※本ページはプロモーションが含まれています

今日のAI話

生成AIは「作るほど赤字」?コストが収益を上回る構造を米データで検証

大手テクノロジー企業からスタートアップ、そしてAIモデルを提供する企業まで。生成AIを動かすコストが、それによって得られる収益を上回るペースで膨らんでいる――という指摘が、ここにきて無視できない大きさになってきました。自ら売り込んでいる生成AIを使うコストが、予想以上に高かったというわけです。今回は米国の投資情報・経済専門家・テック関連の情報を集め、忖度なしでこの問題を整理します。

いま何が起きているのか──「作るほど赤字」という逆説

生成AIをめぐる議論は、長らく「どこまで賢くなるか」という性能の話が中心でした。ところが2025年から2026年にかけて、話題の軸はくっきりと「お金」に移っています。性能競争で先頭を走る企業ほど、巨額の赤字を垂れ流しているという、なんとも皮肉な状況が表面化してきたのです。

問題の本質はシンプルです。モデルを動かすための計算資源(コンピュート)が極めて高価で、利用者から得る料金がそのコストに追いついていない。むしろ使われれば使われるほど赤字が膨らむ、という構造があります。OpenAIのサム・アルトマン氏は、月額200ドルのChatGPT上位プランですら赤字だと自ら認めました。理由は「想定よりも皆が使いすぎているから」。笑い話のようですが、これは生成AI全体が抱える病巣を象徴しています。

数字で見る「赤字の規模」

具体的な数字を並べてみましょう。両社とも収益は爆発的に伸びているのに、赤字もまた桁違いに膨らんでいるのが分かります。

項目 OpenAI Anthropic
年間換算の売上規模 急拡大中(広告も2026年に導入) 2026年4月に約300億ドル規模
2026年の見込み損失 約140億ドル 約140億ドル(内部資料)
黒字化の見通し 2030年ごろに後ろ倒し 2027〜2028年に資金収支がプラス見込み

※各種報道・投資情報を基に編集部が整理。数値は推計・見込みを含み、今後変動する可能性があります。

OpenAIは2024年に約50億ドルの赤字を出したとされ、その後も損失幅は拡大が見込まれています。一方のAnthropicは、収益の伸びそのものは「記録的な速さ」と評されるほどで、黒字化の時期はOpenAIより数年早いとの見方もあります。とはいえ、両社とも巨額の赤字を抱えながら走り続けている点は共通しています。

なぜコストが下がらないのか──推論(インファレンス)という底なし沼

「学習(トレーニング)に金がかかるのは分かる。でも一度作れば、あとは安く運用できるのでは?」と思う方も多いはずです。ところが現実は逆でした。コスト問題の主戦場は、モデルを使うたびに発生する推論(インファレンス=学習済みモデルに実際の問い合わせを処理させる工程)のほうにあります。

利用者が増え、1人あたりの利用量が増えるほど、計算資源の消費はそのまま増えていきます。さらに、自律的に考えて動くエージェント型のAIは、単純なチャット応答に比べて1タスクあたりの計算量が桁違いに大きい。つまり、AIが賢く便利になるほど、1回あたりのコストもふくらむ方向に働くわけです。平均的な利用者が消費する計算資源の価値が、その利用者から得る月額料金を上回ってしまう――これが「使われるほど赤字」の正体です。

しかも厄介なのは、新しい世代のモデルが出るたびに、コスト構造が事実上リセットされる点です。前世代でようやく効率を詰めても、次の大型モデルが登場すれば、また膨大な計算資源が必要になる。賽の河原で石を積むような構図が続いています。

「循環取引(サーキュラー・ファイナンス)」というもう一つの爆弾

米国の投資家がいま最も警戒しているのが、業界内でお金がぐるぐる回る循環取引(サーキュラー・ファイナンス)です。ざっくり言うと、こういう構図になっています。

・半導体大手が、モデル提供企業に巨額を出資する

・出資を受けた側は、そのお金で半導体大手のチップを大量に買う

・クラウド大手はモデル企業の主要株主であり、同時に計算資源の販売先でもある

・その売上がまた次のチップ購入へと回っていく

代表例が、半導体大手による生成AI企業への大型出資です。当初は最大1000億ドル規模と報じられ、その資金の多くが結局はチップ購入に充てられる構造でした(その後、規模は見直されたとも報じられています)。あるクラウド大手はモデル企業の約27%を保有し、自社クラウドの主要顧客にもなっています。アマゾンはAnthropicの大口出資者であり、AnthropicはAmazon Web Servicesを主要クラウドとして使う、という関係です。

著名なアナリストはこれを「インターネットバブルの頃の循環取引を思い出させる」と評しました。需要があるように見える数字が、実は身内でお金を回しているだけかもしれない――そうなると、どこか一社でつまずいた瞬間、連鎖的に問題が広がる危うさをはらみます。米議会でも、この構造が金融システムのリスクになりうるとして問題提起する動きが出ています。

導入企業の現実──「95%がROIゼロ」という調査結果

作る側だけでなく、使う側の現実も見ておきましょう。MITの研究グループが2025年に公表した調査は、業界に冷や水を浴びせました。300〜400億ドル規模の投資が行われたにもかかわらず、調査対象企業の約95%が生成AIの取り組みでリターン(ROI=投資対効果)をほとんど得られていない、というものです。

ただし、この数字には冷静な読み方も必要です。報告書が指摘した失敗の主因は、モデルの性能ではなく組織側の「学び方のギャップ」でした。汎用チャットツールは個人には便利でも、企業の業務に合わせて学習・適応しないため定着しにくい。予算の半分以上が営業・マーケ向けに割かれている一方、実際に効果が出やすいのは地味なバックオフィス業務の自動化だった、とも報告されています。さらに、専門ベンダーから導入したケースは約67%が成功し、自前構築は成功率が3分の1にとどまったといいます。

社内SEの立場で見ると、この結果はむしろ腹落ちします。ツールを入れただけで業務が変わるわけがない。どこに効かせるか、どう運用に乗せるかの設計こそが本丸だ、という当たり前の話に行き着くわけです。

それでも強気派が消えない理由

ここまで読むと「やはりバブルで、いずれ弾ける」と感じるかもしれません。しかし、慎重派と同じくらい説得力のある強気派の主張もあります。フェアに両論を並べておきます。

慎重派(バブル警戒)の主張 強気派(まだ早い)の主張
コストが収益を構造的に上回っている 過去のバブルと違い実際の売上と経済効果が出ている
循環取引が見かけの需要を膨らませている 企業のキャッシュフローは1999年の約3倍で耐久力がある
設備投資(キャペックス)が天文学的で回収不能の恐れ データセンター需要は2030年まで年19%超の成長見込み
利用が増えるほど赤字が膨らむ 新世代チップで推論コストは大幅に下がる方向

半導体大手の足元の決算は依然として絶好調で、四半期売上は前年から7割以上伸び、粗利率は7割超という驚異的な水準です。次世代基盤では、推論にかかる1トークンあたりのコストを大幅に引き下げると見込まれています。1回の問い合わせにかかる計算コストは1セント未満まで下がってきており、「コストはいずれ技術で解決する」という見立てにも一理あります。FRBのパウエル議長も、今回は過去のバブルと違って実際の収益と経済的成果が出ている点を指摘しています。

IT小僧の本音コラム──これは「痛手」となるのか?

今回の「コスト超過」は、生成AI業界にとって痛手というより、避けられない通過点だと見ています。
鉄道もインターネットも、インフラを敷いている段階では誰もが赤字でした。先行投資が回収局面に入るまでの時間差は、新しい基盤技術の宿命です。

ただし、楽観はしていません。本当に怖いのは赤字そのものより、循環取引で需要を水増ししている部分です。身内でお金を回して数字を膨らませている割合がどれくらいあるのか、外から見えにくい。ここが想定より大きければ、どこか一社のつまずきが連鎖し、相場全体を巻き込む「痛手」になりかねません。一方で計算資源の値段は確実に下がっていて、技術側の改善スピードは侮れない。つまり勝負は「コスト低下の速度」と「資金が回り続ける時間」の競争です。

我々ユーザー側にできるのは、流行に踊らされず、自分の業務のどこに効くかを冷静に見極めることだけ。MITの調査が示したとおり、ツールを入れただけでは何も変わりません。バブルかどうかの議論は専門家に任せ、現場は「使い倒して元を取る」一点に集中するのが、いちばん賢い立ち回りだと思っています。

まとめ

生成AIのコストが収益を上回る構造は、確かに存在します。OpenAIもAnthropicも巨額の赤字を抱え、推論コストは利用拡大とともに膨らみ、循環取引という金融面のリスクも指摘されています。導入企業の多くがROIを出せていない現実も無視できません。

それでも、これが即「業界の終わり」を意味するわけではありません。実際の収益と経済効果は生まれており、技術によるコスト低下も進んでいます。問われているのは、赤字を技術で打ち消す速度と、資金が回り続ける時間の競争。短期的には強い逆風になりうるが、長期では基盤として残る――そんな両面で捉えるのが、いまのところ最も実態に近い見立てではないでしょうか。

本記事は米国の投資・経済・テック関連の公開情報を基に編集部が整理したものです。数値は推計・見込みを含み、投資判断を保証するものではありません。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

-今日のAI話
-, ,

Copyright© IT小僧の時事放談 , 2026 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.