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IT小僧の時事放談

テレビは「放送を見る装置」ではなくなった 視聴シフトの実態について

日本では地上波テレビ離れが進み、スマホやタブレットで動画を視聴する行動が日常化している。

さらに最近では、テレビのリモコンに NetflixYouTube の専用ボタンが標準搭載されるようになり、テレビは「テレビ局の番組を見る装置」から「動画サービスを見る大画面端末」へと役割を変えつつある。

同様の変化は米国でも起きている。Gigazineが紹介した記事では、YouTubeを昼間の時間帯にテレビで視聴する人が急増していることが指摘されており、テレビ視聴の意味そのものが再定義され始めている。

本記事では、米国と日本それぞれの調査データをもとに、「テレビで動画サービスを見ている人はどれくらいいるのか」を整理し、その背景と今後を考える。

テレビは本当に見られなくなったのか

日本では「テレビ離れ」という言葉が定着して久しい。若者はテレビを見ず、スマホやタブレットで動画を視聴する──そんなイメージが広く共有されている。一方で、現実はもう少し複雑だ。
テレビの電源が入らなくなったわけではない。テレビで見られる“中身”が変わったのである。

近年のテレビリモコンには、NetflixYouTube の専用ボタンが標準搭載されている。これは象徴的だ。テレビメーカー自身が、テレビの主用途を「放送視聴」ではなく「動画サービス視聴」に見定めている証拠でもある。


米国:テレビ視聴の主役はすでにストリーミング

米国ではこの変化が数字としてはっきり表れている。視聴率調査会社 Nielsen のデータによると、2025年にはテレビ視聴全体に占めるストリーミングの割合が約45%前後に達し、地上波放送とケーブルテレビを合算した視聴時間を初めて上回った。

これは「テレビを見なくなった」のではない。テレビ画面で、放送以外を見ている時間が圧倒的に増えたという意味だ。
テレビは依然として家庭の中心にあるが、映し出されるのはニュース番組ではなく、動画プラットフォームのコンテンツになっている。

アメリカではテレビの視聴時間の半分近くを「配信」が占めていてYouTubeは全体の11.6% - GIGAZINE


YouTubeが“昼のテレビ”になった理由

Gigazineが紹介した記事で特に注目されたのは、YouTubeが昼間の時間帯にテレビで大量に視聴されているという点だ。
従来、昼間のテレビ視聴は主婦層や高齢者向け番組が中心だった。しかし現在は、テレビ画面でYouTubeを流しながら作業をしたり、BGM代わりに長時間再生したりする利用が増えている。

YouTubeはもはや「スマホで短時間見る動画サイト」ではない。
ニュース、解説、ライブ配信、子ども向け番組まで網羅することで、テレビ局が担ってきた役割を部分的に代替する存在になっている。

この結果、YouTube単体でテレビ総視聴時間の1割以上を占める月も珍しくなくなり、米国では**「テレビ=YouTubeを見る画面」**という感覚が急速に広がっている。


日本:テレビ離れは“放送離れ”だった

日本でも似た現象が起きている。ただし米国よりも進行は緩やかだ。
日本の調査では、10代・20代の若年層において、ネット系動画の視聴時間がテレビ放送の視聴時間を上回る傾向が明確に示されている。

ここで重要なのは、「テレビを所有していない」わけではない点だ。
若年層の多くはテレビを持っているが、地上波をほとんど見ず、テレビでYouTubeやNetflixを起動するという使い方をしている。

つまり日本のテレビ離れも、実態としては
テレビそのものではなく、テレビ局の番組からの離脱に近い。


なぜ日本でも「テレビ×動画」が伸びるのか

一見すると、日本はスマホ視聴が中心に見える。しかし実際には、

  • 家では大画面で見たい
  • 長時間の視聴はテレビが楽
  • 家族で共有しやすい

といった理由から、動画サービスをテレビで再生する行動が増えている

特にYouTubeは、テレビ向けUIの改善やレコメンド精度の向上により、「流しておく」視聴に適した存在になった。Netflixなどのサブスクリプション型サービスも、連続視聴を前提とした設計がテレビ視聴と相性が良い。

結果として、日本でも

テレビをつける=地上波を見る
ではなく、
テレビをつける=動画サービスを選ぶ
という行動が定着しつつある。


米国と日本の違い、そして共通点

米国と日本の最大の違いはスピード感だ。米国ではすでに、テレビ視聴の中心が完全にストリーミングへ移行しつつある。一方、日本では放送視聴も一定の存在感を保っている。

しかし共通しているのは、
テレビが「放送の受信機」から「動画プラットフォームの表示装置」へ変わったという点だ。

テレビは死んでいない。むしろ、

  • 最大サイズのスクリーン
  • 最も長時間使われるデバイス

として、動画サービス時代に適応して生き残っている。


結論:テレビ離れではなく「テレビ再定義」

調査データと視聴行動を総合すると、
テレビ離れという言葉はもはや正確ではない

起きているのは、以下の2点

  • テレビ局中心の時代の終焉
  • 視聴者主導でコンテンツを選ぶ時代への移行

テレビは、放送を見るための装置から、
**YouTubeやNetflixを見るための“最大のスクリーン”**へ進化した。

今後問われるのは、「テレビを見る人が減るか」ではない。
テレビ画面を支配するのは誰か──その競争が本格化している。

記事参考

米国:テレビ × 動画サービス視聴(ストリーミング)

Nielsen(米国視聴率調査)

ストリーミングが放送+ケーブルを上回った公式発表
https://www.nielsen.com/news-center/2025/streaming-reaches-historic-tv-milestone-eclipses-combined-broadcast-and-cable-viewing-for-first-time/

YouTubeを含むストリーミング比率の推移
https://www.nielsen.com/insights/2025/streaming-universe-us/

Gigazine(米国動向の日本語解説)

YouTubeが昼間のテレビ視聴で存在感を増しているという分析
https://gigazine.net/news/20251225-youtube-daytime-streaming/

YouTubeがテレビ画面で急成長している背景
https://gigazine.net/news/20250326-youtube-monthly-performance/


海外メディア(補足)

YouTubeが大画面視聴で拡大しているという報道
https://www.theverge.com/2024/11/14/youtube-tv-screen-viewing-growth

日本:テレビ離れ・動画視聴行動

公正取引委員会(公式調査)

若年層におけるネット動画とテレビ視聴時間の逆転
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240306_hontai.pdf

(※「デジタルプラットフォームと消費者行動」に関する調査資料)

総務省(参考統計)

情報通信メディアの利用時間・年代別傾向
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/


日本メディア分析・解説

テレビが“動画端末”へ変化しているという視点
https://indepa.net/archives/8380


動画サービス・デバイス環境(共通)

Netflix(公式)

テレビ視聴を前提としたUI・戦略
https://about.netflix.com/

YouTube(公式)

テレビ向けYouTubeアプリ・視聴拡大
https://blog.youtube/inside-youtube/youtube-on-tv/


補足(業界背景)

  • スマートテレビ・リモコンにNetflix / YouTube専用ボタン搭載
    → 各テレビメーカー(Sony / Samsung / LG 等)の製品仕様・発表資料

  • CTV(Connected TV)市場成長
    → Nielsen / 各広告調査会社の年次レポート

 

 

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