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IT小僧の時事放談

量子コンピュータ最前線2025:長寿命量子ビットと誤り耐性の突破口、日本の追い上げまで一気読み

「量子は本当に役に立つのか?」という問いに、2025年は具体的な答えが増えています。

最高性能クラスの装置はベンチマーク記録を更新し、金融の現場で“量子でしか見えない”シグナル検出の事例が登場
研究最前線では、長寿命(長コヒーレンス)量子ビット誤り耐性の前進が報告され、実用化の距離感が測れるようになってきました。

日本も“国産構成要素で動く量子機”を立ち上げ、巻き返しにギアを入れています。

世界動向:性能・応用・エコシステムが同時進行

最高性能クラスの更新

  • Quantinuum H2 が量子ボリューム(Quantum Volume)で 2²³→2²⁵ と記録更新(約840万→3,355万相当)。量子回路の深さ・エラー率・結合性などを統合評価する指標での連続更新は、総合的な実行力の底上げを示します。
    Quantinuum+1

  • IBM は 2025年ロードマップで、次世代パッケージングやモジュラー化(Nighthawk/Loon など)を通じ大規模誤り耐性への道筋を具体化。クラシカルHPCとの連携で、5,000二量子ビットゲート級の電気的に難しい回路も緩和して正確に走らせる構想を示しています。
    IBM

実務ユースの種火

  • HSBC×IBM社債トレードで量子実証。欧州社債の膨大な歴史データに対し、埋もれた価格シグナル抽出や約定確率の予測精度が最大34%向上と報告。“量子でしか届かない”ノイズ領域の信号検出に期待が高まります(※実証段階)
    フィナンシャル・タイムズ+1

  • Cisco は異種量子機を束ねる量子クラウド“配線”ソフトを発表。アプリ側から装置差を隠蔽して最適な量子プロセッサに仕事を配分する構想で、エコシステムの“つなぎ目”を埋めに来ています。
    Reuters


長寿命量子ビット:コヒーレンスの壁をどう越えるか

代表的ブレイクスルー

  • 欠陥中心×核スピン記憶:ゲルマニウム空孔中心(GeV)と結合した ¹³C 核スピン2.57秒のコヒーレンスを実証。“光で読める固体量子系”に長寿命メモリを併設する設計は、スケールと安定性の両立に有望です。
    Physical Review Link

  • シリコン・スピン:同位体濃縮 ²⁸Si のドナー系などでミリ秒級の電子スピン・コヒーレンスを達成。CMOS親和性が高く、製造インフラを活かせる“王道候補”として厚みが増しています。
    spj.science.org

  • 多体量子レジスター光で動かすスピン量子ビット+複数の長寿命レジスターを組み合わせ、**計算(速い)×記憶(長い)**の役割分担で実用化を狙うアーキテクチャも進展
    Nature

中立原子・誤り訂正の前進

  • 中立原子プラットフォームで、反復的な誤り訂正と論理演算を同時に回す実験を報告。柔軟な配線(可変結合グラフ)を生かし、論理回路の実行オーバーヘッド縮減を示す枠組みも登場しています。
    The Quantum Insider+1


誤り耐性(Fault Tolerance):閾値の壁の“向こう側”へ

  • 量子誤り訂正(QEC)は物理エラー率が閾値以下で初めて“論理エラーが指数的に減る”世界に入れます。2024–25年にかけ、表面コードが閾値下で動作するメモリ実証(距離5/7+リアルタイム復号)など、“原理上の壁越え”が相次ぎました。
    arXiv+1

  • Microsoft4次元QECコードや**トポロジカル(マヨラナ)**路線のロードマップを提示。“数年でのフォールトトレラント試作機”を掲げ、物理・制御・コードを束ねる“垂直統合QEC”を強調。Microsoft Azure+1


産業化の空気感:巨額資金と“実用級”アーキの競争

  • PsiQuantum(光子系)が 10億ドルを新規調達。豪州ブリスベンと米シカゴで“ユーティリティ級”サイト建設へ。光子は室温・長距離相互接続に強みがあり、巨大スケール前提の勝負で存在感を増しています。
    PsiQuantum+1


日本の現在地:国産構成要素の量子機、国家プログラムの厚み

  • 国産構成要素&ソフトで動く超伝導量子機を大阪大学(QIQB)に設置。自前サプライチェーンの構築は研究の持続性・安定運用で大きな意味を持ちます。
    The Quantum Insider

  • 政府系プログラムは層が厚い:国家量子戦略/Q-LEAP/ムーンショット6/理研RQC/G-QuAT/Q-STAR 等。基礎から実装(産学連携・人材育成)まで面で押さえる設計で、“量子×産業”の中長期土台づくりが進行中。
    RVO.nl+1


これからの注目ポイント(実務目線のチェックリスト)

  1. 長寿命×高速ゲートの両立
     核スピン等の長寿命レジスターと、光・超伝導・中立原子など高速操作系のハイブリッド化が主流に。
    Physical Review Link+1

  2. 論理レベルでのアプリ実証
     表面コード等で**“論理量子ビット上の”実アプリ**(化学・最適化・金融)のデモが次の関門
    arXiv

  3. ネットワーキング/クラウド統合
     異種量子機のオーケストレーションや量子ネットでの分散実行が開発体験を変える。
    Reuters

  4. 規模の経済と電力・冷却
     クライオやレーザー群の省エネ・省スペース化。半導体装置産業との供給網接続が勝敗を左右
    IBM

  5. 日本の“自前化”
     国産構成要素の歩みを維持し、装置・制御・ソフトの国産比率を高められるかが分水嶺
    The Quantum Insider+1


まとめ

量子計算は、性能(QVや回路忠実度)・誤り訂正(閾値下動作)・長寿命量子ビット(秒級メモリ)の三拍子が“噛み合い始めた”局面に入っています。
金融のような“ノイズの中の微弱シグナル”領域で価値が出る兆しもあり、実アプリ×誤り耐性の交点に2026–27年の勝負どころが見えます。

日本は自前装置と厚い国家プログラムをテコに、“使える量子”へのラストワンマイルをどう埋めるかが鍵です。
The Quantum Insider+4FNLondon+4Quantinuum+4


参考(主要出典)

  • Quantinuum:H2で量子ボリューム記録更新(2²³→2²⁵)。Quantinuum+1

  • IBM:2025ロードマップ(モジュール化・次世代パッケージング・HPC緩和)。IBM

  • HSBC×IBM:社債トレード実証で最大34%の予測改善。フィナンシャル・タイムズ+1

  • 誤り訂正:表面コード“閾値下”動作の実証。arXiv+1

  • 長寿命量子ビット:GeV中心と¹³C核スピンで2.57秒、Siスピンのms級。Physical Review Link+1

  • 中立原子の反復QEC/アルゴリズム耐性。The Quantum Insider+1

  • 量子クラウドの統合(Cisco)。Reuters

  • 日本:国産構成要素の超伝導量子機(阪大)、国家プログラム群。The Quantum Insider+2RVO.nl+2

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