2026年の衆院選では、自民党が圧勝し、選挙の裏側ではSNS戦略の優劣が結果に影響を与えたと言われています。
本記事では、オールドメディアとSNSの情報構造の違い、各党のSNS運用の特徴、そして自民党がどのように“静かで強いSNS戦略”を展開したのかを、政治的立場ではなく「SNSの視点だけ」でわかりやすく解説します。
目次
衆議院選挙2026:自民党圧勝を導いた“静かで強いSNS戦略”とは
(※政治的立場ではなく、SNS運用の観点に絞った分析)
2026年の衆議院選挙は、政策論争よりも「情報の届け方」が勝敗を大きく分けた選挙だったとも言われています。特に今回は、テレビ・新聞といったオールドメディアが依然として強い影響力を持ちながらも、SNS世代が確実に増えたことで、選挙の構造そのものが変化しつつあることが浮き彫りになりました。
多様な政党がSNS戦略に挑む中で、最終的には自民党が圧勝という結果を残しました。その背景には、激しい議論やバズ狙いとは異なる、「静かだが強いSNS運用」が確かに存在していました。
SNSが左右した選挙:オールドメディアとの“温度差”
日本では依然としてテレビの政治ニュース消費が多く、特に高齢層ではSNSよりもテレビ報道への依存が強いままです。しかし、今回の選挙では20〜50代の投票行動においてSNSが情報経路の中心となり、YouTube、X(旧Twitter)、TikTokの3つが投票判断に影響を与えたとされます。
一方で、新聞やテレビは政策論争や候補者の失言を中心に扱う傾向が強く、SNSとは「話題の焦点」が大きく異なりました。
オールドメディアが“事件”を追うのに対し、SNSは“人物像”と“わかりやすさ”を重視する。 このギャップがSNS時代の選挙戦略をさらに複雑にしています。
各党のSNS運用:明確な差が生まれた理由
今回の選挙では、立憲民主党 や野党各党がSNSで積極的に発信し、“尖ったメッセージ”“切り抜き動画”“Xでの拡散”など攻勢を強めていました。しかし、その多くが支持層の中だけで循環し、広い年代に届く「外側への広がり」を作るのに苦戦しました。
とりわけ若い層が多いTikTokでは、政治批判系の動画は再生数が伸びる一方、投票行動につながる「信頼」を獲得するまでには至らなかったという分析が多く見られます。
自民党の“静かで効率的なSNS戦略”が機能した理由
大きな炎上は起こさず、派手なキャンペーンも控えめ。それにもかかわらず、自民党 のSNS戦略には明確な方向性がありました。
① 公式アカウントより“候補者ローカルSNS”の強化
政党本部が目立つのではなく、各候補者が地域密着型のXやFacebookで情報を継続発信。
**「地元の人に向けて短く丁寧に」**というスタイルが、過激化しがちなSNS空間では逆に信頼感を生みました。
② 若年層には“過激化しない情報設計”
TikTokやYouTubeで「炎上させてバズらせる」戦略を取らず、淡々と短い政策説明や生活者視点の話題を発信。
これが10〜20代の「騒がしい政治コンテンツに疲れた層」に刺さったと言われています。
③ Xでは「戦う」のではなく「沈める」戦略
SNS戦争には参加せず、論争の中心にならず、攻撃されても強く反応しない。
結果として、批判的なトレンドよりも落ち着いた政策発信が検索結果に残る構造ができあがりました。
④ LINE広報網で中高年層を“確実に押さえた”
SNSと比較しても圧倒的に到達力が高いツールとして、LINE公式の情報配信が効果を発揮。
オールドメディアとSNSの間にある“情報断層”を埋める役割を果たしました。
こうした複数の施策が重なり、結果として「炎上で疲れた層」「メディアの煽りに距離を置く層」を静かに取り込み、投票行動へとつながったと推測できます。
自民党以外の政党別SNSの特徴
自民党以外の政党についてのSNS戦略をまとめました。
中道(中道系政党全般)
※中道という名称の政党ではなく、「中道路線を掲げる勢力のSNS傾向」を整理
① SNS空間では“存在が溶けやすい”という構造的課題
中道系は極端な主張を避けるため、SNS空間では存在が埋もれやすい傾向があります。
XやTikTokでは、強いメッセージ・批判・対立構造が可視性を高めますが、中道はそれを避けるため、露出量自体が伸びにくいという弱点が生じます。
② 「誠実」「実務」「穏健」の訴求はSNSでは伝わりにくい
中道系は論点を丁寧に整理した投稿を好みますが、SNSでは長文や慎重表現は拡散しにくく、フォロワー増加につながりません。
とくにTikTok世代には“温度が伝わらない”ため、刺さりにくい構造があります。
③ YouTubeや街頭演説切り抜きに勝機がある
唯一比較的相性が良いのがYouTube。
街頭演説の切り抜きや、公平な政策説明など、落ち着いたトーンを好む層には届きます。
ただし、外に広がる波及力が弱いのが課題。
日本維新の会
● クリアでビジネスライクな“論点明確化型SNS”
維新は、政策整理やロジック重視の投稿が多い政党で、SNSでも**「短く要点だけ伝える」**スタイルが特徴です。
● Xで論点ごとにメッセージを分解
● YouTubeでの長尺の政策解説が伸びやすい
● TikTokは控えめで、拡散より情報の精度を優先
● 地方議員のSNS発信が強く、組織的な露出拡大
一方で、感情的なアクションが少ないため、SNS上では“広がりにくさ”もあります。
国民民主党
●「わかりやすさ重視」のミドル層狙いSNS
国民民主党は、政策の“わかりやすさ”をストレートに伝えるSNSを展開。
● Xでの政策まとめ画像・動画が多い
● YouTubeでの政策解説が丁寧で好評
● TikTokは弱いが、30〜50代への刺さりは強い
● 過剰にバズらせず、誠実路線の運用
SNSで大きなムーブメントを起こすタイプではないものの、「わかりやすい中道」として安定的な評価を得ました。
参政党
参政党は、SNSを政党基盤の中心に据えており、分析すると**日本の政党の中でも突出して“デジタル発信力が強い”**タイプです。
① YouTubeが圧倒的主戦場
参政党はYouTubeでの演説動画・スピーチ・ロングトークが非常に強く、
演説がそのままマーケティングコンテンツになっている稀有な政党です。
・候補者がスピーチ能力に長けている
・長尺でも視聴維持率が高い
・サムネイル・タイトルが感情値を刺激する構成
・“応援者コミュニティ”が強くコメント欄の熱量が高い
この4つが成功要因となり「コミュニティ型SNS運用」の典型例と言えます。
② Xでは“共感と危機意識”を軸にした拡散設計
参政党はXで非常に拡散されやすく、ハッシュタグ運動や、応援者によるUGC(ユーザー生成コンテンツ)が自然に増えます。
● 危機意識・社会問題をわかりやすく提示
● シンプルなスローガン
● 賛同者が引用ポストしやすい構造
SNSマーケティング的に見ると、
「シェアされやすい言葉」を徹底して作っている点が他党と大きく異なります。
③ TikTokでは若者に刺さりやすい“語り口”を最適化
短時間で結論を出す語り方、強めのトーン、健康・教育・主権など若年層が興味を持ちやすいテーマが多いため、TikTokとの相性が良い政党です。
チームみらい
※地方発・地域密着型の新興勢力としての「チームみらい」的ムーブメントを分析
① “地元政治の可視化”をSNSで実現
チームみらい系の勢力は、政党ブランドより「候補者個人の魅力」を前面に出す特徴があります。
● 地域活動の写真
● ボランティアとの交流
● 地元視点の課題説明
● 手作り感のある動画
これらが地域密着型の情報発信として強みを発揮しています。
② Xでは“フットワークの軽さ”が最大の武器
新興勢力のため、組織の制約が少なく、候補者が自分の言葉で自由に発信できる点が大きな強み。
● 即応性
● 共感型ストーリー
● 市民からの質問にリプで回答
大政党よりも「人柄が伝わるSNS」が作りやすい構造があります。
③ TikTok・Reelsは“親しみやすさ”で勝負
政策よりも「人となり」「活動の裏側」を出す方が伸びる傾向が強いです。
少人数で運営しているため、素朴でリアリティのある動画が逆に好まれています。
④ YouTubeは弱めだが、ローカル性が強みになる
YouTubeは大規模政党に比べると弱めですが、
「地元で何が起きているのか」というローカルテーマは一定層に支持されます。
日本共産党
SNSでの独自ファン層が強い“思想コミュニティ型”
共産党は、SNSにおいて明確な世界観と一定の支持コミュニティが存在します。
● Xで政策・労働問題を中心に継続発信
● YouTubeでの演説動画は安定した視聴数
● TikTokでもニュース寄り動画が若年層に刺さる
● コア層のコメント・共有による拡散が強み
ただし、拡散先は固定的で、支持層外への広がりは限定的でした。
社民党(社会民主党)
社民党は、政党規模が小さい中で 「コアな支持層向けの情報発信」 に重心を置くSNS運用を行っていることが特徴です。発信力は大政党ほど大きくありませんが、明確なストーリー性や立場を持ち、SNS空間では一定の存在感があります。
コア支持層との結びつき強化型」
・価値観が明確で、メッセージがぶれない
・Xでの支持コミュニティ形成
・丁寧・慎重な発信が一定の信頼感を生む
・TikTokなど若者向けSNSでの存在感が弱め
・外側への拡散力が不足
・動画戦略の企画性が薄く、可視化が難しい
→ 「コア層重視」「コミュニティ型」「思想の可視化型」SNS運用
(拡散型や炎上型とは真逆のタイプ)
ネット界隈の反応と“情報空間の分断”
今回の選挙では、XやYouTubeの政治系インフルエンサーが盛んに意見を発信していましたが、その多くは既存の支持層向けで、広い層に浸透する“世論形成力”には限界がありました。
SNS空間では野党支持の声が可視化されやすい一方、
「静かにSNSを見ている層」が自民党へ投票する
という構造が浮き彫りになったことも重要なポイントです。
SNS上の“声の大きさ”と“票の数”は一致しない――今回の結果は、それをより鮮明に示した選挙でもありました。
まとめ:SNS時代の勝者は「騒がない政党」だった
今回の衆院選では、SNSが確かに影響力を強めましたが、勝敗を決めたのは「炎上」や「論破」ではありませんでした。
・丁寧で地道な地域発信
・感情的な応酬を避けるコミュニケーション
・LINEなどの確実な経路の強化
この3つを組み合わせた自民党のSNS戦略は、「攻めるSNS」ではなく「信頼を落とさないSNS」という新しい勝ちパターンを示したと言えます。
SNSが政治に与える影響は今後さらに大きくなる一方で、「強いメッセージ」よりも「安心感」が票につながる時代になりつつあることを、今回の選挙結果は象徴的に物語っています。