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IT小僧の時事放談

【Chrome 150】広告ブロック、ついに終了へ|果てしなき闘いの歴史と仕組みを解説

Google Chrome 大型アップデート

広告ブロック、ついに終了へ

果てしなき闘いの歴史と、その仕組みを読み解く

「またか」と思った読者も多いだろう。Google Chromeは、バージョンアップのたびに広告ブロック機能の息の根を少しずつ止めてきた。そして2026年、いよいよ最後の抜け道がふさがれる。この記事では、何が起きるのかを正確に押さえたうえで、そもそも広告ブロックがどういう仕組みで動いているのか、そしてGoogleとの長い攻防の歴史を、現場目線でひも解いていく。

ファクトチェック ― ここまでは確定情報

確定:Googleの技術者が、Manifest V2(マニフェスト・ブイツー)はサポート対象のすべてのChromeで許可されなくなり、関連機能を削除すると公式に明言。これはChromiumのコード変更として記録されている。

確定:Chrome 150 で、上級ユーザーが延命に使っていた回避フラグが削除される見込み。残るフラグも次のChrome 151 で削除される。

注意:「6月末リリース予定」などの具体的な日付は、メディア各社が伝えている予測値であり、Googleの最終確定スケジュールとは前後する可能性がある。

何が起きるのか

Chromeの拡張機能には「Manifest(マニフェスト)」と呼ばれる設計ルールの世代があり、長く使われてきた旧世代がManifest V2、新世代がManifest V3だ。今回のアップデートで、Chromeは旧世代V2のサポートを完全に打ち切る。

これまでも一部のユーザーは、設定上の「回避フラグ」を使ってV2世代の広告ブロックを延命させてきた。ところがChrome 150 でこのフラグそのものが削除される。Googleの技術者はこの削除部分を「もはや動かない不要コード」と説明している。つまり、力技の延命策が技術的に不可能になるということだ。

影響を最も受けるのが、世界的に人気の広告ブロック拡張であるuBlock Origin(ユーブロック・オリジン)だ。すでに2024年から多くの環境で無効化が進んでいたが、今回の変更でV2世代の本家版は事実上とどめを刺される形になる。

なお、この変更はChrome本体だけの話では終わらない。世の中の主要ブラウザの多くは、Chromeと同じChromium(クロミウム)という土台を共有している。Googleの技術者自身も、各ブラウザが望めば独自にV2を支え続けることは可能だと述べているが、現実には追随する製品が出ると見られている。

そもそも広告ブロックはどう動いているのか

なぜ世代交代だけで広告ブロックが効かなくなるのか。ここは技術の核心なので、少し丁寧に説明したい。

旧世代V2では、拡張機能はwebRequest(ウェブリクエスト)という仕組みを使えた。これは、ブラウザがやり取りする一つひとつの通信を拡張機能側が「読み取って・書き換えて・止める」ことができる、非常に強力な機能だ。ページが広告やトラッカーを読み込もうとした瞬間に、その場で判断して遮断できた。これを動的フィルタリング(その都度判断して止める方式)と呼ぶ。

新世代V3では、この遮断のためのwebRequestが廃止され、declarativeNetRequest(デクラレイティブ・ネット・リクエスト)という別の仕組みに置き換えられた。こちらは拡張機能が前もって「このパターンは遮断する」というルール一覧をChromeに渡しておき、実際に止めるかどうかはChrome本体が判断する方式だ。拡張機能はもはや通信そのものに直接手を出せない。

この方式変更には、広告ブロックにとって二つの痛手がある。一つは、その場での柔軟な判断ができなくなること。もう一つは、登録できるルールの数に上限が設けられたことだ。広告や追跡の手口は日々増え続けるのに、対抗ルールの数に天井があれば、いたちごっこで不利になるのは目に見えている。

加えてV3では、拡張機能が裏で常時動き続けるための常駐のしくみも、Service Worker(サービスワーカー/必要なときだけ起きる方式)に置き換えられた。常に見張り続ける作りが取りにくくなった、と理解してもらえればよい。

旧世代と新世代の違いをひと目で

比較項目 旧世代(V2) 新世代(V3)
通信の遮断方式 その都度判断して止める 事前ルールでChromeが止める
柔軟さ 高い 低い
ルール数の上限 実質なし 上限あり
広告ブロックの実効性 強い 弱まる

【年表】果てしなき闘いの歴史

ここに至るまで、実に8年近い攻防があった。Googleが計画を打ち出すたびに批判が噴出し、延期され、また再開される。その繰り返しだった歩みを一覧にまとめた。

時期 バージョン 出来事
2018年11月 新世代V3の構想を発表。ここから長い物語が始まる
2019年1月 「広告ブロックが壊れる」と開発者やユーザーから批判が噴出
2021年1月 Chrome 88 新世代V3の提供を開始。配布ストアでも受付がスタート
2022年1月 配布ストアが新規の旧世代V2拡張の受付を停止
2022年12月 当初の2023年廃止計画が、いったん保留・延期に
2023年11月 移行の再開を発表。2024年6月を新たな節目に設定
2024年6月 Chrome 127 旧世代V2の無効化を開始。ストアからの導入もできなくなる
2024年10月 多くの環境でuBlock Originが無効化され、影響が広がる
2026年6月末 Chrome 150 延命に使われていた回避フラグを削除(予測日付)
2026年7月 Chrome 151 残るフラグも削除し、旧世代V2の物語は幕を閉じる

なぜGoogleはここまでやるのか

ここは公平に、両方の言い分を並べたい。

Google側の主張は「安全性の向上」だ。旧世代の仕組みでは、拡張機能がユーザーの全通信を覗ける強い権限を持っていた。これは便利な反面、悪用されれば情報を抜き取る裏口にもなる。実際、人気拡張機能が所有者の交代後にこっそり悪質なコードを仕込まれ、報酬を横取りしていた事例や、多数の拡張機能に追跡コードが潜んでいた事例が報告されている。「拡張機能が通信に直接手を出せない作りにすれば、こうした被害を構造的に減らせる」というのがGoogleの論理だ。

一方で批判側はこう指摘する。Googleの収益の大半は広告ビジネスから来ている。その会社が、よりによって広告ブロックの実効性を削ぐ仕様変更を進めるのは、利益相反に見えてしまう、と。しかもセキュリティの研究者からは「新世代V3になっても悪質な拡張機能は作れる」という検証結果も出ており、「安全のため」という説明だけでは押し切れない、という声がある。

付け加えると、政府系のセキュリティ機関ですら、広告ブロックは悪質な広告や不審な転送、第三者によるデータ収集を減らす防御策として推奨してきた経緯がある。つまり広告ブロックは単なる「広告よけ」ではなく、セキュリティ上の意味も持っているのだ。だからこそ、その実効性が下がることへの懸念は根強い。

ユーザーが取れる現実的な選択肢

では、広告ブロックを使い続けたい人はどうすればいいのか。現実的な選択肢を整理した。それぞれ一長一短がある。

選択肢 特徴とトレードオフ
uBlock Origin Lite 新世代V3に対応した軽量版。Chromeのまま使えるが、その場判断ができず実効性は本家版に劣る
別系統のブラウザに移る 旧世代相当の遮断を維持する系統のブラウザなら、自由度の高い広告ブロックを使い続けられる
遮断機能を内蔵したブラウザ ブラウザ本体に遮断機能を組み込んだ製品を選ぶ。拡張機能に頼らずに済む
DNS(ディーエヌエス)での遮断 名前解決の段階で広告配信先を遮断する方式。ブラウザの種類に依存せず、家庭内の機器全体に効かせられる

大ざっぱに言えば、「Chromeに残りたいなら軽量版で妥協する」か、「自由度を取って別系統に乗り換える」か、「ネットワーク側で根元から止める」か、の三択だ。手間と効果のバランスで選べばよい。

IT小僧の本音コラム

正直に書こう。Googleの言い分にも、一理あると思っている。拡張機能が原因の情報漏えいや乗っ取りは、決して机上の空論ではない。所有者が代わった拡張に悪質なコードが仕込まれる手口は、現場では本当に厄介だ。通信に直接手を出せない作りにすれば被害が減る、という理屈は理解できる。

だが、それでも引っかかる。広告で食っている会社が、広告ブロックの息の根を止めにいく。この絵面はどうしても利益相反に見える。本気でユーザーを守りたいなら、実効的な遮断のしくみは残したまま、配布ストアの審査を厳しくする道だってあったはずだ。「セキュリティのため」は、いつの時代も万能の錦の御旗になる。だからこそ、その旗を掲げる相手の懐事情まで含めて見ておく必要がある。

この一件で本当に怖いのは、ブラウザの土台が一社にほぼ握られているという構図そのものだ。世の中の多くのブラウザが同じ土台を共有している以上、一社の方針が事実上の業界標準になってしまう。ユーザーにできる最大の抵抗は、案外シンプルだ。使うブラウザを一つに依存させず、分散させること。選択肢を自分の手元に残しておくこと。それが、この果てしなき闘いに対する、現場からの現実的な答えだと思う。

 

まとめ

Chrome 150 と151 で、旧世代V2に頼っていた広告ブロックは事実上の終幕を迎える。これは突然の出来事ではなく、2018年の構想発表から続いてきた長い攻防の、最後の一手だ。背景にはセキュリティ向上という正当な理由がある一方で、広告ビジネスとの利益相反という拭いきれない疑念もある。

広告ブロックを使い続けたいなら、軽量版で妥協するか、別系統のブラウザに移るか、ネットワーク側で遮断するか。自分の使い方に合った落としどころを、今のうちに探しておくのが賢明だ。ブラウザを一つに依存させない――それが、この長い闘いから現場が学んだ教訓である。

本記事は公開情報をもとに作成しています。具体的なリリース日やバージョン番号は、Googleの正式発表により前後する場合があります。最新の状況はご自身でもご確認ください。

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