米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)2019年10月15日(米国時間)、社内からOracle Database(DB)を「全廃」したと発表
60%以上のコスト削減が達成
データベースを載せ替えることでコストが60%削減できるというのは企業にとって 大きな流れになるかも知れない。
今回のIT小僧の時事放談は、
脱Oracle DB に成功した 米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com) 60%のコスト削減達成
と題して、データベース戦争について考えてみよう。
小難しい話をわかりやすく開設しながらブログにまとめました。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
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目次
高価なデータベース
金融系エンジニアだったころ、顧客との打ち合わせでこんな話がよく出てきた。
「ところで データベースは、オラクルだよね」
「それ以外は、信用ならないからね・・・」
おカネという重要なものを取り扱う彼らにとって「オラクル」というキーワードは、絶対だった。
時代は、2000年あたり、まともな商用データベースといえば 「オラクル」ぐらいしかなかったのは事実である。
Microsoftは、対抗すべく SQLServer を発表していたが、小規模なシステムならともかく、秒間に何百何千のトランザクションに耐えられるものはなかったと言えよう。
それほどオラクルの信頼度は絶対であった。
ただし、値段も半端なく、数千万円は当たり前、保守料金も数百万円だったら安いとも言われる世界
そんなもの、銀行や証券会社のようなところしか払えない。
ごもっとも しかし「システムのトラブルで数千万円が吹っ飛ぶ」ことを考えたら安いものだったのでしょう。
高いものには理由がある。
ごもっともでございます。
他のデータベースはどうなの?
2000年当時 IBMのDB2が、唯一Oracleに真っ向勝負できたデータベースだった。
ただIBMの製品は、ベンダーとセットものが多かったため、銀行以外は、Oracleの支配が続いていた。
オープン系の PostgreSQLとかMySQLはどうなの?
2000年当時の金融エンジニアから言うと
「お遊びのデータベース」としか考えられなかった。
堅牢性という面で使い物にならなかったのは事実だと思っている。
高価な保守料
オラクルで比較的低価格のStandard Edition One(SE1)が、多くの企業に導入されていた。
更新時調整料金
2011年11月 「更新時調整料金」という方式を取り入れた。
「更新時調整料金」というのは、
- 顧客と日本オラクルとの保守契約は1年単位で更新
- Oracle DBの年間サポート料金はライセンス料金の22%
というのが、前提となっていて
この保守料金を
「更新前の保守サポート料金に数%の「調整率」を乗じた金額でサポート契約」
という方式に切り替えた。
つまり、年を追うごとにサポート料金が値上がりするというものである。
さらに保守を結ばなければ、バグやセキュリティの情報もなく、もちろん更新などもされません。
「重要なデータを抱えているデータベースでバグやセキュリティ問題を放置できない」
これは、ユーザー側からすると「人質」を取られたように思われても仕方がない。
※オラクル社を養護するわけではないですが、保守を受けるのは、カネを払えというのは当たり前です。
ただ、毎年値上げというのは?????
Standard Edition One(SE1)の廃止
2016年1月 中小規模システム向けで安価な「Standard Edition One(SE1)」を廃止
「Standard Edition(SE)」のライセンス内容を変更した「Standard Edition 2(SE2)」に一本化した。
サポート契約を結んでいるSE1ユーザーがSE2に移行する場合、追加料金を支払う必要はないが、保守料は約20%アップとなった。
「SE2はSEの機能を全て継承している」(日本オラクル)。SE1でこれまで使えなかったクラスター構成 Real Application Clusters (RAC)が利用可能」
「既存ユーザーは、技術的には従来のバージョンアップと同じ方法で、SEやSE1からSE2に移行できる」
確かにメリットは大きいが、そこまでの機能が必要でないユーザーにとって 210万円をは払ってStandard Edition 2(SE2)にする意味がないところは多い。
他社クラウドの値上げ
2017年1月
「AWSなど他社のクラウドサービスで利用する場合に必要なライセンス費用を、場合によっては2倍」
という方針が発表された。
※AWSは、Amazon Web Serviceの略でAmazonが運用している世界最大のクラウドサービスです。
AWSが提供するコンピューティングサービス「EC2」
データベースのマネージドサービス「RDS」
米Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」
Oracle DBなどの米Oracleのソフトウエアを利用
などが2倍に値上げということになった。
目的は、オラクル社が経営する自社のクラウドに移行させることであろう。
これに対して、アマゾンは、オラクルを見限ることに方針を決定
まず自社から 脱Oracle DB を開始することになった。
Amazon 脱Oracle DB計画
eコマースや物流、決済、受発注、広告、動画・音楽配信などのバックエンドに 約7500ものOracle DBが社内に存在していた。
その総容量は、75ペタバイト(PB)
これらをすべて、Amazon Web Services(AWS)で提供するDBサービスに移行する計画が開始
※アマゾンのコメントによると約5年前から開始と思われる。
そして、2020年第1四半期までに完了するところを2019年10月15日(米国時間)に移行完了が報告された。
これは、おそらくデータベース移行プロジェクトとえいて過去最大とも言えるだろう。
Oracle DBから移行されたデータは、すべてAmazonのサービスで使われているものである。
主なデータベースとして
Amazon Aurora 分散型リレーショナルDB(RDB)
Amazon DynamoDB NoSQLのDBサービス
Amazon Redshift データウエアハウス(DWH)のサービス
などが使われたと発表
アマゾン優位な展開
米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)のコメントによると
大幅なコストダウン
60%のコストダウンが実現
DB管理コストが70%削減
※Amazonは、オラクルから大手割引を受けていると推測されているので他社換算でいえば もっと多いコストダウンになっているはず
パフォーマンス改善
消費者向けアプリケーションにおける遅延が40%改善
Amazonのサービスで実現
Oracle DBを使わなくても同等以上の環境がAmazonのサービスで実現できることを証明
これは、Oracle絶対主義者にとって大きなインパクトがあるはず
停止なく移行できた。
業務アプリケーションをほぼ停止することなくDB移行する技術と環境を証明
宣伝効果
オラクル社 CEOのラリー・ネルソンは、常々
「あのAmazonもOracle DBを使っている 優良な顧客でありパートナーである」
という宣伝が使えなくなった。
もちろん、デカイ顧客を失ったことによる営業的な損失も大きい。
オラクル社の反撃
一方オラクル社は、クラウド戦略を推進
「オンプレミス環境のインフラからクラウドまで全てを提供できるのが競合企業と異なる当社の強み。顧客に多くの選択肢を提供できる」
と記者会見で発表
- 国内データセンターを新たに開設しクラウドで日本企業のDXを支援
- 他社と比較して6割から9割低い料金
- ネットワークは10TB/月までのデータ転送が無償
DXレポート~ITシステム『2025年の崖』を前面に出して日本企業のアプローチを開始
マイクロソフトとのパートナーシップも組んだ
オラクルが、値下げを言ってくるとは、過去を知っているIT小僧にとっても驚きである。
それだけ、クラウド&データベースの争いが激化しているということだと思います。
まとめ
アマゾンの脱Oracle DBプロジェクトは、大きな意味がある。
なにより、アマゾンの技術力が証明されたことが大きい
今でもAWS(Amazon Web Service)クラウドでOracle DBを使っているユーザーは多いと思います。
そのユーザーに対して脱Oracle DBへの道筋を自ら実現したことによる ノウハウの提供も開始されるであろう。
これは、アマゾンにとって大きな武器となるはず。
今後、AWS(Amazon Web Service)、Azure(Microsoft Cloud)、Google Cloud、そしてOracle Cloudと激しいシェア争いが起こるであろう。
残念なのは、ここに日本のIT企業が絡んでいないことである。
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