大規模災害が発生したとき、スマートフォンのバッテリーが切れることは「情報難民」になることを意味する。その問題に、日本の通信4社とモバイルバッテリーメーカー7社が本格的な連携で挑む。2026年5月18日に締結された連携協定と、6月1日からスタートする具体的な取り組みを詳しく解説する。
📋 目次
- 連携協定の概要と背景
- 参加企業11社の一覧
- 具体的な役割分担の仕組み
- 「つなぐ×かえるプロジェクト」とは
- 能登半島地震が出発点──各社が抱えていた課題
- 今後の展望
- まとめ
連携協定の概要と背景
2026年5月18日、NTTグループ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの通信事業者4社と、モバイルバッテリーメーカー7社の計11社が、「大規模災害発生時における被災地への電源確保に関する連携協定」を締結した。
協定に基づく取り組みは2026年6月1日に正式スタートする。災害発生時にモバイルバッテリーや充電ケーブルなどを被災地の避難所へ迅速に届けるための、官民横断型の供給チェーンが構築される。
これまで各バッテリーメーカーは被災地支援を個別に実施してきたが、「どこに届ければいいかわからない」「受け入れ先がわからない」という問題が繰り返し発生していた。今回の協定は、通信キャリアが持つ全国の拠点ネットワークと物流体制をメーカーが活用することで、この構造的な課題を解消する狙いがある。
参加企業11社の一覧
本協定に参加する11社は以下の通りだ。
📡 通信事業者(4社)
| 企業名 | グループ |
| NTT(株)技術開発部門 ほか | NTTグループ |
| KDDI(株) | auブランド |
| ソフトバンク(株) | ソフトバンクブランド |
| 楽天モバイル(株) | 楽天ブランド |
🔋 モバイルバッテリーメーカー(7社)
| 企業名 | 主な製品・サービス |
| アンカー・ジャパン(株) | Ankerブランドのモバイルバッテリー・ポータブル電源 |
| (株)INFORICH | ChargeSPOT(シェアリング充電)サービス |
| EcoFlow Technology Japan(株) | 大容量ポータブル電源・ソーラーパネル |
| エレコム(株) | モバイルバッテリー・周辺機器 |
| (株)オウルテック | モバイルバッテリー・スマホアクセサリー |
| (株)CIO | USB充電器・モバイルバッテリー |
| (株)ユーグリーン・ジャパン | UGREENブランドの充電アクセサリー |

通信4キャリアとモバイルバッテリーメーカー7社の11社が連携協定を締結した
具体的な役割分担の仕組み
この連携協定では、各主体の役割が明確に定義されている。単なる「物資提供の約束」ではなく、調達・物流・情報発信までをカバーした実効性の高いサプライチェーンだ。
🏭 バッテリーメーカー各社
- モバイルバッテリー・充電ケーブルの調達
- 使用方法・問い合わせ先・返却方法を記載したチラシの作成
- 通信キャリアの拠点へ支援物資を配送
- 自社Webサイトで支援状況を共通様式で公開
📡 通信事業者4社
- 自社拠点で機材を一時保管
- 被災状況・要望に応じて避難所等へ配送
- 既存の全国支援ネットワークを活用
- エリア分担で重複・漏れを防止
機材の種類と数量は、被災地の要望や被災状況、各社の在庫状況などを踏まえてその都度決定される。「何台届けた」といった支援状況は各メーカーのWebサイトで共通フォーマットにより透明化されるため、被災者側も情報を把握しやすくなる。
「つなぐ×かえるプロジェクト」とは
今回の連携の母体となっているのが、通信4社が参画する「つなぐ×かえるプロジェクト」だ。
💡 「つなぐ×かえるプロジェクト」のポイント
- 普段は競合する通信4社が災害時に協調する枠組み
- 各社が避難所ごとにエリアを事前分担し、支援の重複・漏れを防止
- 2025年11月に本格運用開始
- 今回、このフレームワークにバッテリーメーカー7社が新たに参画
能登半島地震では、各社が独自に動いた結果、同じ避難所に複数社が重複して入る一方で、支援が届かない避難所も発生するという問題があった。NTT技術企画部門災害対策室の倉内努室長は「競争よりも協調。災害時はいかに早く支援を届けられるかが根っこにある」と語っている。
能登半島地震が出発点──各社が抱えていた課題
この協定の直接的な出発点は能登半島地震(2024年1月)での経験だ。各メーカーの担当者は次のような現場の課題を明かしている。
| 企業名 | 現場での課題・コメント |
| アンカー・ジャパン | 「配送先が見つからない・被災者が支援物資を見つけられない」という問題が繰り返し発生 |
| エレコム | 熊本豪雨・能登半島地震でモバイルバッテリーを2,000台供給したが「供給方法に苦労した」 |
| オウルテック | 「1市町村と連携協定を締結しても、なかなか広がらない」 |
| INFORICH | 災害地域の充電スタンドで48時間の無料レンタルを実施するも、周知に課題 |
メーカー単独では「物資を届けたいが手段がない」、通信キャリア単独では「電源確保の物資が足りない」という非対称な課題が存在していた。今回の協定はその補完関係を制度化したものといえる。
今後の展望
今後は以下の取り組みが予定されている。
🏋️ 合同訓練の実施
11社が参加した実動訓練を実施し、連携の精度を高める。
🤝 連携事業者の拡大
他のバッテリーメーカーや関連企業の参画を促進し、供給力をさらに強化する。
📊 情報発信の共通化
各メーカーWebサイトでの支援状況の共通様式公開を継続・改善する。
また、2026年4月からは通信4社によるJAPANローミングも開始しており、「電波」と「電源」の両面で被災地支援の基盤が整備されつつある。
まとめ
今回の連携協定は、「競争から協調へ」という発想の転換が生んだ実践的な災害対策だ。ポイントを整理する。
✅ この協定の重要ポイント
- 通信4社+メーカー7社の計11社が「大規模災害発生時における被災地への電源確保に関する連携協定」を締結
- 2026年6月1日より正式始動
- メーカーが物資を調達・提供し、キャリアの物流網で被災地へ届ける役割分担
- 既存の「つなぐ×かえるプロジェクト」に乗る形でエリア分担による効率化を実現
- 能登半島地震での課題を踏まえた実効性重視の仕組み
スマートフォンが生活インフラとなった現代において、被災地での電源確保は通信手段の確保と同義だ。今後の合同訓練や連携拡大を経て、この枠組みが次の大規模災害時に機能することが強く期待される。