「16歳未満はSNS禁止?」
マレーシアが来年からそのような規制を検討しているという報道が世界を駆け巡りました。
実は、これは一国の動きにとどまらず、欧州からアジアまでいくつもの国が“子どものソーシャルメディア利用年齢制限”を検討、あるいは実施しています。
なぜ今、SNSの年齢規制が注目されるのか。どんな国がどのような対応を進めているのか?
そして日本ではどう動くべきか。本稿では国際比較と専門家の声を交えながら、SNS年齢規制の背景と未来を探ってみましょう。
目次
マレーシアの動き:16歳未満SNS禁止検討の背景
● 2025年11月24日、テッククランチなどで「マレーシアは来年から16歳未満のユーザーによるソーシャルメディア利用を禁止する可能性がある」と報じられました。
→ https://techcrunch.com/2025/11/24/malaysia-may-ban-users-under-16-from-social-media-starting-next-year/
● 背景として、子どもの精神衛生、ネットいじめ、依存の懸念、デジタル環境の規制強化という政府方針があります。
● 具体的には、教育省・通信省が合同で「若年ユーザーのオンライン時間制限」「ユーザー本人確認」「保護者の同意義務化」などを検討中です。
他国の状況:実施中・検討中の国々
■ 欧州
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イギリス:2023年、「デジタルサービス法(DSA)」により、13歳未満がソーシャルメディアへアクセスする際には保護者の同意が必要とする案が議会を通過。
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フランス:2024年から15歳未満の利用時間を制限する法案を検討中。
■ オーストラリア/ニュージーランド
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オーストラリア:SNS運営企業に「若年ユーザーの登録時に年齢確認義務を導入する」よう呼びかけ。
■ アジアその他
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インドネシア:14歳未満のSNS利用を保護者と共に行うことを推奨するガイドラインを発表。
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マレーシア:先述のように16歳未満禁止案。
なぜ規制するのか?専門家が指摘する主な理由
精神・発達面への影響
若年ユーザーが長時間SNSを利用すると、うつ傾向・不安感・注意散漫・睡眠障害などが報告されています。専門家は「人格が形成されつつある時期に、過剰なソーシャルメディア露出はリスク」と指摘。
ネットいじめ・デジタル被害
匿名性・拡散性が高いSNSでは、若年層がいじめ・ハラスメント・過酷な比較文化にさらされやすいという調査もあります。
プライバシー・データ収集の懸念
プラットフォームが若年ユーザーのデータを収集・利用する際の保護が十分でないという指摘もあり、国によってはユーザー年齢下限を設けて対応しています。
保護者・教育機関の管理負荷
若年ユーザーを放置したまま使える構造は、保護者・学校などに大きな負担をかけるという観点からも規制論が出ています。
日本ではどうなるか?現状と課題
現状
日本では、13歳未満のネットサービス利用時には保護者の同意を促すガイドライン(総務省他)がありますが、ソーシャルメディア利用を禁じる明確な年齢制限は現状ありません。
課題
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保護者・学校・プラットフォーム間の責任分担が不明瞭
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本人確認制度や年齢確認技術がまだ全国的に普及していない
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若年層のスマホ・SNS所有率が非常に高く、禁止すると別ルート(ゲーム/動画/非公式アプリ)への移行リスクがある
可能性と方向性
専門家の中には「段階的制限(例:13〜15歳は保護者共用/16歳以上は個別登録)」「夜間利用制限」「利用時間の“見える化”」などが現実的な規制手段として有効と唱える声もあります。
まとめ:SNS年齢制限という“デジタル世代の保護”
SNS年齢制限の動きは、「若年ユーザーが安全に、健全にインターネットを使える社会」を目指す必然的な潮流です。マレーシアの“16歳未満禁止”案に象徴されるように、国はソーシャルメディアの無秩序な浸透に歯止めをかけようとしています。
ただし、禁止だけで解決するわけではなく、教育・技術・制度の三角形でバランスを取る仕組みが問われています。日本もまた、規制という“罰則”よりも、若年ユーザーが安心して使える環境とルールづくりを急ぐ必要があります。