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IT小僧の部屋 今日のAI話

「ヒューマノイドに数十億ドル」は夢か浪費か──ロドニー・ブルックスの警鐘と、投資家が本当に見るべき指標

数十億ドル規模の資金が、いま世界中でヒューマノイドロボットに投じられている。

倉庫で働くロボット、工場で人と並んで作業するアンドロイド──投資家たちは「次のAIブームは身体を持つ知能だ」と語る。しかしその熱狂に冷や水を浴びせたのが、ロボット研究の巨匠ロドニー・ブルックス氏だ。

カネの無駄遣いだ!

そう断言する彼の言葉は、スタートアップと投資家の期待を揺るがす。スタートレックの“データ少佐”のような未来は実現するのか、それともまた一つのバブルとして弾けるのか?

投資の面からも探って記事を作成してみました。

「ヒューマノイドに数十億ドル」は夢か浪費か

ヒューマノイドロボットに資金が雪崩れ込んでいる。米Figure AIは2024年に6.75億ドルを調達し、2025年には追加の大型資金で評価額が390億ドルに達したと報じられた。
Apptronikは2025年に3.5億ドルを確保し、Agility Roboticsも4億ドル規模の増資観測が出た。

マーケット全体では、2024年のヒューマノイド関連VC資金は少なくとも12億ドル2025年は倍増ペースというデータもある。投資家は「LLMの躍進の次は“身体を持つAI”だ」と読んでいるのだろう。Business Insider+4PR Newswire+4PitchBook+4

だが、その熱気に真正面から異論を唱えたのが、iRobot共同創業者でMIT名誉教授のロドニー・ブルックスだ。

彼は直近のエッセイで、現在のヒューマノイド研究は「人間の手先の器用さ(dexterity)を学習で獲得できる」と高をくくっているが、その前提が甘すぎると斬る。
動画や模倣学習を積んでも、触覚や力制御を伴う精妙な操作は身につかない。莫大なトレーニング費は“焼け太り”する一方で、量産や実運用の現場知を得るプロセスにはつながりにくい

彼の論旨はきわめて明快だ。rodneybrooks.com

さらに彼は、安全面への懸念も公言する。

いまの二足歩行機が人間と近接して働くには見えないリスクが多すぎ、デモ映像の華やかさと現実の現場安全は別物だという。
彼の見立てでは、15年後に“勝つ”ロボットは人型への執着を捨て、車輪・複腕・特殊センサーを備えた**「非ヒト型の作業機」**になっている可能性が高い。
Ars Technica+1

投資家はなぜ賭けるのか:強すぎる新陳代謝と“AGIの身体化”ストーリー

投資サイドの論理は分かりやすい。

労働力不足、危険作業の自動化、倉庫・工場の柔軟性向上、そこへ「生成AI × 物理世界」という物語が乗る。

実際、倉庫向けヒューマノイドは大型調達と評価額の切り上がりを繰り返し、「プロダクト前の資金厚み」が例外的なレベルに達している。

CB Insightsは24年の資金フロー加速と25年の倍増ペースを示し、Business Insiderも“ビリオンズ(複数十億ドル)”の資金が流れ込む実情を描いた。
cbinsights.com+1

しかし、ここで一歩引いて数字を見たい。

多くのスタートアップは受注台数・現場可動時間・故障率・総保有コスト(TCO)といった実務KPIの開示が薄い。映えるデモと巨額の評価はある一方で、ユニットエコノミクスが霧の中という案件が目立つ。

ブルックスが“トレーニング費は増えるが量産には近づかない”と疑うのは、単なる保守論ではなく、製造・保守・責任分担まで含めた全体設計の未成熟さを突いているからだ。
rodneybrooks.com

これはバブルか? “自動運転の前史”から学べること

2016〜2020年の自動運転バブルを思い出そう。

巨額の調達、見事なデモ、ゆるい実装スケジュール。勝負の真因は安全と責任長尾の運用コストだった。ヒューマノイドも本質は近い。

  • 安全:人と機械の協働で起きうる事故の確率と責任所在。保険・規制と不可分

  • 運用:現場は千差万別。ソフト更新、部品交換、停止時のオペレーションを誰が、いくらで担うのか

  • スコープ:人間汎用の模倣より、限定業務に最適化した形態が早くROIを出す公

現在の資金曲線は前のめりだ。Figureの急騰評価、ApptronikやAgilityの大型調達を見ると、「ユニットが現場で稼いだ時間」に先んじて「期待値に対する値付け」が走っている。

投資マネーの速度と現場の学習速度の乖離が続くと、いつか減速は来る。だが、それは必ずしも“総崩れ”を意味しない。

自動運転と同じく、勝ち残った用途特化の垂直モデルが静かに残り、大義名分としての“ヒト型”は薄まる可能性が高い。
PitchBook+2Reuters+2

スタートアップと投資家の“賢い反応”

短期的に健全なのは、ヒト型の衣装をまとった「現場最適化」だ。

例えば、倉庫での反復ピッキングやパレット周辺業務にスコープを絞り、速度より“平均故障間隔(MTBF)と安全停止”をKPIの主役に据える。
SaaS風に“ロボットの可用時間×成果ベースの課金”へ舵を切れれば、評価はデモ映像ではなく利用率と粗利で語れる。
投資家側は、

①パイロットの第三者検証(作業成功率・停止時間・事故ゼロ記録)
②部品BOMとサプライ網
の実在
責任保険と規制対応の進捗

これらをラウンドごとに条件付きで資金を段階投入すべきだ。
ブルックスの批判へ「実績の透明化」で答えるのが、唯一の正攻法である。
rodneybrooks.com

「データ少佐(スタートレック)」は来るのか

結論から言えば、近未来の工場や倉庫で“データ少佐”に会うことはない

人の手が無意識に行う“すべる・押す・たわむ”の力学は、視覚中心の模倣学習だけでは越えにくい。ブルックスは“動画を見せても器用さは身につかない”と断じ、安全上のハードルも強調する。
だが、夢が完全に潰えるわけでもない。

「人間そっくり」は諦め、非ヒト型の機構で“人間の仕事の一部”を置き換える。その“割り切り”が、投資の勝ち筋になる。
rodneybrooks.com+1

これからの「地に足のついた」見取り図

短期(〜3年)は、限定タスク×限定空間の実運用が増える。

中期(3〜7年)は、車輪ベース+アームのモバイル・マニピュレーションが主役になり、ヒト型の必要条件は後退する。
長期(7〜15年)は、ごく一部の現場で二足歩行が“必要だから採用”される。

順番はこんな感じだろう。
総崩れのバブル崩壊も、SF級の大成功も、どちらも確率は高くない。
最有力は、静かな淘汰と局所的な成功だ。ブルックスの警鐘は、“幻想”を叩くためではなく、現実に通じる投資行動へ寄せるためのメッセージとして読むべきだ。
TechCrunch


参考・出典

  • Rodney Brooks「Why Today’s Humanoids Won’t Learn Dexterity」:現行アプローチでは器用さは身につかない、安全面の懸念。rodneybrooks.com

  • Ars Technica(Benj Edwards):「いまの歩行ロボには隠れた安全課題、動画学習だけでは不十分」とのブルックスの見解。Ars Technica

  • TechCrunch:ヒューマノイドバブルは弾ける、勝つのは“非ヒト型+複腕+特殊センサー”という中長期観。TechCrunch

  • Business Insider / CB Insights:24年の資金は約12億ドル、25年は倍増ペースという市場状況。Business Insider

  • Reuters:Figure AIの6.75億ドル調達、BMWとの提携。Apptronikの3.5億ドル調達。Reuters+1

  • PitchBook:Figure AIが25年に10億ドル超の調達で評価額390億ドルに。PitchBook

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