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IT小僧のブラック時事放談

ソフトウェア業の倒産が過去10年で最多!IT好況なのに倒産増える「矛盾」の正体

2026年3月13日

「案件は増えているのに、会社が潰れていく」――日本のIT業界で今、そんな矛盾した現象が起きています。帝国データバンクの調査によると、2024年度のソフトウェア業の倒産件数は220件と過去10年で最多を記録。さらに2025年度も同ペースで推移しており、構造的な問題が一気に噴き出しています。DXブームで需要は旺盛なのに、なぜ中小ソフトウェア会社は次々と倒産するのか?本記事では、最新データと業界の構造問題を深掘りし、日本のソフトウェア産業の今とこれからを徹底解説します。

1. 2024〜2025年のソフトウェア開発会社の倒産件数と負債額

過去10年で最多を更新した衝撃の数字

帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)の両調査機関が公表した最新データによると、ソフトウェア業界の倒産は急増の一途をたどっています。

220件
2024年度(TDB調べ)
前年度比 1.4倍
223件
2024年(TSR調べ)
2015年以降 最多
195件
2025年度(2月末時点)
過去最多ペース継続中

2024年度(2024年4月〜2025年3月)のソフトウェア業の倒産件数は220件に達し、前年度の154件から1.4倍に増加しました。過去10年間で初めて200件を超え、3年連続で増加する結果となっています。

情報通信業全体で見ると状況はさらに深刻です。2024年の情報通信業の倒産は425件(前年比21.7%増)で、2013年の450件以来、11年ぶりに年間400件を超えました。業種別ではソフトウェア業が223件(前年比12.0%増)で最多となり、全体の52.4%を占めています。

倒産企業の規模と負債額の特徴

📊 倒産企業の規模別データ(2024〜2025年度)
区分 割合・件数 特徴
従業員10人未満の企業 全体の8割以上 小規模事業者の淘汰が顕著
負債額1億円未満 84.6%(165件) 零細・中小規模が中心
資本金1千万円未満 258件(情報通信業全体) 前年比30.9%増
パッケージソフトウェア業 38件(2025年度) 2000年度以降で最多の見込み

出典:帝国データバンク「ソフトウェア業の倒産動向(2024年度・2025年度)」、東京商工リサーチ(2025年1月)

受注環境は良好な状態が続くものの、「ソフト受託開発」では多層的な業務委託構造による価格転嫁の難しさ、「パッケージソフトウェア業」では収益の資金化までの期間が長いという課題があるなか、慢性的な人手不足による人件費の高騰が小規模事業者への負担となっています。

倒産した企業には、ゲームやスマートフォンアプリなど、流行の影響を受けやすい分野の開発会社も一定数含まれました。また、人流分析やPOSシステムなど実店舗向けサービスでは、コロナ禍による需要減に加え、コロナ後の人手不足や開発費の上昇が重なり、経営が行き詰まるケースも目立ちました。


2. ソフトウェア開発会社の現状

「好況」と「倒産増」という矛盾した現実

表面上、ソフトウェア業界は好況です。DX推進やAI活用への投資需要は過去最高水準を維持しており、大手ITベンダーは軒並み好業績を報告しています。

⚠️ 業界は好調なのに、なぜ倒産が増えるのか?
景気感を示す「情報サービス業の景気DI」は2021年10月以降「良い」とされる50以上を継続維持。需要は旺盛なはずなのに、倒産件数は右肩上がり。この矛盾が問題の本質を示しています。

大企業と中小企業の収益格差が鮮明に

2023年度の企業規模別の営業利益率を見ると、大企業と中堅企業が11%台に対し、中小企業は5.7%にとどまっています。赤字企業率も大企業が4.8%、中堅企業が12.7%に対し、中小企業は22.0%で、唯一赤字企業率が上昇しています。

大手ITベンダーがDX需要などを背景に2025年3月期も好調な業績を維持する一方で、中小ITベンダーが苦しんでいます。倒産したソフトウェア業の中でも最も大きな割合を占めるのが、受託開発ソフトウェア業です。TSRの調査で223件のうち209件、TDBの調査で189件のうち160件を受託開発が占めています。

ユーザー企業「内製化」の加速という新たな波

中小ITベンダーの倒産増加の原因として、ユーザー企業における内製化の進展も挙げられています。大口のユーザー企業との取引契約解消に伴う販売不振で倒産した中小ITベンダーも見られ、その背景にはユーザー企業の内製化の進展があると見られています。


3. 人手不足が原因か?

全業種でトップの「72.2%」という衝撃

人手不足の問題は、ソフトウェア業界にとって最も深刻な課題のひとつです。

🔍 情報サービス業の人手不足状況

帝国データバンクの調査では、「情報サービス業」で正社員の人手不足を感じている企業の割合は2025年3月時点で72.2%に達し、全業種でトップとなっています。

また、IT人材の求人倍率は全職種平均(1.25倍)をはるかに超える水準で推移しており、人材確保競争は年々激化しています。

出典:帝国データバンク「ソフトウェア業の倒産動向(2024年度)」2025年4月

人手不足が招く「悪循環」のスパイラル

人手不足は単に「採用できない」だけの問題ではありません。次のような悪循環を引き起こしています。

人手不足の悪循環サイクル

① 人手不足 → 案件の受注が困難になる

② 人材教育に時間が割けない → 高度な案件に対応できる人材が育たない

③ 高度な案件を受注できない → 単価・利益が低下

④ 賃上げ原資が確保できない → さらに人材が流出

⑤ 最終的に資金繰り悪化 → 倒産へ

人件費高騰が中小企業を直撃

人手不足は人件費の高騰を招き、小規模事業者を中心に大きな影響が生じています。「情報サービス業」における月の所定内給与は2024年平均で37万4,377円となり、全業種平均の26万2,325円を大きく上回っています。大企業を中心にAIやデータサイエンスなど高度なスキルを有するデジタル人材に対して高額な報酬が提示される事例が増加しており、新卒社員で年収1,000万円を上回るケースもあるといいます。

2030年問題:さらなる悪化が見込まれる未来

経済産業省の予測では、2030年までに最大約79万人のIT人材が不足する見込みです。レガシーシステムによく採用されているCOBOLなどの古いプログラミング言語を扱えるエンジニアの多くが定年を迎え、システム更新の遅れが企業の競争力低下につながると危惧されています。

IPAの「DX動向2025」によれば、日本企業の85.1%でDXを推進する人材が不足していることが示されており、これは米国・ドイツと比べて著しく高い水準となっています。


4. 多重下請け問題の現状

「ITゼネコン」構造の実態

日本のIT業界の構造は建設現場と非常に似ています。まず元請けの有名な大手企業があり、そこから一次請け、二次請け、三次請けという形で多重下請け構造が基本となっています。この構造が中小ソフトウェア企業の経営を圧迫する根本原因のひとつです。

📉 多重下請け構造が生み出す「中間マージン搾取」の実例
階層 単価(1人月) 特徴
ユーザー企業(発注元) 200万円〜 要件定義・予算決定
一次請け(大手SIer) 150万円 上流工程・プロジェクト管理
二次請け(中堅SIer) 80〜100万円 設計・一部開発
三次請け(中小企業) 50〜70万円 開発・テスト
四次請け以下(零細) 30万円以下 実装・デバッグ(最前線)

※業界の一般的な事例をもとに作成。実際の単価は案件・スキル・地域により異なります。

一次請けで1人150万円で請けた仕事であっても、末端の会社では1人30万円の売上にしかならないといった事例も現実に存在します。末端企業は開発の最前線を担いながら、賃上げ原資も残らない状況に追い込まれているのです。

多重下請けが引き起こす3つの問題

多重下請け構造の問題点は、プロジェクトで問題が発生した際の責任の所在がわかりにくくなったり、より深い階層の労働環境が悪くなったりする傾向にあることです。下請け企業への再委託が増えるほど中間マージンが発生するため、下の階層に行くほど受け取る利益は少なくなり、そこで働く労働者の賃金にも影響が出ています。

この構造は技術的負債の温床となり、エンジニアのスキル向上意欲を削ぎます。開発ノウハウは顧客企業ではなくSIerに偏在し、多重下請け構造の中で断片化するため、自社内にナレッジが蓄積されません。OECD加盟38カ国中30位という日本の労働生産性の低さも、こうしたIT産業の構造的課題と無関係ではないと指摘されています。

受託開発の倒産件数が特に増加

受託開発では、大手企業からその他の企業へ仕事が再委託される多層構造になりやすく、下流工程を担う中小・零細事業者は価格交渉で不利になりやすい傾向があります。その結果、十分な賃上げの原資を確保できず、人手不足による受注減や開発頓挫などが発生し、資金繰りが悪化して倒産に至るケースが増えています。


5. 日本のソフトウェア産業の今後と将来

「2025年の崖」から「2027年問題」へ

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、2025年までにIT人材の不足は約43万人まで拡大し、大企業の旧来の基幹系システムの導入年数が21年以上経過した割合は約6割になると指摘されていました。

その後、SAP ERPのサポートが2年間延長されたことで、現在では「2027年問題」として認識されています。レガシーシステムの刷新という課題は先送りされたに過ぎず、本質的な問題は解決されていません。

経済産業省の推計によると、生成AIの導入によって業務の質を向上させることで、各産業において生産額が向上する余地があり、日本全体では約148.7兆円の潜在的価値を引き出せる可能性があるとされています。また、2030年度には海外デジタルサービスへの依存による赤字が原油輸入額を超える約10兆円まで拡大するおそれもあり、国産デジタル基盤の強化が急務とされています。

「小規模事業者の淘汰」が続く近未来

帝国データバンクは「当面は、小規模事業者を中心に人手不足を起因とした倒産が高水準で推移することが見込まれる」と分析しています。

一方で、大手IT企業や高度スキルを持つ企業にとってはむしろ追い風になる面もあります。市場の二極化が進み、「強者はより強く、弱者は淘汰される」構造が定着していく見通しです。

AIがもたらす産業の構造変化

2030年に向かうITと企業組織の変化は、AI導入の進展だけでなく、人材・組織の変革スピードによって成否が左右される局面に入っています。AIは医療・金融・製造など多様な産業で深い変革をもたらし、AIエージェントの台頭は企業に自律型の組織運営をもたらすと予測されています。

経済産業省は2030年度までの7年間で10兆円以上のAI・半導体支援を実施する方針を打ち出しており、日本のデジタル産業の国際競争力強化に向けた大規模投資が始まっています。


6. 解決策はあるのか?

問題は構造的・複合的であり、一朝一夕には解決できません。しかし、各方面で対策の動きが出始めています。

✅ 解決策①:多重下請け構造の是正

経済産業省は対策の一つとして、契約書の「ひな型」(情報システム・モデル取引・契約書 第二版)にて丸投げを禁止する旨を記載しており、再々委託を禁止する大手・中堅SIerも増えています。ただし、法律上の強制力はなく、業界全体への浸透はこれからという段階です。

✅ 解決策②:AIとローコード開発による生産性革命

生成AIとローコード・ノーコード(LCNC)がもたらす生産性革命により、LCNCの市場規模は2025年度には1,000億円を超えると予測されています。これにより、少ない人数でも高い生産性を実現できる体制が整いつつあります。GitHub CopilotやCursorなどのAIコーディング支援ツールは、ソフトウェア開発コストを大幅に削減する可能性を持っています。

✅ 解決策③:リスキリング・人材育成の強化

世界経済フォーラム(WEF)の「仕事の未来レポート2025」では、2025〜2030年に世界で現在の総雇用の14%に相当する新規雇用が創出され、AI・データ関連職種がそれを牽引すると予測されています。スキル面ではAI、ビッグデータ、サイバーセキュリティの需要が伸び、分析的思考やリーダーシップなどのヒューマンスキルも依然として重要度が高いとされています。未経験者でも数ヶ月〜1年で戦力化できる育成体制の構築が急務です。

✅ 解決策④:ニッチ特化・高付加価値への転換

特定業種(医療・製造・物流など)や特定技術(生成AI・セキュリティ・クラウド)に特化し、多重下請けの末端ではなく「その分野の専門家」としてポジショニングすることで、価格競争から脱却できます。低単価・汎用サービスからの脱却が生き残りの鍵です。

✅ 解決策⑤:海外人材・グローバル展開の活用

国内のエンジニア不足を補うために、ベトナム・インドなどアジア各国からの外国人エンジニアの活用が拡大しています。また、日本のソフトウェア企業が海外市場に直接参入し、多重下請けに依存しないビジネスモデルを構築するケースも増えています。


7. まとめ

📌 この記事のポイント整理

  • ソフトウェア業の倒産は2024年度に220件と過去10年で最多。2025年度も同ペースが続いている。
  • 倒産の8割以上が従業員10人未満の小規模事業者。負債額1億円未満が全体の約85%を占める。
  • 業界全体の需要は旺盛だが、大企業と中小企業の格差が急拡大している。
  • 最大の要因はSE・エンジニアの人手不足(情報サービス業で72.2%が不足感)と人件費高騰。
  • 多重下請け構造により、下流企業ほど利益が圧縮され賃上げ原資が枯渇する悪循環が続いている。
  • 2030年までにIT人材不足は最大79万人に達する見込み。構造問題は短期には解決しない。
  • 生成AI・LCNC・リスキリング・特化戦略など、複合的な対策が生き残りの鍵を握る。

日本のソフトウェア産業は今、まさに「好況の嵐の中で沈む船」とも言える状況にあります。需要があるのに、人材がいない。人材を採ろうとすると、賃上げ原資がない。原資を確保しようとすると、多重下請けの構造が立ちはだかる――こうした複合的な問題が一気に表出したのが、今の倒産ラッシュの正体です。

AIやDXの波は確実に産業を変えます。その変化に適応できた企業と、そうでない企業との格差はさらに拡大するでしょう。特に中小ソフトウェア企業にとっては、「今の仕事の延長線上」ではなく、業態・ビジネスモデルの根本的な変革が問われる時代が来ています。

「当面は、小規模事業者を中心に人手不足を起因とした倒産が高水準で推移することが見込まれる」
― 帝国データバンク 分析コメント(2026年3月)

この厳しい現実から目を背けることなく、業界全体・政府・企業が連携して構造改革に取り組むことが、日本のソフトウェア産業の未来を切り開く唯一の道と言えるでしょう。


【参考資料】
・帝国データバンク「ソフトウェア業の倒産動向(2024年度)」(2025年4月23日)
・帝国データバンク「ソフトウェア業の倒産動向(2025年度、2月末時点)」(2026年3月9日)
・東京商工リサーチ「情報通信業の倒産 11年ぶり400件超」(2025年1月29日)
・経済産業省「デジタル社会の実現に向けて」(2024年10月)
・経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」(2025年12月)
・IPA「DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成」
・日経クロステック「ソフトウエア業の倒産が過去10年で最多」(2025年2月)
・ITmedia ビジネスオンライン「好況なはずのソフトウェア業界で倒産増」(2026年3月12日)

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