Copilot(コパイロット)が大きく作り直されます。Microsoftは2026年9月25日(米国時間)、AIアシスタントのアプリを「Home(ホーム)」「Code(コード)」「Autopilot(オートパイロット)」の3タブ構成に刷新すると発表しました。
ただ、「主要機能は従量課金制」という見出しだけを見ると、Copilotが丸ごと使った分だけ払う仕組みに変わるように読めてしまいます。実際はそうではありません。公式発表と各種報道をもとに、何が変わり、何が変わらないのかを整理します。
・日常のAI利用(チャットとOffice系アプリ内の機能)は、従来どおり月額固定のライセンスでカバーされる
・エージェント(自律的に作業を進めるAI)と最先端モデルは、使った分だけ払う従量課金になる
・従量課金を使うには、月額ライセンスを持っていることが前提
「Copilot(コパイロット)」とは何か?やさしく解説
Copilotは、Microsoftが提供するAIアシスタントの総称です。名前は航空機の「副操縦士」に由来します。人間が機長として判断し、AIが隣で補佐するという発想です。
文章の下書き、長い資料の要約、表計算の分析、返信文の作成などを、チャットで話しかけるだけで頼めます。
ややこしいのは、同じ名前の製品が複数あることです。個人向けのアプリ、仕事用のMicrosoft 365向け、開発者向けのGitHub版などが並存しています。8月には消費者向けのチャットボットと企業向けのAIツールを一つのアプリにまとめる動きが始まっており、今回の刷新はその延長線上にあります。
今回、Copilotの何が刷新されるのか?
新しい画面は3つのタブで構成されます。ナデラCEOは、これを「仕事のための新しいOS」と表現しました。
| 機能 | 内容と提供時期 |
| Home(ホーム) | 質問に答えるチャットと、仕事をまるごと任せるCowork(コワーク)を1か所に集約。先行提供プログラムのFrontier(フロンティア)で、今後数週間のうちに展開が始まる。 |
| Code(コード) | 自然言語で説明するだけで、アプリやダッシュボード、自動化の仕組みを作れる。GitHub Copilotと同じ基盤技術で、開発者以外も使える。作ったアプリは会社の管理下で共有できる。 |
| Autopilot(オートパイロット) | 以前はScout(スカウト)と呼ばれていたエージェント。名前・役割・目標を与えると、指示を待たずに作業を進める「デジタルの同僚」。9月末にプライベートプレビューが拡大される。 |
| Office統合 | Office形式の文書・表計算・スライドをCopilot内で作成・編集でき、内容は各Officeアプリと同期される。 |
Autopilotはクラウド上で動くため、利用者が席を離れていても作業を続けます。組織のテナント内に独自のアイデンティティ、メモリ、ワークスペースを持ち、権限・監査・ガバナンスの仕組みが適用されます。基盤にはオープンソースのエージェント基盤OpenClawが使われています。
あわせて、会社のデータや業務プロセスをより深く参照する仕組み(Work IQ、Fabric IQ、Plugin Registry)も強化されます。
新機能の多くは、まだ一般提供ではありません。Today(トゥデイ)は10月、Teamsで呼び出す機能は9月末に、それぞれプライベートプレビューが始まる予定です。個人向けは、Codeを年内にMicrosoft 365のPremiumとProの加入者向けにプレビュー提供するとされ、Autopilotの個人向け提供には触れられていません。
従量課金制の内容とは?何が固定で、何が従量なのか
| 項目 | USL(ユーザー・サブスクリプション・ライセンス)月額固定 | UBB(ユーセージ・ベースド・ビリング)従量課金 |
| 課金方式 | ユーザー1人につき月額の固定料金 | 使った量に応じて、クレジット(Credits)を消費する |
| 対象 | チャット、Office系アプリ内のAI、モデル選択、Auto(オート:最適なモデルの自動選択) | コワーク、コード、オートパイロットなどのエージェント機能、長時間稼働型のエージェント、最先端モデル(AstraとFable) |
| 費用 | 商用のMicrosoft 365 Copilotで月額30ドルと報じられている | 標準の従量課金で1クレジット0.01ドル。消費量は、モデル、読み込むデータ量、ツールの呼び出し回数、稼働時間で変わる |
| 上限・管理 | 公正利用(フェアユース)の上限がある。近づくと警告が出て、追加費用なしのAutoに切り替えるか、クレジットに移るかを選べる。上限の具体的な数字は未公表 | 管理者が支出ポリシーで、組織・グループ・ユーザー単位の上限やアラートを設定できる。企業向けでは、管理者がポリシーを作るまで停止状態と報じられている |
重要なのは、従量課金を使うにも月額ライセンスが前提になる点です。つまり「固定費に、使った分の変動費が上乗せされる」二階建ての構造です。Microsoftはこれをハイブリッド車に例え、ライセンスが日常の走行をまかなうバッテリー、従量課金が長距離用の燃料タンクだと説明していると報じられています。
クレジットの単価は1クレジット1セントですが、1回の作業で何クレジット使うかは固定ではありません。長時間動き続けるエージェントほど、消費は読みにくくなります。
企業の管理者が押さえるべき注意点
11月2日以降、CSP(クラウドソリューションプロバイダー:販売代理店)経由で新規購入するMicrosoft 365 Copilot Businessでは、対象機能の従量課金が既定で有効になります。
対象は新規購入です。通常のOffice系アプリ内の利用が、突然1回ごとの課金になるという意味ではありません。ただ、請求の窓口はAzure(アジュール)のサブスクリプションになるため、誰が請求を確認し、誰が予算を承認するのかを、購入前に決めておく必要があります。
Microsoftは、支出管理の機能も同時に提供するとしています。支出ポリシー、グループ・ユーザー単位の上限、アラート、利用者自身によるクレジット残高の確認、ユーザーごとに使えるモデルの制御などです。管理センターの画面と、Azureの請求書の両方を見ないと消費が追えない場面もあるようです。
導入前の確認は次の3点です。(1)請求を受け持つ部署と承認者、(2)使わせるユーザーとモデルの範囲、(3)月額の上限と通知のしきい値。
IT小僧の見立て:後れを取ったCopilotは巻き返せるか
ここからは事実ではなく、私の分析です。
競争面では、Microsoftが日常利用を固定費で守り、毎回メーターが回る印象を避ける姿勢を打ち出していると報じられています。他社の企業向けプランを意識した対比のようです。ただし、最先端モデルは結局メーターに載ります。本当に最高の性能を使いたければ、従量課金からは逃げられません。
まとめ
今回の刷新は、CopilotをHome・Code・Autopilotの3タブに再編し、日常のAIは月額固定、自律的に働くエージェントと最先端モデルは従量課金という二本立てにするものです。多くの新機能は先行提供やプレビュー段階で、上限の具体的な数字など未公表の点も残っています。個人利用者は当面、大きな影響を受けません。企業の管理者は、11月2日の既定設定の変更に向けて、請求と支出管理の体制づくりを急ぎましょう。
参考:Microsoftの公式ブログと技術資料、ITmedia NEWS、ZDNET Japan、Impress Watch、各種業界メディアの報道(2026年9月28日時点の情報です。料金や提供時期は変更される可能性があります)