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IT小僧の時事放談

労基法改正が直撃するIT業界──人手不足とSIerの未来を考える

2025年12月13日

日経XTECHにも掲載された「労基法改正議論が与えるインパクト」というテーマは、日本のIT業界が抱える根本的な課題を映し出しています。

60歳を超えても案件にありつけるほど仕事の需要はある一方で、若いエンジニアが不足し、SIerでは古い「多重下請け」構造や海外人材に依存したコスト削減が横行している。

そのため低品質なシステムや要件漏れの訴訟騒ぎが相次ぐ現状は、単なる労働力不足ではなく、構造的な問題が背景にあります。

本記事では、日本と欧米の視点を取り入れながら、これからのシステム構築がどう変わってゆくべきかを考えます。東洋経済オンライン+1

日本のIT人材不足は何故ここまで深刻なのか

現在、日本国内ではITエンジニア、特にシステムエンジニアやプログラマーの不足が深刻です。経済産業省の試算では、IT人材は将来的に数十万人規模で不足する可能性が指摘されており、その背景には人口減少・少子高齢化、労働生産性の伸び悩みという構造的な要因があります。日本の情報通信業における労働生産性は、他国と比べても低い水準にとどまっており、同じ人数でより大きな成果を出せない状況が続いています。Findy Tech Blog

また、OECDの分析では、労働市場の不足は景気循環だけでなく構造的な人材・技能ギャップによるものとされており、特にITやICT分野では需要が供給を大きく上回る状態が続いていることが示されています。OECD

世界的にもIT人材不足は共通した課題であり、欧米ではAI、サイバーセキュリティ、クラウド開発など専門性の高い技能の需要が供給を圧倒しています。Qubit Labs の調査でも、76%の企業がIT人材不足を感じており、適切な人材を見つける競争が激化していると報告されています。Qubit Labs


なぜSIerは多重下請け構造から抜け出せないのか

日本に特徴的なのが、システムインテグレーター(SIer)による多重下請け構造です。これは元請け企業が一次請け、二次請けと人材をどんどんかき集めて大規模プロジェクトを進める形で、末端のエンジニアは低賃金・長時間労働になりがちという問題が指摘されています。東洋経済オンライン

こうした構造は、いわば建設業に似たピラミッド型の請負体系を作っており、上流の大企業は利益を確保しますが、末端の現場では人材のモチベーションやキャリア形成が阻害される傾向があります。また、こうした環境は若い人材の流入を妨げ、ITエンジニアという職業の魅力を削いでしまっているという見方もあります。東洋経済オンライン

結果として、プロジェクトマネジメントが弱く、要求事項の曖昧さや手戻りが頻発し、品質問題につながるケースが少なくありません。実際に要件漏れや欠陥が訴訟問題に発展した事例もあり、単に人材が足りないだけではなく、開発プロセスそのものの改革が必要とされています。


労働改革と生産性向上が迫られる背景

日本政府の労基法改正議論がIT業界にも大きな影響を与えています。労働時間の上限規制や過重労働の是正は、これまで暗黙のうちに許容されてきた開発現場の長時間労働構造を見直す契機になります。

一方で、海外では労働市場全体の人手不足に対応するため、企業は**自動化やAI導入による生産性向上、そしてリスキリング(能力再習得)**を進めています。例えば米国ではAIや自動化技術を活用して仕事を補完し、生産性を大きく押し上げようとする動きが進んでいます。こうした取り組みは労働人口減少に対応するだけでなく、より高付加価値な仕事に人材を再配置することを目指しています。McKinsey & Company

つまり、日本のSIerが今直面しているのは、人手不足を単に補うだけではなく、労働環境や生産性の抜本的な改革が求められるということです。単に若い人材を募っても、働き方や評価制度、生涯学習の仕組みを変えなければ、この構造的な問題は解消しません。


海外の動きと日本企業への示唆

海外では、IT人材不足を自動化やリスキリング、柔軟な働き方を通じて解決しようとする企業が増えています。例えば、柔軟なリモートワークやオンデマンドなスキル教育を取り入れることで、従来のフルタイム一元雇用に頼らない人材活用が進んでいます。また、中途採用者やシニア人材、あるいは別分野からの転職者を積極的に受け入れる動きも出ています。

日本でいうと、60歳を超えた人にも案件が舞い込むという現象は、人生100年時代の働き方の変化を象徴しているともいえます。経験豊富な人材をフル活用し、若手と協働して技術継承を行う仕組みづくりが重要になってきています。

また、多国籍チームの活用や外部パートナーとの協働、あるいは自社内での教育制度の強化など、人材育成と組織文化の改善が求められています。これは単に労働力を補うだけでなく、競争力ある企業へ変貌するための変革でもあります。


これからのシステム構築はどう変わるのか

未来のSIerやシステム開発のあり方は、単なる人材確保ではなく生産性向上と価値提供の最大化が中心になります。例えば以下のような変化が考えられます。

  • 自動化ツールや生成AIを活用したコード生成・テスト自動化による開発効率の向上。

  • プロジェクト管理における透明性向上と継続的インテグレーション/デリバリー(CI/CD)の徹底。

  • スタートアップ文化の導入やエンジニアの裁量と創造性を重視する働き方の普及。

  • 多様な働き方やリスキリングを支える社内教育制度やキャリアパスの整備。

海外ではすでにこうした動きが見られ、柔軟性と生産性の高い組織ほど人材不足の影響を受けにくいという傾向があります。日本でも、単に海外人材を呼び込むだけではなく、構造的な変革を伴ったスキル資産の蓄積が必要です。


結論:変革の時代を迎えて

日本のIT業界、特にSIerは、労働環境や開発構造、生産性の問題を同時に解決しなければ、人手不足という課題を突破できません。単に人材を増やすだけでなく、組織や技術、働き方を刷新することで初めて持続可能なシステム開発が可能になるのです。

欧米の動きを参考にすれば、自動化・AI・柔軟な働き方・教育制度の強化といった要素が鍵になります。

60歳を過ぎても活躍できる時代だからこそ、多様な人材が活躍できる環境づくりが日本の競争力を回復する道と言えるでしょう。

ひとりごと

60歳を過ぎてもお声がかかるわけですが、その多くは、何十年もほったらかしの基幹システムのマイグレーション案件です。

その多くが、メインフレームとCOBOLで書かれているシステムが多い。

マイグレーションと言ってもその多くがJavaで書き直すということが多いわけだが、

「そんなもの失敗するに決まっている」

このブログで何度もテーマとして取りあげてきましたが、解決方法は、

「そんな化石のようなシステムは、捨てさり ERP(統合基幹業務システム)導入」

ということが、「みんな幸せ」の唯一の方法である。

もっともERP(統合基幹業務システム)を自社の業務に合わせるなんて愚かなことをしてはいけない。

業務をERP(統合基幹業務システム)に合わせる というのが最良の方法である。



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