「社員の経費はAIが承認」――そんな時代がすでに始まっています。
AIの進化がバックオフィス無人化を可能にする一方で、労働市場には深刻な変化が迫っています。米国では数千万規模の職がAIに影響される可能性が指摘され、日本でもAI導入が職の再構築を促す中、仕事喪失の不安が増しています。
本記事では、AIによる雇用の危機をわかりやすく解説します。
目次
バックオフィス無人化――AIが「仕事」を担う時代
最近、日経クロステックの記事でも取り上げられていたように、「社員の経費申請をAIが自動的に承認する」という事例が報じられています。これは単なる効率化ではありません。経費精算や請求書処理といったバックオフィス業務は、これまで人間が行う典型的な事務作業でした。しかし、AIはこうした定型作業を正確に、しかも高速にこなすようになっています。({turn0search4})
職場の「人手」が機械に置き換わるとき、そこに働く人々はどうなるのでしょうか。AIは単純作業を奪うだけでなく、意思決定やコミュニケーションを要する中程度の作業までも自動化する方向に進んでいます。これが今、雇用市場に大きな不安を生んでいるのです。
米国での雇用リスク――数千万の仕事が影響を受ける可能性
米国の労働市場では、AIが将来的に大量の仕事を消失させる恐れが取り沙汰されています。著名な起業家アンドリュー・ヤンは、「白い襟の仕事を含め数千万人が職を失う可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
さらに、米国の研究機関ブロッキングス・インスティテューションは、約610万人の労働者がAIによって特にリスクの高い職種に分類されていると報告しています。これらは事務職やカスタマーサポートなど、AIの自動化能力と親和性の高い職種です。
また市場予測では、特定のAIシナリオでは失業率が著しく上昇し、金融市場にも不安をもたらす可能性が指摘されています。
このように、米国ではすでにAIの進化が雇用市場に具体的な「波」を投げかけているのです。金融、情報サービス、小売、自動車産業など幅広い分野でAIの導入が進み、職種によっては人間よりもAIの方が安価で確実に作業をこなせるという現実があります。
日本における状況――失職より「再構築」との戦い
日本では米国ほど劇的な職失の懸念はまだ大きく出ていません。
ただし、全国の職種を対象とした研究では、AIやコンピュータ化の進展によって日本の労働人口の約49%の職種が影響を受ける可能性があると示唆されています。
これは日本労働政策研究・研修機構のレポートなどによる分析で、米国の影響推計と同様の数字が示されている点は注目に値します。AIが本格的に活用されると、単純作業だけでなく、専門的な作業や判断を伴う仕事にも影響が出る可能性があります。
もっとも、日本の場合、少子高齢化や労働力不足という構造的な要因もあり、AIは「人手不足の代替」として導入される面もあります。一方で、人手不足を補うAIが逆に人間の雇用機会を狭めるという皮肉な状況も起こり得るのです。
仕事は奪われるだけではない――新たな価値創出の可能性
ただし、すべてが悲観的なわけではありません。OECDや労働経済の研究では、AIが仕事を消す一方で新しい仕事を生み出す側面もあると指摘されています。複数の研究では、完全に失業につながる職種はごく一部であり、多くの作業はAIが代替した後も、人間とAIが補完し合う可能性があるとされています。(
とはいえ、ここで強調したいのは、**人が働く意味そのものが変わる可能性が高いということです。** 単純作業はもちろん、一部の専門職もAIに取って代わられるかもしれませんが、そのとき私たちはAIとの共存の仕方を学ばなければなりません。
労働者はどのように備えるべきか?
AI時代の雇用変化に備えるには、以下の点が重要です。
まず、単純作業や定型的なオフィスワークはAIに置き換わりやすいため、教育やスキルのアップデートが不可欠です。特に、データ解析やAIとの協調作業、創造性を要する領域はAIが苦手とする部分でもあり、これらのスキルは将来の価値を保つ可能性が高いと言われています。
また、人間らしい判断やコミュニケーション、倫理判断のような領域はAIが模倣しにくい領域であり、これらを重視する仕事の価値は相対的に高くなると予想されます。
まとめ:AIが仕事を奪う現実、その先にある未来
AIの普及は不可避です。バックオフィスの経費精算がAIで完結するようになったことは、効率化の一例であり、これからさらに多くの業務がAI化される可能性を示しています。しかし、これは単なる「作業の機械化」ではありません。雇用構造そのものが変わる可能性があり、多くの人が再教育やスキル転換を迫られる時代がすでに始まっています。
米国では数千万規模の雇用リスクが指摘され、日本でも専門職を含む多くの職種がAIの影響を受ける可能性があります。私たちはこれまでとは違う働き方を模索しなければなりません。AIに仕事を奪われるのではなく、AIと共に新しい価値を創造する時代への移行が求められているのです。