IT小僧の時事放談
eero Plusに付いてくる「Malwarebytes(マルウェアバイツ)」とは何者か
現役SEが実際に使って分かった、Defender補完ソフトとしての実力を本音で語る
eero(イーロ)のメッシュWi-Fiを使っていると、必ず勧められるのが月額サブスクの「eero Plus」だ。その特典のひとつに、セキュリティソフトの「Malwarebytes(マルウェアバイツ)」が含まれている。私自身、このeero Plus経由でMalwarebytesを愛用しているクチだが、結論から言うと「動作が重くならず、Windows標準のDefenderをうまくフォローしてくれるSE好みの一本」だと感じている。
今回は、この地味だが実は名の知れたソフトについて、どんな製品なのか、どこの会社が作っているのか、なぜ生まれたのか、そして肝心の「Microsoft Defenderと一緒に使っていいのか」までを、一次情報にあたりながら掘り下げていく。
Malwarebytesとはどんなソフトウェアか
Malwarebytesは、ひとことで言えば「マルウェア(不正プログラム)対策に特化したセキュリティソフト」だ。ウイルス、ランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)、スパイウェア、アドウェア、そしてPUP(不要な抱き合わせソフト)といった、いわゆる「行儀の悪いプログラム」を検出して駆除することを得意としている。
この製品のルーツを理解するうえで欠かせないのが、「セカンドオピニオン・スキャナー」という出自だ。生まれた当初のMalwarebytesは、常駐してパソコンを守る主役ではなく、「すでに入れている対策ソフトが見逃した取りこぼしを、後からチェックして掃除する」という脇役の道具だった。病院でいう「別の医師に診てもらう」あの考え方を、セキュリティの世界に持ち込んだわけだ。
SEの視点
「主役のアンチウイルス」と「掃除役のアンチマルウェア」は、似ているようで役割が違う。前者は侵入を未然に止める門番、後者は門をすり抜けた相手を見つけて追い出す掃除人。両者をどう組み合わせるかが、この記事の後半のキモになる。
現在のMalwarebytesは、無料のオンデマンド・スキャナー(手動で実行する検査ツール)から、常時監視するリアルタイム保護つきの有料版「Premium」、さらにVPN(仮想専用線)やID保護まで含む統合スイートへと拡張されている。eero Plusで提供されるのは、このうちのPremium相当の機能だ。
販売・制作会社について
Malwarebytesを開発・販売しているのは、米国カリフォルニア州サンタクララに本社を置くMalwarebytes社だ。シリコンバレーのど真ん中に拠点を構えるサイバーセキュリティ企業で、上場はしておらず、非公開(プライベート)企業として運営されている。
同社は個人向けの製品だけでなく、法人・組織向けには「ThreatDown(スレットダウン)」というブランドでエンドポイント保護製品を展開している。フォーチュン500クラスの大企業から中小企業まで顧客を抱え、世界中で多くのユーザーに利用されている点が強みだ。
そして本記事の本題であるeeroとの関係だが、eero(米Amazon傘下のメッシュWi-Fiブランド)はMalwarebytesの正式なパートナーであり、eero Plusの中核機能としてMalwarebytesのプレミアム保護とID保護が組み込まれている。2025年4月にMalwarebytesが発表したパートナープログラムでも、eeroは代表的な提携先のひとつとして名前が挙がっている。

サンタクララにあるMalwarebytesのグローバル本社
誕生の歴史と、作成者の物語
Malwarebytesの誕生秘話は、IT業界でも屈指の「ガレージ・ストーリー」として知られている。主役は、現在もCEOを務めるMarcin Kleczynski(マルチン・クレチンスキー)氏だ。
ポーランド生まれで幼少期に米国へ移住し、シカゴ郊外で育った彼は、当時14歳。海賊版のゲームをネットからダウンロードしようとして、家族のパソコンを不正プログラムに感染させてしまう。家にはちゃんと有名な対策ソフトが入っていたにもかかわらず、それでは駆除できなかった。母親から「直しなさい」と強く迫られた彼は、セキュリティ系の掲示板に助けを求める。
そこに集っていた善意のボランティアたち(彼いわく「ヒーローたち」)の助けを借り、30ページものマニュアルと格闘すること3日間。ようやく感染を駆除し終えた頃には、少年はすっかりマルウェア退治の魅力に取りつかれていた。この体験こそが、すべての出発点になった。
創業の歩み
2004年に少年Kleczynskiが最初の試作スキャナーを開発したのが事実上のスタート。掲示板で出会った仲間Bruce Harrison(ブルース・ハリソン)氏と組み、2008年1月21日に正式ローンチ。大学の寮を「本社」として、ほぼ口コミだけで世界に広がっていった。
面白いのは、社名の由来だ。「Malwarebytes」という名前は、掲示板仲間から使われていなかったドメインを譲り受けたもので、本人は当初この名前があまり好きではなかったという。共同創業者のHarrison氏は後に研究担当の責任者となり、彼を助けた掲示板の人物の一人は最初期の社員として迎えられた。困っている時に助けてくれた人々と、そのまま会社を作ってしまったわけだ。
看板製品となる「Anti-Malware」は2008年にリリースされ、IT技術者の間では「感染したパソコンを掃除するなら、まずこれ」という定番ツールとして一気に普及した。外部から資金を入れず自力で成長し、初の大型調達は2014年。まさに「現場の評判」が育てた製品だと言える。
Malwarebytesの特徴
現在のMalwarebytes Premiumが備える主な機能を整理すると、次のようになる。単なる「ウイルス検出」にとどまらず、攻撃の流れ全体を止めにいく設計になっているのが特徴だ。
| 機能 | 役割 |
| リアルタイム保護 | ファイルやプログラムの実行を常時監視し、被害が出る前に脅威を遮断する(有料版の機能) |
| ランサムウェア対策 | ファイルを勝手に暗号化して人質に取る攻撃を、その振る舞いから検知して止める |
| エクスプロイト対策 | アプリの脆弱性(ぜいじゃくせい)を突く攻撃をブロックし、侵入の足がかりを断つ |
| Webプロテクション | 危険なサイトや偽サイトへのアクセスを未然に防ぐ。ブラウザ拡張も用意されている |
| 複数OS対応 | Windows、Mac、Androidなど、ひとつのライセンスで横断的に守れる |
| 軽快な動作 | アイドル時のリソース消費が少なく、普段使いで体感的な重さを感じにくい |
第三者評価機関であるAV-TESTの検査でも、近年のMalwarebytesは保護性能で満点評価を獲得し、トップ製品の認定を受けている。「掃除専門の脇役」だったソフトが、今では押しも押されもせぬ実力派へと成長したわけだ。
Microsoft Defenderとの併用について
さて、ここが多くの人が一番気になるところだろう。「Windowsに最初から入っているMicrosoft Defenderと、Malwarebytesを一緒に使ってもいいのか?」という疑問だ。私自身が「Defenderの補完として」使っているという前提でも、ここは正確に整理しておきたい。
まず大原則として、本格的なアンチウイルスを2本同時に常駐させるのは御法度だ。互いに相手を脅威と誤認したり、スキャンがぶつかり合ったりして、フリーズや動作の重さの原因になる。ところがMalwarebytesは、もともと他社製ソフトと共存できるよう設計されているという点で、少し事情が違う。
事実確認:ここを誤解している人が多い
「補完として使っている」という感覚は、無料版・スキャナー用途では正しい。ただし有料版の挙動には注意が必要だ。バージョン4以降の有料版は、初期設定のままだと自分を「Windowsの正式なセキュリティアプリ」として登録し、その結果Defenderの常時監視を自動的にオフにしてしまう。
つまり「気づかぬうちに併用ではなく置き換えになっていた」というケースがあり得る。両方を生かしたいなら、Malwarebytesの設定でセキュリティセンターへの登録をオフにすると、Defenderが主役に戻り、両者が並走する構成になる。
使い分けの考え方を、シンプルに表にまとめておく。
| 使い方 | Defenderとの関係 |
| 無料版(手動スキャン) | 完全に併用可能。Defenderを主役にしたまま、たまに手動で第二の意見を取る理想形 |
| 有料版(初期設定のまま) | Malwarebytesが主役になり、Defenderの常時監視は停止する(置き換えに近い) |
| 有料版(登録オフ設定) | Defenderが主役のまま、Malwarebytesが並走して二重の守りになる |
要は「無料スキャナーとして併用」「有料版は登録設定で主役を選べる」と覚えておけば間違いない。どちらの構成でも、Defender側を受動モードに回すか、相互に除外設定(スキャン対象から外す指定)を入れておくと、動作はさらに安定する。
AndroidでもMicrosoft Defenderと併用しているがこちらは、両方とも同時監視にしています。
よいところ・わるいところ
実際に使ってきた立場から、長所と短所を正直に並べてみる。
| よいところ | わるいところ |
| 動作が軽く、普段使いで重さを感じにくい | 単体での価格は年々上がっており、割高に感じやすい |
| 取りこぼし掃除・PUP駆除に強く、第二の目として優秀 | 有料版は初期設定だとDefenderを止めてしまい、意図とずれることがある |
| 複数のOSをひとつのライセンスで守れる | 無料版は常時監視がなく、手動スキャン専用 |
| eero Plusなら追加負担なしで上位機能が手に入る | eero Plus経由ではiPhone系の端末が保護対象から外れる |
eero Plus経由で使う場合は、最大20台の対応端末まで守れる(提供条件は時期により変動するため、最新の表示を確認してほしい)。一方でApple系のスマホはeero Plus経由のMalwarebytes保護の対象外となっており、そこだけは割り切りが必要だ。
IT小僧の本音コラム
正直に言えば、Defenderだけでも普通に使う分には十分強くなった。昔のように「標準のやつは頼りない」という時代ではない。それでも私がMalwarebytesを横に置いておくのは、創業の物語そのものが体現する「取りこぼしを拾う第二の目」という思想に共感しているからだ。
少年が家族のパソコンを直すために3日間格闘した、あの泥くさい出発点。あれは結局、「主役が見逃したものを、誰かが拾わないと被害が出る」という現場感覚そのものだ。多層防御という言葉は格好いいが、要は念のための保険であり、私にとってこのソフトはまさにそれにあたる。
eero Plusを契約している人なら、追加費用なしでこの「第二の目」が手に入る。使わない手はない。ただし有料機能をフルに入れるなら、Defenderを殺していないか一度だけ設定を覗いておくこと。これだけは現役SEとして強く言っておきたい。
まとめ
Malwarebytesは、14歳の少年が家族のパソコンを救おうとした体験から生まれ、「掃除専門の脇役」から「実力派の主役級」へと育ってきた、ストーリーのあるセキュリティソフトだ。eero Plusを契約していれば追加負担なしで利用でき、動作も軽い。
Defenderとの関係さえ正しく理解しておけば、家庭のパソコンに「もう一段の安心」を足す選択として、これほど手軽なものはない。すでにeero Plusを使っているなら、まだ有効化していない人はぜひ一度、設定を覗いてみてほしい。
eero Plusについて
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最後まで読んでくれてありがとう。次回もまた、IT小僧の時事放談をよろしくお願いいたします。