Google Chrome は世界で圧倒的なシェアを誇りますが、Microsoft と Apple はそれぞれの独自戦略で Chrome の優位を崩そうとしています。
Microsoft は Windows で Edge を推奨・他ブラウザのダウンロードを阻害する表示をテストしており、Apple は自社の Safari をプラットフォーム全体で優遇する設計を続けています。
また、日本でも「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」が施行され、ブラウザ選択の環境が変わりつつあります。
本記事では、なぜ各社がこの競争を仕掛けるのか、その手法とユーザーへの影響を米・日両面から解説します。
目次
ブラウザシェアを巡る現状
Google Chrome は依然として世界で最も利用されているブラウザです。2025年のデータではデスクトップ市場で 約73.7% のシェアを持ち、Safari や Edge を大きく引き離しています。(turn0search14)
一方、Safari は主にモバイルで強さを見せ、Edge は Windows 既定搭載にもかかわらず苦戦している状況です。(turn0search14)
このような状況で、Microsoft と Apple は自社ブラウザのシェアを維持・拡大するため、様々なユーザー誘導策を実施してきました。
Microsoft が仕掛ける Chrome ダウンロード阻止策
Microsoft は、Windows ユーザーが Edge から Google Chrome のダウンロードページを開いた際に、安全性を強調するポップアップやバナーを表示するテストを実施しています。これは「安全なブラウジング」を理由に Edge の利点をアピールし、Chrome に乗り換える行動を抑制しようというものです。(turn0search5)
このポップアップには、
「プライバシーとセキュリティを Edge で保護する」
という内容が含まれ、実際にクリックすると Edge の安全機能紹介ページへユーザーを誘導します。(turn0search5)
これまで Microsoft は、デフォルト検索エンジンを Bing に固定するオプションを施したり、Windows のテキスト検索結果や通知領域で Edge を推奨するように働きかけてきた歴史があります。(turn0search26)
こうした戦術は、いわゆる “dark patterns(誘導的UI)” と批判されることもあります。過去の批判では「ユーザーが意図しない選択を誘導する設計」として問題視されてきました。(turn0search22)
Apple の Safari 優遇戦略
Apple は iPhone や iPad において、Safari を標準ブラウザとして据えています。技術的制限として、iOS ではすべてのブラウザが WebKit エンジンを使用する必要があり、これは事実上 Safari の優位を強める構造です。(turn0search20)
さらに、Safari は iOS の初期設定での標準ブラウザとされ、多くのユーザーが他の選択肢を意識せずにそのまま使い続けています。調査報告でも、標準搭載や初期設定状態が競争を阻害しているという指摘があります。(turn0search20)
この点について欧州などでは調査が進められており、Apple の仕組みが「競争の障壁になっている」との見解も出ています。(turn0search20)
スマホ新法がもたらす変化
2025年12月18日に施行された**スマホソフトウェア競争促進法(通称・スマホ新法)**は、ユーザーの選択肢を広げる方向へ動いています。これは Apple と Google が支配的だったモバイル環境に、競争を促すための法的枠組みです。(turn0search15)
具体的には、スマホ起動時の「チョイススクリーン」によって、ユーザーはブラウザや検索エンジンを選べるようになります。これにより、Safari や Chrome 以外のブラウザにもユーザーがアクセスしやすくなる可能性があります。(turn0search15)
この法の趣旨は、ユーザーが自ら利用するブラウザを選べるようにすることで、Google・Apple による市場支配構造を緩和することです。日本版 DMA(デジタル市場競争法)とも呼ばれるこの流れは、モバイルブラウザ戦争の新たな舞台となっています。(turn0search4)
ブラウザ戦争の本質──競争とイノベーション
歴史的に見れば、ブラウザ戦争は新たな技術や選択肢を生む原動力でもありました。たとえば 1990年代の Internet Explorer と Netscape の競争は、今日の Web 標準に影響を与えました。(turn0search25)
現代では Chrome の支配が目立ちますが、Microsoft や Apple の戦略は単なる “排除” ではなく、自社エコシステムへのユーザー定着を強化し、収益や関連サービスへ波及させたい思惑が背景にあります。Edge や Safari を使い続けてもらうことで、システム内のセキュリティ機能、パスワード管理、連携サービスへの導線を確保したいという意図です。
一方、ユーザーの選択肢と競争は、より良い技術やプライバシー保護、性能改善につながるとされ、規制側や競合企業からは警戒や批判もあります。(turn0search8)
ユーザーへの影響と選択の自由
現在の環境では、Android では Chrome、iOS では Safari が事実上の標準として機能してきました。スマホ新法はこの状況を打破し、ユーザー個々がブラウザを自由に選べるようにすることを目標としています。(turn0search15)
ユーザーが意図しない制約や誘導を排除し、より公正な競争を促すことで、ブラウザのシェア構造も変わる可能性があります。これが実現すれば、Microsoft や Apple の一方向的な戦略は調整され、利用者に真の“選択の自由”がもたらされるかもしれません。
まとめ:ブラウザ戦争は終わらない
Microsoft と Apple の両社は、Chrome の強力なシェアに対抗するため、単純な比較広告や機能競争だけではなく、ユーザーの心理・安全性訴求・エコシステム価値を切り口にした戦略的な誘導を行っています。
Edge が Windows の標準ブラウザであり続けること、Safari が iOS の代表的な選択肢であることは、今後も市場シェア争いの焦点となるでしょう。また、スマホ新法のような規制は、今後の競争条件に影響を及ぼす可能性があります。
私たちユーザーにとって最も重要なのは、“本当に自分にとって最良のブラウザはどれか” という視点を持つことです。表示される誘導や警告に流されず、機能・プライバシー・セキュリティ・互換性という多角的な評価で選択することが、真の意味で「ブラウザ選択の自由」を守る道です。