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IT小僧の時事放談

TikTok米国事業は「米国側の手」に:USDS合弁で継続へ──これまでの経緯と日本への波及

「TikTokは米国で禁止されるのか?」という数年越しの騒動が、ついに“米国主導で運営を続ける”という形で決着に近づきました。

米国では新会社(合弁)がデータ保護・アルゴリズム管理・モデレーションまで握る一方、日本では「収益が消えた」といった不安も拡散しています。

いま何が起きていて、どこまでが事実で、これから何が変わるのか。米国・中国・日本の情報を突き合わせて整理します。

 

米国のTikTokは「米国主導の運営体制」で継続へ

2025年12月18日、TikTok(親会社ByteDance)が米国での事業継続に向け、米国投資家グループ主導の新たな枠組みに合意したと報じられました。TechCrunchが確認した社内メモでは、新会社「TikTok USDS Joint Venture LLC」が米国アプリ運営の中核(データ保護、アルゴリズム安全性、コンテンツモデレーション等)を担い、Oracleが“信頼できるセキュリティパートナー”として監査・検証に関与するとされています。 TechCrunch

この枠組みは、米国政府が「外国勢力の影響下にあるアプリ」を問題視してきた論点(データ、アルゴリズム、運営意思決定)を、米国内の統治構造に寄せて解決しようとするものです。ホワイトハウス側の文書も、アルゴリズムとコード、モデレーションの意思決定を新JV側に置き、米国のクラウド上で敏感データを管理し、監視と再学習(retrain)を求める方針を明記しています。 The White House


これまでの米国とTikTokの経緯

ポイントだけ押さえると、米国の議論は一貫して「国家安全保障」と「支配(control)」の問題でした。

2020年:トランプ政権下で取引禁止や売却要求の動きが強まり、法廷闘争も発生(複数年にわたり“政治案件”化)。 TechCrunch
2024年:米国でいわゆる“divest-or-ban(売却か禁止か)”型の法律が成立し、ByteDanceに米国事業の「適格な譲渡」を求める枠組みが固まります。 Congress.gov
2025年初頭:米国内で一時的な停止・混乱が発生したとTechCrunchが整理(ユーザーが政治判断に振り回される状況が続く)。 TechCrunch
2025年9月:ホワイトハウスが枠組み合意(Framework Agreement)に基づく「適格な譲渡」認定の考え方を提示。新JVにアルゴリズム/モデレーション等を移し、外国勢力の“支配”を断つというロジックが明文化されます。 The White House
2025年12月18日:投資家連合(Oracle、Silver Lake、MGX等)との“拘束力ある合意”が報道され、実行フェーズへ進んだ形です。 Reuters+2The Verge+2


米国内TikTok事業の「譲渡内容」

今回の報道で重要なのは、「アプリを動かす実務」と「影響力の源泉」がどこに置かれるかです。

新会社は「TikTok USDS Joint Venture LLC」とされ、米国アプリの運営に関わる中枢機能(データ保護、アルゴリズム安全性、コンテンツモデレーション、ソフトウェア保証など)を担うと説明されています。 TechCrunch+2The Verge+2
出資比率は報道により表現が異なりますが、ByteDanceの持分が19.9%に抑えられ、残りを米国・グローバル投資家側が持つ設計が共通しています(法律上の上限を意識)。 Reuters+2The Verge+2
Oracle・Silver Lake・MGXが主要投資家で、TechCrunchのメモでは3社合計45%とされています。一方で、その他投資家や既存投資家の持分を含めて“非ByteDance側が過半〜80%超”という報道も出ています。つまり「中核は米国側主導、ByteDanceは上限未満で関与」というのが実態に近い理解です。 TechCrunch+2Reuters+2
ホワイトハウス文書は、アルゴリズム/コードとモデレーション意思決定を新JVの統制下に置き、米国企業のクラウドでデータを管理し、信頼できるパートナーによる監視やモデル再学習を求めています。 The White House

また、取引のクローズ時期は「2026年1月22日」と複数報道で言及されています。 AP News+2The Verge+2


米国内でTikTok継続となる影響

この合意が米国内にもたらす影響は、「禁止の回避」だけではありません。大きくは3つです。

第一に、広告主・クリエイター・利用者の“事業継続リスク”が一段下がります。ホワイトハウス文書自体が、米国の利用者(約1.7億人)と、生活がかかったクリエイター、広告に依存する事業者の存在を前提に「継続と安全保障の両立」を掲げています。 The White House

第二に、TikTokの競争力の核である「推薦アルゴリズム」が、米国の監視・統制下に置かれる方向が強まります。報道では、Oracleが“trusted security partner”として監査・検証に関与し、アルゴリズム面でも安全保障条件に沿う運用が想定されています。 Reuters+2TechCrunch+2

第三に、米中のテック覇権・データ主権の文脈で「アプリの国籍」をどう定義するか、という前例になり得ます。表向きは“売却”でも、利益配分や技術ライセンスの扱いなど、実務は複雑になりやすい。ここが今後、議会や規制当局、そして中国側の承認プロセスで論点になり続ける可能性があります。 Reuters+1


日本はどうなる?「収益が消えた噂」と今後の現実的シナリオ

日本で広がった「日本人アカウントの収益が消失している」といった噂については、少なくとも2025年12月時点で確認できる範囲では、“政治的な制裁”というより「収益化プログラムのシステム不具合」が原因だった、という説明が公式発表(TikTok Japanの告知)として報じられています。

報道によれば、対象は12月4日〜10日ごろで、Creator Rewards Programのシステムエラーにより一部クリエイターの報酬が正しく支払われない事象が発生し、エラーは修正済み、影響動画は順次審査・対応、謝罪──という流れです。 スポニチ Sponichi Annex+1

ここから先の「日本がどうなるか」は、事実と見立てを分けて考えるのが安全です。

事実として言えること

米国での事業再編は、主に「米国の国家安全保障要件に合わせた統治構造」の話です。ホワイトハウス文書も、米国ユーザーデータ、米国のアルゴリズム運用、米国での監視・検証を中心に設計されています。 The White House+1
したがって、日本のTikTokが直ちに“米国仕様に置き換わる”と断定できる公式情報は、現時点では見当たりません(少なくとも今回の合意報道の主題ではない)。

今後 起こり得る話

一方で、米国が巨大市場である以上、プロダクト運用の都合で“米国だけ別建て”が進むと、間接的に日本にも波及し得ます。たとえば、広告配信の仕組み、レコメンドの評価指標、モデレーション運用、クリエイター向けプログラムの仕様が「地域ごとに差が広がる」可能性はあります。
ただし、これは「米国の再編=日本の収益が消える」という直結の話ではなく、むしろ各国がデータやアルゴリズム統制を強める流れの中で、地域別のルール運用が増える、という方向の変化です。

日本のクリエイター側の実務としては、噂のような“一斉消失”よりも、(1) 収益化プログラムの仕様変更、(2) 審査/判定ロジックの調整、(3) 一時的な不具合、の方が現実的に起きやすいタイプのリスクです。今回の件も、報道ベースでは(3)に近い整理になります。 スポニチ Sponichi Annex+1


まとめ:米国は「継続のために分離」、日本は「噂より公式確認」が最優先

米国のTikTokは、禁止回避のために“米国主導の統治構造”へと大きく舵を切りました。新JV(TikTok USDS)がデータとアルゴリズム、モデレーションまで担うことで、「支配の切り離し」を形にするのが今回の合意の骨格です。 The White House+2Reuters+2

一方、日本で不安が広がった収益の話は、少なくとも12月上旬のケースについては「システムエラー」で説明され、修正と対応が進むとされています。
噂が先行しやすいテーマだからこそ、日本では“海外政治ニュース”よりも、TikTok Japanの告知や、一次情報に近い報道で事実確認を積み上げるのが結局いちばん強い。
スポニチ Sponichi Annex+1

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