IT小僧の時事放談
TikTokを去る人たち ― 2025→2026、なぜクリエイターは離れていくのか
「予告なし・理由不明・異議申し立て不可」。4000フォロワーのアカウントを一夜で失った筆者が、TikTokを辞めた人たちの声をSNSから拾い、いま起きている異変を整理する。
先日、約10000フォロワーまで育てた筆者のTikTokチャンネルが、なんの予告もなく突然アクセス不可になった。
心当たりはない。いきなり追いだされたわけで異議申し立ての窓口は機能せず、サポートにもまともに連絡が取れない。打つ手がなかった。フォロワーさんたちとも連絡取れず
正直、アホらしくなって辞めた。
この体験を共有したくてSNS(特にX)やフォーラムを掘っていくと、同じ理由でTikTokを去った人が想像以上に多いことに気づく。本記事では、2025年後半から2026年にかけて「TikTokを辞めた人」が語る不満を集め、何が起きているのかを整理する。結論から言えば、最近のTikTokは明らかに様子がおかしい。
SNSで集めた「辞めた人」の声
投稿をやめた人たちの不満は、大きく4つに集約できた。「収益が労力に見合わない」「フィード(feed=表示画面)が広告と販売だらけになった」「アプリの不具合とリーチ激減」「理由のわからないアカウント停止」。順に見ていく。
「私のFYP(フォー・ユー・ページ=おすすめ表示)、気づいたらShopの広告とカオスなライブ配信ばかり。昨日まで面白かったのに」
「以前は数百ドル稼げた動画が、いまは数ドル。Creator Rewards(クリエイター・リワーズ)はもう死んでるんじゃないか」
理由①:収益が労力に見合わない
TikTokの直接収益は、初期のCreator Fund(クリエイター・ファンド)が再生1000回あたりわずか0.02〜0.04ドルと低く、多くのクリエイターを失望させてきた経緯がある。現在の主力プログラムであるCreator Rewards Programは再生1000回あたりおおむね0.40〜1.00ドルと改善されたが、それでも「views(再生数)の割に薄い」という声は根強い。
追い打ちをかけたのが、2026年1月のアメリカ事業の所有権移行だ。Reutersの報道によれば、ByteDance(バイトダンス)は2026年1月23日、米国側出資者が過半を握る新会社への移行を完了した。新体制はOracle(オラクル)などが出資する合弁で、ByteDanceの保有比率は2割未満とされる。この前後から、米国のクリエイターはRPM(アール・ピー・エム=再生1000回あたりの収益)の急落を相次いで報告。「数百ドル稼げた動画が数ドルになった」という投稿がX・Reddit・TikTok上にあふれた。
一方で、Bloombergが2026年2月に報じた社内データでは、Creativity Program(クリエイティビティ・プログラム)の世界累計支払いは21億ドルを超え、上位1万人の月平均は約8400ドルとされる。つまり「稼げる一部」と「割に合わない大多数」の二極化が進んでいる、というのが実情に近い。多くのクリエイターは、プラットフォーム直接収益を主軸にすること自体に見切りをつけ始めている。
理由②:Shop優先・広告・ライブ販売で「フィードが店になった」
いま最も共感を集めている不満が、これだ。「FYPがShop広告とライブ販売ばかりになった」「広告が連続で6本、ひどいときは20本以上流れる」「タンパク質バーを検索しただけで全部広告」――こうした嘆きがSNS上に大量に投稿されている。エンタメを見に来たはずが、気づけば延々と物を売りつけられている、という体感だ。
背景には、TikTokがコマース(commerce=物販)に大きく舵を切ったことがある。動画やライブ配信からそのまま購入まで完結する「ディスカバリーEコマース」を成長の柱に据え、Shopとライブコマースの露出を強めている。プラットフォームにとっては収益化の本命だが、視聴者にとっては「テレビショッピング化」と映る。クリエイター側も、純粋なコンテンツより販売色の強い投稿が優遇されると感じ、熱が冷めていく。
「広告とライブとShopのセラーばかり。これがTikTok? ただの通販になった」
理由③:アプリの不具合とリーチ激減
2026年1月の所有権移行直後、TikTokは深刻な技術トラブルに見舞われた。同社は米国データセンター(data center)の電源障害に起因する「大規模なインフラ問題」と説明。実際に、再生されているのに表示回数がゼロのまま、読み込みが遅い、投稿時にタイムアウトする、といった不具合が広く報告された。クリエイターからは「アプリ全体が重く、もっさりした」という声も上がっている。
調査会社Sensor Tower(センサー・タワー)によれば、1月22日〜26日のアプリ削除(アンインストール)は直前30日比で約130%増加した。ただし1日あたりの利用者は同期間も2%増えており、「離脱と滞在が同時進行」という複雑な状況だ。なお、一部の米国クリエイターは政治的な投稿の表示抑制を懸念したが、TikTok側はこれを否定し、原因はインフラ障害だと説明している。
不具合そのものより深刻なのは、「ある日突然リーチが消えた」という体験が積み重なることだ。アルゴリズムが変わるたびに数字が乱高下し、努力と結果の因果が見えなくなる。これが、地道に積み上げてきたクリエイターの心を最も折る。
理由④:理由なきBAN・異議申し立てできない
そして筆者自身が食らったのが、これだ。BAN(バン=アカウント停止)の多くは、AIによる自動モデレーション(moderation=投稿審査)が引き金になる。ガイドライン違反の誤検知、複数アカウントからの一斉通報、エンゲージメント(engagement=反応)の不自然な急増を不正と見なす判定――いずれも、本人にはまったく身に覚えがないまま発動する。
問題は停止そのものより、その後の「不透明さ」にある。提示されるのは「コミュニティガイドライン違反」といった曖昧な定型文だけで、どの投稿のどこが問題なのか示されない。これでは異議申し立てのしようがない。30万フォロワー級のクリエイターが、日常を語っただけの配信で「誤情報」を理由に7日間停止された、といった報告すらある。生活がかかっている人ほど、この理不尽は重い。
「予告なし・理由不明・申し立て不可・サポート不通」
この4点セットが揃った瞬間、プラットフォームへの信頼は一気にゼロになる。積み上げた数千フォロワーが、自分の落ち度ではない理由で、説明もなく消える。これに耐えられず去る人は、決して少なくない。
⚠ ファクトチェック:出回っている「ガセ」に注意
調査中、「2026年3月にTikTokがサービス終了する」「M2という新アプリに移行する」「1億人が離脱した」といった投稿を多数見かけた。これらは出どころ不明の拡散情報で、裏付けは取れていない。アカウント移行を促す手口は詐欺の入口になりやすいので注意したい。
本記事で事実として扱ったのは、(1)2026年1月の米国事業の所有権移行、(2)移行直後の技術障害、(3)Sensor Tower等の集計データ、(4)クリエイターによる収益・リーチ低下の証言、までである。SNSの体感と確認済みデータは、明確に分けて読みたい。
日本のTikTok Shopが直面した「厳しい現実」
日本ではTikTok Shopが2025年6月30日に提供開始された。TikTok自身の発表では、開始から年末までのGMV(流通総額)の約7割が動画やライブ配信を起点とした購入だったといい、2026年3月には地域産品を扱う「TikTok Shop Local」も予定されている。数字だけ見れば順調そうだ。
だが現場の温度は違う。日経クロストレンドは、鳴り物入りで始まった日本版Shopが「ロケットスタートに失敗した」と報じ、ある大手食品メーカーの売上がわずか103万円にとどまった事例を伝えている。月間利用者3300万人・18〜34歳が6割という土壌があってもこの結果だ。プラットフォームが推すほどには、ユーザーの財布もクリエイターの熱も簡単には動かない、という現実を示している。
「辞めた理由」早見表
| 辞めた理由 | 具体的な声・データ |
| 収益が薄い | 移行後にRPMが急落。「数百ドル→数ドル」。稼げる一部と割に合わない大多数に二極化 |
| フィードが店化 | Shop広告・ライブ販売が氾濫。「連続で広告20本」「検索しても広告だらけ」 |
| 不具合・リーチ減 | 表示回数ゼロ・読込遅延・投稿失敗。アンインストールが約130%増(Sensor Tower) |
| 理由なきBAN | 予告なし・曖昧な定型文・申し立て不可。AI誤検知や一斉通報が引き金に |
IT小僧のひとりごと
プラットフォームに「家」を建ててはいけない、という鉄則だ。土地は他人のもの。ある日「出ていけ」と言われたら、理由も聞かされず家ごと消える。今回、筆者の4000アカウントがまさにそれだった。腹は立つが、依存していた自分の脇の甘さでもある。
TikTokが物販に舵を切るのは経営判断として理解できる。だが、コンテンツを作る人間を「無料の集客装置」として扱い、説明責任を放棄したまま停止だけ即断するなら、優秀な作り手から順に逃げていく。今まさに、その流れが起きている。
教訓はシンプルだ。フォロワーは「借り物」、メールアドレスや自前サイトは「資産」。次に何をやるにせよ、出口を自分の手元に置いておく。それだけは、もう間違えない。
IT小僧は、自身の経験からTikTokにもどることはないだろう。
残年なのは、フォロワーさんたちと連絡がとれなくなったことで いきなり消えたんで???だろうと思う。
でも もう連絡を取る手段がない
まとめ:プラットフォームは「借りた土地」
2025年後半から2026年にかけて、TikTokを去る人の理由は「薄い収益」「店化したフィード」「不具合とリーチ激減」「理由なきBAN」に集約される。去った人の多くは、YouTube Shorts(ユーチューブ・ショーツ)や別のショート動画サービスへ軸足を移し、収益と読者を複数の場所に分散させている。
大事なのは、TikTokが「終わる」かどうかではない。一つの場所に依存している限り、その場所の都合一つで積み上げた全てが消えうる、という構造そのものだ。発信の出口を自分で握り、移れる準備を常にしておく。理不尽なBANを食らった筆者からの、せめてもの実用的な教訓である。
出典:Reuters、Bloomberg、Sensor Tower(AOL/FOX報道経由)、EURweb、日経クロストレンド、TikTok Newsroom、各種SNS投稿(X・Reddit・フォーラム)の集計に基づく。データと体感は分けて参照のこと。
