010年当時 クラウド・ファーストのもと政府のシステムをクラウドに移行しようとした場合
移行先は、事実上、AWS(Amazon Web Services)1択の状況だったのです。
2010年1月
マイクロソフトのAzure商用サービス開始
2010年5月
グーグル ビジネス向けサービス(Google App Engine for Business)開始
参考までにこの2010年は、国内でクラウドブームがはじまり NEC,NTTも開始
一方 アマゾンは、2006年からクラウド事業を開始していました。
2006年7月
AWS(Amazon Web Services)開始
2007年6月
18万人以上の開発者がAWSと契約したと主張した。
2010年11月
アマゾンの小売のウェブ関連のサービスは全てAWS上に移行
他社より4年はやく開始したアドバンテージは、圧倒的有利
クラウド事業のノウハウなど大きな差が生じていました。
2010年に米国の「Cloud First」という政府方針で
重要なシステムやデータをどこに預けようかと考えて場合
ここまでに「はじめたばかりの企業」より「4年の実績を持っている企業」を選択するのは、
すごく当たり前と思います。
始めたばかりでノウハウのない企業に政府案件を預けられないでしょう。
さらに、一度預けたクラウドから別のクラウドに乗り換えるには、かなりの理由がなければ、予算的にも容認されないでしょう。
アマゾンが提供しているAWSに政府機関のシステムが多いのは、エンジニアの立場から言うと当然だと思うのですが
アマゾンは、菓子折りを持ってないよ
冒頭の「越後屋」ですが、アマゾンのことを言ったのではありません。
別にアマゾンが菓子折りを持っていったわけではないのですが、いつの世も一極におカネや権力が集中すると攻撃されやすいものです。
それは、米国でも同じで、現にGDPRで米国のIT企業にペナルティをつけて制裁金を取ろうとしているEUや
独占禁止法でグーグルやアマゾンに対して新たな税金を課せようとしている英国やその他の国々
おカネや市場を制した企業から「なんとか カネを奪おう」としていると思うのは自分の気のせいでしょうか?
本当の越後屋は誰なのでしょうか?
時代劇のように水戸黄門が登場
「めでたし めでたし」
とは、なかなか解決できないのが、現実というものでしょうか?
まとめ
「日本資本主義の父」、「日本の個人投資家の草分け」
「東京慈恵会、日本赤十字社、癩予防協会の設立」などに携わり
「財団法人聖路加国際病院初代理事長」
そして近代日本に重要な役目をはたした、渋沢栄一氏
彼を時代劇に出てくる「越後屋」と同列には並べることはできませんよね。
豪商だから、カネ持ちだから悪という 図式は、あまりにも短絡的です。
あまりにも行き過ぎた場合、ブレーキを踏むのが、市場原理
かつて、マイクロソフトも独占禁止法で訴えられたこともあります。
日本では、総務省 VS 携帯電話会社の攻防が激しくなってきましたが
商売も目立ちすぎると狙われるという図式は、変わらないものかも知れません。